峯山ジュニア(5)
レシーブよりは、自信があった俺は気持ち的には、まだ余裕があった。
が、何となく違和感がある。
そうこうしているうちに、アタック練習が始まった。
すぐに自分の順番がくるのは同じだ。
コーチが両手で高く投げ上げた球を、いつものようにタイミングを計り、ジャンプするが、俺が打った球は見事にネットに当たってしまった。
おかしい。
タイミングも手の平に当たる感覚も問題ないのに。やっぱりネットが高いのか。
さっきから違和感があったのは、これだ!
明らかに高い。
ジュニアのネットは2mだが、これはどうみても2m15cmはある。
二度目もネットに引っ掛けてしまった。
コーチからは、何も言われない。
三度目に高さを考えて、打球の速度を抑えて入れに行くアタックを打った時に、コーチが口を開く。
「何をやってる?えっ?」
コーチが凄い形相で近付いてくる。
もう一度、コーチに質問された。
「何をやってる?」
「はい。すみません。」
「質問に答えろ!」
「はい。アタックです。」
「いまのがアタックか?」
「い、いえ。違います。」
「アタック出来ない奴は、出ていけ!今はアタック練習の時間だ。」
どうして良いか分からずに黙っていたら、コーチがボールを投げ付けてきて、
「邪魔だ、アタックやる気ない奴は出ていけ。」
「いえ。打ちます。」
俺は、咄嗟にそう答えた。
また、次の順番が回ってきたが、明らかに迷いがあった。
いつものように打つとネットにかかり、確実に入れる打ち方だと叱られる。
だが、次もその次もネットに引っ掛けてしまう。
が、特に怒声は飛んでこない。
何度か打ち込んでいたら、何とか尾の長いアタック(向こうのコートの奥ギリギリ)が入るか入らないかの所まで打ち込めるようになった。
しかし、他のアタッカー達は軽々とコート中央辺りに叩きつけている。
ようやくアタック練習が終わりかけの段階になり、中村監督が舞台から下りてきた。
しかし、監督はまたコート横の椅子に座り込みじっと眺めている。
コーチも2人ずつ、2組に分かれて、それぞれコートに入る。
コーチ1人に、6人がついてそれぞれコートに入る。
恐らく、監督の目の前のコートに入っている6人がスタメンのようだ。
明らかに体格が他とは異なる。
また、アタックもレシーブも堂々としているように見える。
俺は、コーチの1人に呼ばれた。
そこは、一番小さな子ばかりの集団だ。
何となく悔しかった。
ネットの高さが2mなら、もっとまともに打ち込めた筈なのに。