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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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時が止まる時

作者: 遥(はるか)奏汰(かなた)
掲載日:2026/08/17

静けさに包まれた世界で、少女が見つめる残酷な真実。絶望に抗うため、彼女が選んだ「お芝居」の行方をぜひ見届けてください。

 さっきから音がしない。蝉の鳴く音も完全に消えていたし、冷蔵庫の駆動音音もぴたりと止まった。

━━この世界は異変をきたしてしまったのだろうか?

 そして、珍しいことに、さっきからいつならひっきりなしに入ってくるスマートフォンからの通知音や着信音もまったくしないのだ。

 わたしは、焦った。一体時が止まったのはわたしの周りだけなのだろうか?

 試してみよう。行きつけの病院や学校やコンビニに片っ端から電話を賭けてみよう。

 もし相手が電話にでたのなら、時はとまってなどいないということになる。でないのならその逆である確率が高まる。

 連絡先として登録してあるあらゆる相手に片っぱしから電話を掛けまくった。

 が、結果は、わたしにとって悪い方であった。

誰も出ない。出られるはずがなかった。電話の向こうから聞こえているはずの呼び出し音すら、最初から届いていなかったのだから。

「……あはは、なんだ。みんな忙しいのかな」

 思わず零れた自分の声さえ聞こえない。それなのに、わたしは静まり返った部屋の中で、ひとり楽しそうにスマートフォンの画面をタップし続けた。

 世界の終わりを一人で観測しているヒロイン。そんな滑稽な配役を演じ続けていれば、まだマシだった。耳が聴こえなくなったという絶望的な現実と向き合うよりは、世界の方が壊れてしまったのだと思い込む方が、ずっと優しかったから。

 鳴らない電話を耳に当てたまま、わたしは消えた世界の音を探すフリを続けた。


     【了】

最後までお読みいただきありがとうございました。

耳を閉ざされた少女が選んだ小さな嘘と選択が、少しでも心に残れば幸いです。評価や感想もぜひお待ちしております!

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