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9話 カミングアウト②

「‼︎魔力がない・・・?1とか・・・2とか・・・そういことか?」


私は、フルフルと首を横に振ってユライトさんの言葉を否定した。


「本当に一切ないんです。何度測っても0で・・・。

私は、もともと平民ですから」


二人は驚愕していて、声も出ない様子だった。エルディは静かに目を閉じて、聴いていた。


「生まれついて銀髪だった私は平民として生まれ、平民として暮らしていました。平民の中でも本当に貧しい村だったので、私の銀髪がどういう意味を持つのか誰も知らず、私が聖女だなんて誰も想像していなかったので私はよくいる平民の子として育ちました。

しかし、7つになったある日、たまたま村に来た神殿長によって神殿に連れていかれ、私は聖女になりました」


「生家に帰ろうと思ったことはないの?」


アルカスさまのその言葉に私は苦笑いを浮かべた。


「帰ろうと思ったことはありません。もうほとんど覚えていませんし、育児放棄状態だった私の家から連れ出してくれた神殿長には感謝してますから。

私は神殿長の養子となり、銀髪でさえあればできる仕事は沢山あったので、他の聖女たちの後衛に当たって働く傍らで、貴族としての教育を受け、貴族令嬢として八年間生きてきました。

…でも、他の聖女たちが前衛に出て人々を癒しているなか、後衛で目立たない仕事をしているうちに同僚にも、国民にも誤解されてしまって・・・」


話していると、また胸が傷みだす。私はその痛みに気づかないふりをして話し続ける。


「魔力がないから聖女としてのお務めはできないはずだと決めつけられ、聖女と偽って甘い蜜を吸い続けた卑しい平民として王国を追い出されました。

王国を出たのが昨日の朝です」


ユライトさんは理解ができないという様子だった。


「つまり・・・誤解だけで追い出されたということか?」


「そうですね」


「誤解だと言わなかったの?」


アルカスさまのその言葉に私は自嘲するように笑った。


「言わなかったと思いますか?

私が何を言っても、元の身分が平民だということだけで、聞き入れてもらえなかったのです」


アルカスさまがその整った顔を歪める。


「身分が低いということだけで、罪を決めつけ、言葉を聞き入れないなんてあってはならないことだ・・・!」


力強く握りしめた彼の手は震えていた。そんなアルカスさまの様子に私は少しだけ嬉しくなる。

ーーーこの方が心の底からそう思っているなら、皇国の民は本当に幸せだろうな。

アルカスさまは一つ息をつくと、布団の上に置いていた私の手を取り、腕から指先にかけて注意深く観察していく。


「どうやら石化はしていないみたいだね。

エルディ・ロゼの方は・・・」


「王国侯爵家次男。今年で17。職業はサラ・アスティンの護衛兼下僕。所持する資格はアイリーン剣士四位と、王国魔剣士序列二位です。

お嬢さまと出会ったのは七年前。お嬢さまのためならなんでもしますけど、お嬢さまのためにならないことは絶対にしません。

よって、俺は間者でも、皇国に害をなそうとする者でもありません。

以上です」


「もうどこからつっこんだらいいのかわからない・・・」


私は頭を抱え、エルディは何故か誇らしげに胸を張っている。もちろん石化してなかったけど、もうほんと、何が何だか・・・。

再び苦笑いを浮かべるアルカスさまの横でユライトさまが空中に手をかざした。


「フェリズ」


その言葉に呼応するように、手をかざした場所にぽふんと一つの蒼氷の玉が浮かび上がる。氷玉はパキパキと音をさせながら形を変えていき、瞬く間に鳥の姿になった。大体、鷹とか鷲とかと同じくらいのサイズだと思う。一声鳴くと、大きく羽ばたき、ユライトさんが開け放った窓から飛んでいってしまう。


「今のは・・・」


「カイルが使役する聖獣だね。カイルは二体持ちだけど、僕も一体なら持ってるよ。

パール」


アルカスさまが先ほどのユライトさんと同じように手をかざすと、今度は手のひらサイズの竜巻が起こる。風が止み、竜巻があった場所にいたのは、それほど大きくもない、淡い黄緑色をしたインコのような形をした聖獣だった。


「僕のは見ての通りインコの姿で、カイルの聖獣は両方とも不死鳥だ。体色は魔力属性を表していて、僕のは風。カイルのはーーー」


「蒼と紅。氷と火だ。クレア」


ぶっきらぼうに答えたユライトさんだけど、もう一体の赤い聖獣を呼び出してくれる。実は優しいのかもしれない。


「初めて見ました!王国には聖獣を使役できる人はいませんでしたし、聖獣を見る機会もありませんでしたから!」


アルカスさまの肩の上でちょこちょこと移動しているインコをじっと見つめる。

・・・か、かわいい!


「触ってみる?」


「いいんですか⁉︎」


もちろん、と笑顔で差し出されたインコに、高鳴る胸押さえながら、そっと人差し指を近づける。すると、インコは小さく飛び跳ねながら指に乗ってきた。


「ふぁあ・・・!かわいい、可愛すぎる!」


「お嬢さま、俺の方が可愛いです!」


「本気で言ってる?」


どうして張り合った?確かに、エルディは砂糖顔というのか、甘い顔をしていて王国では人気だったが…。

名前は、パールというらしい。呼び出す時に名を呼んで呼び出すそうなので、蒼い不死鳥がフェリズ、紅い不死鳥がクレアということになる。


「もふもふ・・・。いいなぁ、この国では聖獣を使役できる人が沢山いるなんて・・・」


私がポツリと漏らしたつぶやきに、ユライトさんは腕を組む。


「そんな沢山いるわけないだろ。それこそ魔剣と同じように聖獣に気に入られて契約を結ぶ必要があるんだ。プライドの高い聖獣たちに気に入られるのは中々骨が折れることだったぞ」


「そうなんですか・・・」


決して、ふわふわモコモコな夢の国ではなかったということに、私は少なからず落ち込んだ。

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