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8話 カミングアウト①

ユライトさんの疑問に私は、はて、と首を傾けた


「さあ・・・その辺は本人に聞いたことがないのでなんとも・・・。

とにかく、魔剣は扱うのが難しいので、一生一つの魔剣を使う場合がほとんどで、剣と人の間に強い繋がりが生まれるんですって。そんな剣に魔力を流しながら誓うので強力な魔法契約となり、強制力が生まれるんだとか」


そこまで説明するとユライトさんが信じられないというように目を丸し、エルディを指さす。


「なぜそこまでわかっていてこいつと契約したんだ?」


指を指されたエルディは鬱陶しいとでもいうようにユライトさんを睨んだ。


「煩いですね。仕方ないじゃないですか。

一目見た瞬間に感じたんですよ。俺の人生全てを捧げて支えるべき人はこの人だって。魔剣がビリビリ震える感じ。

でも神殿関係者の護衛とか出世から遠くなるから周りに反対されるのは目に見えてたんで、その場でお嬢さまとその保護者捕まえて誓いを立てました」


そう。神殿長と王族に謁見した帰り道、貴族街を歩いていたら、急に目を輝かせた知らない少年に引き止められて誓いを立てられたのだ。その頃まだ平民気分が抜けなかった私からすれば、貴族が自分に向かって跪く光景は恐怖でしかなく、断れば貴族の怒りを買うかもしれないという不安で、うっかり頷いてしまったのだ。

・・・正直私のせいじゃないと思う。


「だからお嬢さまの一番の下僕はこの俺だけなんです。この座だけは誰にも譲りません」


「ちょっ、エルディ?」


真面目な顔して何を言い出すんだ。脳筋なのは分かりきっているから多少は見逃せるが、下僕とはなんだ。私がエルディを変態になるように躾けたみたいになるじゃないか。本当にやめてほしい。


「本当に君の従者は変わり者だね。そんなんで困らないかい?」


「今困ってます」


見てわかるだろうとやや食い気味に返すと、皇子は可笑しいとばかりに小さく笑った。どこに笑う要素があったのかわからなくて戸惑う。


「ふふ、少しだけ懐かしくてね。会話のテンポの速さと気軽さが昔のカイルと話している時のようで」


私は眉を顰めた。


「ポンポンと会話ができるようなタイプには見えませんけど」


「・・・お前、どういうことだ」


「あ、自覚がなかったんですね。表情の変化が乏しいので冷たい人に見えるってだけです」


「特にそれで問題ないからいいだろう」


「そういうとこですよ」


「お嬢さま、俺にも言ってください!」


「なんか危ない感じするからやだ」


ぎゃあぎゃあと騒いでいるとまた皇子が微笑んだ。


「君たちといると楽しいね。危うく君に会いに来た目的を忘れるところだったよ」


「ーーー目的、ですか?」


なんとなく、体がこわばる。本能的に何か良くないことが起きるような気がして、身構えた。


「本当は完全に回復してからでもよかったんだけど、そうもいかない理由ができちゃって」


「・・・」


「君たちが僕の部屋に来るまでの間、何人かとすれ違ったでしょう?サラさんの銀髪が全く関係のない第三者に目撃されてしまったことで、早くも噂が浄化で広がり始めていてね。『ついに皇国にも聖女さまが現れた!』

って。国民が喜ぶのは良くわかるし、それ自体はいいことなんだけど、問題は君が王国から来た素性がわからない聖女ってことなんだ」


そこまで言われて私はようやく言いたいことを察した。

ーーー今、私には、王国からきた間者の疑いがかけられているのだ。

皇子は今もにこやかな笑みを浮かべていた。けれど、その目は、一切笑っていなかった。


「サラ・アスティン。君は何を目的としてこの国に来た?」


・・・やはり皇族は皇族だ。こんなにも穏やかに笑っているのに、体から放たれる殺気はどこまでも鋭い。私が、要注意人物として最大限に警戒されているのがよくわかった。

背中に汗が伝う。


「あぁ、安心して話してくれていいよ。神殿にいた君ならわかるだろうけど、この部屋には天秤の女神のご加護がかかっていて、神殿にある真実の間と同じ効果があるから」


ぜんっぜん安心できない。真実の間とは、こないだエルディが放り込まれた嘘がつけない部屋だ。神殿ではあの部屋はほとんど使わない。なぜなら、そこで虚偽を述べれば、天秤の女神の呪いによって足から体が石化して死ぬっていうかなり重めのペナルティーがあるからだ。

それを聞かされる前に私たちが嘘をついていたらどうするつもりだったんだろう。その時はその時でよかったってこと?

恐ろしい想像に肌が泡立つ。や、うん。流石にそこまでは・・・ね?

・・・別に、話すこと自体に特に抵抗はない。でも、私が元平民だと知ったとき、彼らはどうするのだろう。また、平民だということで蔑み、追い出すのだろうか。それだけが不安だった。


「ーーー身分によって罪を作ることはない、と約束してくれますか」


「え?」


「これを約束してくれないのであれば、何もお話しできません」


アルカスさまは笑みを消し、少し考え込む。


「わかった。約束しよう」


私はほっ、と息をつくと、口を開いた。


「結論から言えば、私は間者でも、皇国に害をなそうという意思を持っているわけでもありません。この国に来たのは就職先を探すためです」


「それはどうして?」


「私は今まで、王国で聖女としてのお務めを果たしていました。しかし・・・つい一昨日、聖女と貴族を騙ったとして国外追放になりまして」


「貴族と・・・聖女を騙った?」


私は一度ぎゅっと目を瞑り、開く。震える手を強く、強く握りしめた。


「・・・聖女の、この銀髪は、ただの聖属性魔法が扱える体ということを証明するだけです。けれど私にはーーー魔力が、ありませんでした」

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