7話 夢であったらよかったのに
よし、状況を整理しよう。神殿長に見送られエルディと共にパリオン皇国に出発→お昼休憩中何故かb級以上の実力の魔物に襲われ大ピンチ→紺髪の人が現れ魔法で魔獣を倒してくれる→紺髪さん、私が聖女だと分かると、皇城に行くと言い出す→連れて行かれたのは第三皇子の元→紺髪さんが大魔術師で第一魔塔主だと判明
「・・・ってそんなことがあってたまるかぁぁぁ!」
パチリと閉じていた瞼を開け叫び出す私。傍から見たら完全に不審者である。
しかし落ち着いて見ると視界に映るのはやたらと豪奢な天井。いや、天蓋と呼ぶべきか。どうやら私は先程まで寝ていたらしく、私がいたのはやけに豪華なベットの上だった。
・・・もしかしたら、今までのことはすべて夢だったのでは・・・?
ふと、そう思った。一度そう感じてしまうと、本当の夢だったんじゃないかとしか思えなくなる。そうだ、そうだよ。むしろ夢じゃない方がおかしい。私は自分が今全く知らない場所にいるという事実はフル無視して、半強制的に納得した。
うんうん、と1人で頷いていると、ギギギギと何やら重たい音がする。音のした方を向くと、ユライトさんがこの部屋の扉から入ってくるところだった。
「ーーー起きたのか‼︎」
私は無言で頭を抱える。せっかく人が夢で片付けようとしているのに・・・。ユライトさんはこちらに近づいてくるとベットサイドテーブルに硝子の水差しとコップを置いた。
「脱水になっているだろうから飲んでおけ」
それだけうと出ていってしまう。なんなんだあの人。
暇だしおとなしく言われた通りに水を飲んでいるたら、ドタバタと音がして直後勢いよく扉が開いた。そこにはエルディと、アルカスさま、ユライトさんの姿が見える。
「エルディ!」
「お嬢さま!心配したんですよ。皇子や魔術師さまの前で倒れてからほぼ丸一日目を覚まさなかったんですから」
ご丁寧に説明してくれるエルディ。どうやら、ここは皇城の客室だったらしい。私は上半身を起こした。
「ありがとう。ごめんね心配かけて」
「本当ですよ!お嬢さまが死んだら、僕も後を追わなきゃいけないんですよ?寿命が縮みましたね」
「ねぇ、なんで心配しただけで済ませなかったの?」
ペシリと軽くエルディの頭をはたくが、
「あーこれですよ。お嬢さまにはこのテンションが一番しっくりきます。元気になったみたいでよかったです」
と言われてしまい、流石に反応に困る。いつからエルディは叩かれて喜ぶようになってしまったんだろう。
「サラさん・・・とても言いにくいんだけど、君の従者ちょっと変じゃない?」
「そんなこと私が一番分かってますから言わないでください」
いつの間にか殿下がエルディの後ろに立って困ったように眉尻を下げていた。
・・・エルディよ。私が眠っている間、彼らに何をした?
「アルカスさま、ユライトさんも本当にご迷惑をおかけしました。こんなにも良くしていただいて本当にありがとうございます」
「いや、君たちが疲れているのは少し考えれば分かったのに、無理に付き合わせてしまった僕らに責任がある。申し訳ない」
殿下は深々と頭を下げた。皇族に頭を下げられた私は、慌てふためく。
「えっえっ、そんな!お願いですから、頭を上げてください!」
どうにか頭を上げてもらおうと必死になる私と対照に、エルディは2人のことをきつく睨んだ。
「お嬢さま、謝らせておきましょう。あっちが悪いんです。お嬢さまは昔から体があまり強くないんです。虚弱なんです。倒れるたびに命の危険に晒される俺の立場にもなってください!お嬢さまも倒れんな!自分で気を使え!」
「エルディ??」
フォローしたいのかしたくないのか。途中から敬語抜けてるし。それよりも皇族や魔塔主に対して失礼すぎる。今は私の命が危険に晒されているんですが。
エルディの言葉にユライトさんが首を傾げる。
「さっきから・・・というか、昨日からか。こいつはお前が死ぬと自分も死ぬというようなことを言っているがどういうことだ?主人の後追いは強制ではないはずだが」
私は、あぁ、と頷く。これ、結構な頻度で聞かれるんだよね。もう慣れたけど。
「えーと、お二人は魔剣士の誓いというものをご存知ですか?」
「魔剣士の誓いだと?剣士の誓いはともかく、魔剣士のものは聞いたことがないな・・・」
ユライトさまの戸惑うような言葉に、それもそのはずだとふたたび頷いた。
「剣士と比べて魔剣士は人数が少ないので知らなくても仕方がないです。魔剣士の中でも誓いの存在を知る人はごく僅かですから。
剣士の誓いは自分の剣と主人に口上を捧げるだけで成立するので命まで縛る強制力はありません。あると言えば、精神的な従属の証、世間体、立場を縛るくらいでしょうか?
しかし、魔剣士は魔力を使って攻撃するので、普段から魔剣と呼ばれる特別な製法で作られた剣を使います」
魔剣、という言葉にアルカスさまが反応した。
「そう言えば皇家にそのようなものが何本か保管されていたはずだ。剣としては珍しく、刀身に魔石がついているんだけど」
「それです!魔剣の特徴として、柄ではなく、刀身に魔石がついています。数や種類は物によりますが。魔剣は本当に特殊で、剣に気に入られ、魔力契約することで、やっと扱えるようになるんです」
「剣に意志があるのか⁉︎」




