表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/6

四話 別れと旅立ち

ちょっと短いので、二話ほぼ同時投稿です

「本当に結界を張らなくて大丈夫ですか?」


「大丈夫だよ。他の聖女だっているし、それこそ結界の魔道具だってある。心配せずとも、神殿くらいであれば余裕だよ」


翌日の朝、神殿長と私は奥国の国境門の前に立っていた。私は少ない荷物を入れた旅行鞄を、神殿長は白い布袋を抱えている。

本当は、一応罪人なので誰にも見送られず、一人で発たなければいけないのだが、神殿長が昨日のパーティーの後、王子に頭を下げて『見送らせて欲しい』と頼み込んだらしい。嬉しいけれど、やっぱり申し訳ない。


「ところで神殿長。その袋って一体なんなんですか?」


すると神殿長は私の頭ほどもあるそれを少し持ち上げてみせた。


「これかい?これはサラにあげるために持ってきたんだよ」


差し出され、受け取った私はその布袋のあまりの重さに慌てて持ち直した。中を見てごらん、と言われ、ちょっとだけ口を広げて中を覗く、と。


「きっ、金貨⁉︎」


小銅貨から大金貨までざっくざくだった。大金貨なんて平民として生きていたらまず一生お目にかかれなかったと思う。


「これでもわたしは貴族だからね。神殿に入ってからの貯金の三分の二ほどかな?路銀の足しだ。わたしからの餞別だと思って受け取ってくれないか」


神殿長の厚意に昨日枯れたと思った涙がまた滲んでくる。


「でも・・・こんな大金受け取れません」


「わたしにはもうこれほどのお金を使う場所も機会もない。必要のないものだから、どうか貰ってくれ。・・・わたしが親として子供の君にできる最後のことなんだよ」


寂しげな顔でそんなことを言われては断れない。私はありがたく受け取ると馬車に乗り込んだ。

馬車の窓を開けて神殿長を見下ろすと、神殿長は穏やかな顔で手を振っていた。


「・・・っ必ず!落ち着いたら手紙を書きますから、返事をくださいね!」


「勿論。会いにだっていこう。体調に気をつけるんだよ」


あぁ、視界がぼやけてしまって上手く姿が見えない。もうほぼ会えなくなってしまうのに。ぱち、ぱちと瞬きすると涙が流れて少しだけ視界が晴れる。

馬車が動き出した。


「お父さまも!お元気で‼︎」


神殿長の目から一筋涙が流れた。そうして私たちは手を振り続けた。互いの姿がすっかり見えなくなってしまうまで。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ