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二話 国外追放、受け入れます!

二話ほぼ同時投稿です。(一話と)

はぁ。もう、会話をしたくないな。疲れてしまった。

神殿長に怒鳴られた時から私の沸点の限界は超えていた。


「ユリアは、私にどうして欲しいんですか」


「あら、やっと認めたの?ふふっ。

さっきも言ったじゃない。出ていって欲しいのよ。

このアイリーン王国から」


「‼︎王国から、ですか⁉︎」


ある程度は覚悟していたつもりだけれど、まさか国から出て行けとは・・・。

いやー・・・国王が黙ってないぞこれは。

国王は一応私の祈りの力が強いことを認めていたから。

一時期大聖女にするぞ!って騒いでいたこともあったな。


「別に国からじゃなくともいいんですのよ?でも、私はいずれ王妃になるわけですし、自分のお庭に卑しい人間を置きたくないの」


「お庭・・・」


「そうだな。俺も、自分の治める国にこのような者がいるのは耐えられぬ」


「そうでしょう?殿下」


殿下がユリアの肩を抱き、宣言する。


「此処にサラ・アスティンを聖女を騙った罪及び、貴族を騙った罪で国外追放とする!」


より一層大きくなる喧騒。けれどその中に私を庇うものはない。それもそうだ。ユリアは次期王妃だし、元々上級貴族。反対なんてしたらお家取り潰しの可能性もある。

でも・・・


「国外追放だけはやめてください!この国に結界を張れなくなります!」


私はこれでも聖女だ。この国を守る義務と責任がある。


「誰か、この平民を捕らえておけ!」


第一王子が命ずると会場の入り口に立っていた傭兵が私を押さえつけた。


「きゃっ‼︎」


頭を強かに床に打ち付ける。

脳裏に今までのことが走馬灯のように駆け巡った。


神殿に入って神殿長に可愛がってもらった日々。

ユリアに身も心も傷付けられては自分で癒す日々。

神殿に癒しを求めてやって来た平民に

『あんな聖女さまいたかしら?』

『あぁ・・・あれでしょう?ユリアさまのおっしゃってた役立たず聖女・・・』

と、蔑まれる日々。

ああ、そうか。

毎日毎日朝から晩まで身を削って祈って、結界を張り、祈りの力を注いで、裏からその他大勢の聖女の力の底上げとかもしていたのに。

私、その国民にまで嫌われていたんだっけ・・・。


「サラ!」


神殿長の声が聞こえる。でも駄目だ。このままでは神殿長にも迷惑がかかる。偽物聖女を匿ったとして。


私が祈りの力だけで聖女をやってこれたのは、潜在的な「祈りの力」が他に比べて桁違いに多かったからだ。

それは、過去の大聖女と呼ばれた人たちの力に匹敵する。

祈りの力が大きければ大きいほど、神の加護が強いと言うこと。私をこの国から追い出せば、結界は消え、全体的な神の加護もとても薄れていくだろう。

それはまずい。

私には聖女としてこの国を護る使命がーーー


あ、でも別にいっか


すとんと腑に落ちるように、そう思った。

私は聖女にも貴族にも国民にも嫌われている。だったら別に、この国を護らなくてもいいよね?

嫌いな人に護られたくないだろうし、私だって、嫌ってくる人たちのことをわざわざ自分の生活を削ってまで護る理由がない。

どうやら私がいなくなっても上手くやっていく絶対的な自信があるみたいだし、この国は他の人たちに任せて、私は別の国で新しい人生をスタートするのも、素敵だなー、と。唯一、神殿長が心配だけど、まぁそこは何とかなるだろう。


「わかりました。国外追放受け入れます」


「「「「え?」」」」


会場のあちこちから聞こえる気の抜けた声。突然の爆弾発言に戸惑う彼らを尻目に私は自分を取り押さえていた傭兵の力が抜けているのに気づいてスルリと抜け出す。ぱんぱんと汚れたドレスのスカート部分を払った。このドレス、結構高かったんだよ・・・。


「わ、わかった?国外追放だぞ?」


「はい。わかってます」


「二度と戻って来てはならないのだぞ?」


「望むところです。別の国に行く前に一度神殿に戻りたいですけど」


狼狽える周囲の人々。そこで一番戸惑っている王子の腕に誰かの腕が絡みついた。


「殿下。きっと最後の強がりでわ。本人も良いと言っているのだし、さっさと追い出してしまいましょう?」


・・・ユリアだ。本来であれば傷ついた顔をするべきなのかもしれないけど、私は内心ガッツポーズをしていた。

・・・ナイス!ユリアの今の発言で格段に私のキラキラ新生活に近づいたよ!

そんなユリアの言葉に王子はまだ納得してなさそうなまま頷いた。


「う、うむ・・・何かおかしい気がしないでもないが・・・。では、明日の朝までに荷造りをし国境の門を出て行け」


「わかりました」


・・・この王子ちょっと単純なのでは?今更ながらこの国の将来が心配だ。


私が明日の朝この国を出ていくことが決まったところで混乱を極めたこの場はお開きとなった。

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