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11話 皇子とのお茶会

「こ、皇帝陛下とディナー、ですか・・・」


「うん、今夜ね。兄さまや僕もいるし、内々の食事会だからリラックスして臨むといいよ。あ、カイルも出席するからエルディくんも連れておいで」


数日後、皇城に来てからここのところ毎日、夜寝る時には別の部屋にいたはずのエルディが朝起きたときには部屋の扉の脇に立っていることに慄きつつ、運んできてもらった朝食後のデザートに頬を緩ませていたところ、いつの間にか入ってきている上に目の前に座っていたアルカスさまの爆弾発言に私は緩ませていたはずの頬が引き攣るのを感じた。

一体何故そんなことになってしまったのだろう。私は内心頭を抱えた。

・・・いや無理無理無理。皇帝陛下とディナー?私元平民なんですけど。アイリーン王とは何度かお食事をしたことはあったけど、その時でさえ手が震えて仕方なかった私が皇帝とディナーなんて出来るわけない。

しかも今夜だなんて急すぎる。物資も心の準備ってあるじゃん。


「ど、どうしてそんなことに・・・」


「先日、君たちが話してくれた内容と、フェリズが運んできた情報を基に、国の重鎮たちによる、緊急国家会議が行われた。

その会議によって、サラさんを国として正式に、皇国に現れた聖女として迎え入れることが認められたよ」


「本当ですか!よかった・・・」


ほっと胸を撫で下ろした。どうやら無事に皇国で聖女として生きていくことを認められたらしい。しかし、わずかな違和感に気がついた。


「あれ、今皇国に現れた聖女って言いました?それだと誤解が生まれるんじゃ・・・」


確かに、私は皇国に現れた聖女とも言えるが、正確にいうならば『皇国にやってきた聖女』である。

どうしてわざわざ変に解釈されるような言い方をしたのだろう?

きょとんとする私の前でアルカスさまがその形の良い唇の端を持ち上げた。


「誤解させておきたいからだよ」


「え?」


「国民や、皇国の傘下にない他の国に、『皇国の出身の聖女が現れ、皇国を守っている』と誤解させておくことで、国民には安心感を、今まで皇国を舐めてかかっていた他国・・・例えばアイリーン王国や、ちょっと遠いけどカルミス公国に対してさらに優位に立つことができるようになる」


・・・なるほど、その発想はなかった。政治って恐ろしい。


「それ、私に言っちゃっていいんですか?」


アイリーン出身だし、ただの国民だし、国家機密っぽいし、大丈夫なのかな?いろいろ。


「んー、まぁ大丈夫じゃないかな?たぶん」


「たぶん」


一言で人を不安にさせられる『たぶん』って言葉すごいと思う。


「話は戻るけど、君が聖女として認められたことによって再び問題が発生するんだ」


困ったように眉尻を下げたアルカスさまの言葉に、一つ心当たりがあった。


「もしかして、戸籍のことでしょうか?」


「そうなんだよねぇ・・・。でも、さっき話した策略のために、通常の戸籍の取得方法は避けたくて。

父上に与えてもらうにしても、やっぱりどっかから話が漏れちゃうんだよね」


実は、定期更新が必要となるが、国に住むだけならば住民権というものを買うだけでいい。

けれど、神殿で神官としてお務めするためには戸籍の取得が必要なのだ。何故かっていうと、結構スピリチュアルな話になってきて、神様に認めてもらえないから。

ここで少し、神話について触れてみようと思う。


◇◇◇


始めはただの靄だった。


白い靄と黒い靄が混じり合うだけの世界に、突然一筋の光が差し込んだかと思うと、白い靄はその光に纏わり付き、光は形を持った。

一番始めの存在は、のちに創造神サレアノーテと呼ばれることになる。

世界に漂う2種類の靄の正体は、白いものが魔力、黒いものが瘴気というもので、サレアノーテは自らを形作った魔力に興味を持ち、自分の一部を切り離してもう一つの存在を作った。

それが五大神が一柱、命の神イヴァーニャである。

サレアノーテは切り離した部分が白い靄に包まれ、修復されていくのを見ると、次々に合計六柱の神をつくった。

そうして生まれたのが、先程も紹介した

命の神イヴァーニャ、

氷の女神ラムダ、

炎の神ワーグナー、

土の神カルアード、

風の女神イゼラントの五大神と、

後に反逆の神と呼ばれることになる、


無限の神イフリートである。

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