一話 魔力ゼロ聖女 サラ・アスティン
プロローグほぼ無しで本編ぶっ込んでいきます!
楽しんで読んでいただければ幸いです!
「サラ、マリアの魔法が使えないという言葉は本当か?」
「え、えぇっと・・・」
サラ・アスティン、15歳。一応聖女やってます。
只今、私、大ピンチです・・・!
◇◇◇
ーーー聖女。
銀色の髪が特徴で、聖属性魔法を使い、アイリーン国(自国)を守り、癒し、国民の支えになる存在。もちろん、魔法を使うから魔力は必要不可欠だ。私はそんな聖女である。
けれど、平民出身の私には魔力がなかった。
生まれつき銀髪で、聖属性魔法を使える体だった私は、七つの頃、私が住んでいた村に訪れた神殿長に見つけられて神殿に入った。
しかし、魔力も、聖女の力も基本貴族が持つもの。
魔力検査をしてもやはり、私には魔力が一切なかった。
だからといって、聖女のお務めがでできないわけではない。
そもそも、聖属性魔法とは、聖女であれば全員持っている「祈りの力」を、魔法によって増幅させ、効率的に使うための魔法。
つまり、「祈りの力」を使えば魔力ゼロの私でもお務めができる!
そういうことで今までやって来たんだけども。
聖女や神官でもそこの仕組みを知らない人の方が多いし、聖職者でさえ知らないことを他の貴族や王族が知っているわけもなく。
只今、同僚(貴族)のユリアの誕生日パーティーにて断罪されてます…。
◇◇◇
事の発端は三分ほど前に遡る。
上級貴族出身のユリアには、普段からあまりいいとは言えない態度を取られていたが、今回はなぜか招待状が来ていたので私も神殿長と共に出席していた。
ユリアは、上級貴族の聖女なのでパーティーには王族も出席することが多い。今回は第一王子が出席していた。ちなみに第一王子はユリアの婚約者でもある。ユリアは次期王妃なんだよね。
そして王子がユリアに誕生日プレゼントは何がいいかと問うたとき、ユリアはこう言ってのけた。
『物が欲しいと言いますか・・・。
可能であれば、サラを追い出してくださいません?聖属性魔法を使えないのに聖女の役についているだなんておかしいですわ』
頬に手を当ててやれやれとでもいうように首を振るユリア。
いや、やれやれじゃないよ。第一どうして私が魔法使えないことを知ってるんですか。
王と神殿長と私しか知らない国家機密なんですけど。
そうして時は現在に戻る。
「なに?サラ、魔法が使えないというのは本当か?」
「え、えぇと。まぁ、そうですね」
誤魔化してもどうせすぐバレると思うので、素直に肯定する。私の言葉に会場のざわめきが大きくなった。
「・・・どういうことだ」
「一応国家機密ということになっているので私の口からは言えません」
ちらりと横目で遠くに立っている神殿長をみると顔が真っ青になっている。
「技量が足りなくて、使えないのか?」
「違いますわ王子。サラは魔力が無いんですの」
さらに訪ねてくる王子と横から平気で口を挟んでくるユリア。
・・・今、貴方のせいでこんなことになってるんですけど?
魔力がないことも、どうして知ってるんですか⁉︎
「はぁっ⁉︎サラは平民だということか?
どういうことだ、神殿長!いるのだろう。
説明しろ!」
神殿長が強張った表情で此方に近づいてくる。
「えぇと・・・。確かにサラは貴族ではなく平民出身で魔力はありません。しかし、聖女としてのお務めはしっかりと果たしていてーーー」
「そんなことが問題ではないのだ!
問題は薄汚い平民を貴族と偽って聖女として神聖な神殿に入れたこと!なぜ解らぬ?
それに、平民出身で魔力がないのだからお務めができるはずないだろう!」
別に貴族と偽っていたわけではない。
私は神殿に入った時に、神殿長の養子に入っているのだから、書類上は貴族ということになっているはず。
神殿長の話を遮ってまで喚き散らす第一王子に私のこめかみがピクリと動いた。
ーーー神殿長にはとても可愛がってもらっていた。育児放棄状態だった生家から連れ出してもらったうえに、貴族社会のことを全く知らない私にわざわざ家庭教師までをつけてくれた。
親の愛が足りなかった私に、まるで本当の親のように愛を注いでくれた。
私の唯一無二の親族。
そんな大事な人に対して怒鳴られて黙っている私ではない。
「こちらの都合や、聖女の特性を知らない方が、勝手に決めつけないでください。
私は神殿長の養子に入っているので平民ではありません!
・・・確かに、人前に立って国民の怪我を癒したり土地の浄化を直接することはできませんけど、常にこの王国に結界を張っているのは私です!」
けれどユリアは鼻で笑い飛ばした。
「ねぇサラ?
逆上は見苦しいですわ。いくら図星をつかれたからって。
それに知ってますのよ、わたくし。この国の結界は今までの聖女の力をちょっとずつ貯めた魔道具で張ってるのでしょう?嘘は良くないわ」
「嘘じゃっ・・・」
「なら今此処で結界を解いてくださる?」
ふふんと勝ちほこるような嘲笑を含んだ表情に私はグッと押し黙った。
今、結界を解いてしまったら罪のない国民が魔獣に襲われてしまう。
自分が聖女じゃなかったとしても、人としてそういうことはやりたくない。
「・・・ユリア。貴方、自分が何を言っているのか分かってますか?」
「わかってるわ。貴方が偽物の聖女で図々しく卑しい平民だってことでしょう?」
ふふふと笑う彼女は美しい。王子が惚れ込んでしまうほど。王子が再び怒鳴った。
「なんてことだ。まさか偽物が我が物顔で神殿内を歩き、聖女としての恩恵を受けていたとは!」
「・・・」
どいつもこいつも人の話を聞かないな。
それにしても、ユリアはよっぽど私が目障りだったんだ。
今までも私がお清めしたところを汚されたり、聖女服を駄目にされたり、蹴られたりなどなど色々されて来たけど、ここまで嫌われているとなると流石に来る物がある。
・・・はぁ。もう、会話をしたくないな。疲れてしまった。
神殿長に怒鳴られた時から私の沸点の限界は超えていた。
「ユリアは、私にどうして欲しいんですか」
「あら、やっと認めたの?ふふっ。
さっきも言ったじゃない。出ていって欲しいのよ。
このアイリーン王国から」