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第06話_ラッキースケベ術師と嘘つき審問官

「よし、今日もおっぱい地動説の研究を進めよう」


ジョンが意気揚々と宣言した。研究室には、俺、リーザ、エリザベス、そして新たな仲間セシリアが集まっていた。


「ふむ…」


セシリアは常に警戒心を解かない様子で、研究の様子を観察していた。


「セシリアさん、何か気になることでも?」


エリザベスが声をかけると、セシリアは小さく首を振った。


「いや、何でもない。研究を続けてくれ」


教会の話題には一切触れないセシリア。その緊張感は、研究室の空気をわずかに重くしていた。


---


「皆、少し話がある」


ある日、セシリアは普段よりも深刻な表情で俺たちを呼び集めた。


「実は、教会内で私のような異端審問官への監視が厳しくなっている」


セシリアは周囲を警戒して、声を潜めて話す。


「どういうことだ?」


ジョンが緊張した表情で尋ねた。


「おっぱい天動説への疑いを持つ者がいるのではないかという噂が広がっているらしい。教会上層部が神経をとがらせている」


「それって、まさに俺たちのことじゃ…」


「黙れ!」


セシリアが俺の口を手で塞いだ。彼女の表情には、本物の恐怖が浮かんでいた。


「今は何も言うな。壁に耳あり、障子に目ありだ」


「障子とは…?」


緊張感が、研究室全体を包み込んだ。


---


翌日、研究室でスケベゲージ理論の検証実験をしていた時だった。


「これでおっぱい地動説の証明が…」


ジョンの言葉が途中で途切れた。研究室のドアが勢いよく開かれたのだ。


「セシリア・グレイス、お前は教会への裏切り者だという密告があった」


現れたのは厳めしい表情をした男性の異端審問官。その迫力に、研究室の空気が凍りつく。


「マ、マルコス審問官…!」


セシリアの顔から血の気が引いた。彼女は一瞬で青ざめ、全身から汗が噴き出し始めた。


「異端者たちと接触している現場を押さえたぞ。どう説明する?」


「え、えっと…これは…その…」


セシリアは明らかに言い訳を必死に考えていた。俺たちは固唾を飲んで彼女を見つめる。


突然、セシリアの表情が変わった。思いついたことがあるようだ。


「あ、ああ!実は…潜入捜査だ!そう、潜入捜査をしていたのだ!」


その宣言はあまりにも唐突で、明らかに嘘くさかった。


「は?」


俺たち全員が思わず声を漏らした。マルコス審問官も一瞬「は?」という表情になった。


「ね?マルコス審問官…」


セシリアは必死の形相で目配せしながら言った。


「あ、ああ…。そう…なのか…?潜入…捜査…」


マルコスの棒読みの返事に、状況はさらに悪化した。


「ほら、証拠も集めていたし!」


セシリアは慌てて手近にあった書類を掴み、マルコスに手渡した。


「これがその…異端の証拠です!」


マルコスが受け取ったのは、実はジョンが描いていたおっぱい地動説の概念図だった。


「これは…」


マルコスの顔が赤くなる。


「じゃあ、任務完了…ということで…異端者たちよ…えーと…裁きの…時…かな?」


セシリアのあまりのぎこちなさに、研究室は静まり返った。


「いや、それ無理があるでしょ…」


リーザが呆れた声で言った。その言葉に、全員の視線がセシリアに集まる。


「とにかく全員逮捕だ!」


突如として、マルコスが本気モードになった。彼は剣を抜き、俺たちに向けた。


「ごめん、本当にごめん!とりあえず逃げて!」


セシリアは遂に本音を吐露した。そして彼女は右手を掲げ、魔法を唱えた。


「ディヴァイン!」


彼女の右手からまばゆい光が放たれ、建物が崩壊し始めた。


「うわっ!」


崩壊する建物の中、俺とリーザとエリザベスは出口へと走った。その混乱の中、ジョンは研究データを掴んで別の方向へ、セシリアはマルコスを引き留めようとしていた。


「みんな、こっちよ!」


リーザが俺とエリザベスの手を引っ張り、かろうじて建物の外へ脱出することができた。


「ジョンは?セシリアは?」


エリザベスが振り返って叫んだ。


「分からない…あの混乱で、はぐれてしまった。ムチャクチャだよあの人!」


リーザが答える。空には黒煙が立ち上り、研究室があった場所は瓦礫の山と化していた。


「そんな…」


「今は自分たちの身を守るしかないわ。教会の追手がやってくる前に、この場を離れましょう」


リーザの冷静な判断に、俺たちは無言で頷いた。


「どこへ行けばいいんだ?」


俺が尋ねると、リーザは少し考えてから答えた。


「私の知ってる場所があるわ。とりあえずそこで身を隠しましょう」


三人で街の裏道を急ぎながら、俺は振り返った。研究室の崩壊、ジョンとの別れ、セシリアの裏切りと救出…全てが一瞬の出来事だった。


「大丈夫かな、ジョンは…」


エリザベスが心配そうに呟いた。


「あの人なら、きっと何とかするわよ」


リーザの言葉に、少し安心する。


「まったく…ラッキースケベ術師の周りはいつも大騒ぎね」


エリザベスが苦笑した。


「だから、そう呼ばないでください!」


俺の叫び声が、夜の街に響き渡った。


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