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第18話_ラッキースケベ術師と帝国竜騎士隊

「来るぞ!」


リーザの警告と共に、竜騎士たちの一斉攻撃が始まった。空から放たれた矢の雨が屋上に降り注ぐ。四人は素早く散開し、矢を避ける。既に手に剣を握りしめたリーザ、光の魔法を指先に宿らせたセシリア、防御の姿勢をとったエリザベス、そして新しい力に満ちた杖を構えた幸運—背中合わせの円陣を組んだまま、彼らは反撃の機会を窺っていた。


ヴァルガスは巨大な青い飛竜に跨り、空高く舞い上がった。「あの能力者を捕らえろ!奴らを生きたまま連行するのだ!」


その命令に応じて、五人の竜騎士たちも飛竜を操り、屋上を取り囲むように位置を取った。彼らは再び弓を構え、次の一斉射撃の準備を整えている。


「みんな、対空戦闘の準備を!」リーザが仲間たちに指示を出す。セシリアが前に出て、エリザベスは後方で防御の姿勢を強化した。幸運は新たに目覚めた能力に自信を見せ、杖を高く掲げる。


「ウインド!」

リーザが唱えると、強烈な風が巻き起こり、空中の竜騎士たちがバランスを崩した。飛竜たちは苦しげに鳴き、騎士たちは弓を構えるのに苦労している。


「フラッシュ!」

セシリアが続けて唱え、まばゆい光が天空を照らした。突然の閃光に視界を奪われた騎士たちは矢を放つことを断念し、混乱する。


「おっしゃ、俺の番だ!」

幸運が前に出て、リーザとセシリアの間に立つ。杖を天に向け、彼は深く息を吸い込んだ。


「ブレイズ!」

幸運が唱えると、リーザの起こした風に乗って赤い炎が空へと昇り、竜騎士たちを包み込んだ。巨大な飛竜が苦しげに鳴き、騎士たちは火を払おうと必死になる。


「すごい、三人の連携が完璧だわ」エリザベスが感嘆の声を上げる。


エリザベスも「アース……」と唱え始めたが、幸運が手で制した。


「エリザベスは補助と回復に徹して!みんなを守ってくれ!」


エリザベスは少し残念そうにしながらも頷き、「わかったわ」と防御魔法の詠唱に集中する。


燃え盛る炎を振り払いながら、二人の竜騎士が地上へと降下してきた。彼らは鋭い剣を構え、幸運たちに突進してくる。


「来るわよ!」リーザが構える。


幸運も杖を構え、その上半分に光の刃を出現させた。薙刀のように変化した武器を振り回しながら、「こいつをどう思う?新しい能力の応用だ!」と余裕の表情を見せる。


リーザとの距離を取りながら、幸運は笑みを浮かべた。「久しぶりにゲージがたまってきてるな。儀式の効果で、ラッキースケベの発動も自在になるかも」


「余計なことはしないでよ!」リーザが叱りつけながらも、剣を鋭く振るって迫り来る竜騎士を迎え撃つ。その剣筋は鮮やかで、訓練の成果を感じさせるものだった。


二人が敵と交戦する中、三人目の竜騎士が急降下してきた。


「セシリア、気をつけて!」リーザの警告に、セシリアが手を翳すと、掌から光の剣が形成し、迫り来る竜騎士を迎え撃った。


空からの攻撃は続き、飛竜に騎乗した騎士たちの長槍が三人を苦しめる。飛竜の俊敏な動きと槍のリーチの長さに、地上で戦うリーザとセシリアは不利な体勢を強いられていた。


「くっ……槍が長すぎる!」リーザが歯を食いしばりながら叫ぶ。セシリアも肩に傷を負い、動きが鈍っていた。


攻めあぐねる三人を前にエリザベスが心配そうに「回復魔法をかけるわ!」と前に出ようとするが、槍の一撃がエリザベスの足元を襲う。


「エリザベス、下がって!」幸運が叫ぶ。「彼女の回復魔法は接触が必要なんだ……このままじゃ近づけない!」


リーザが額の汗を拭い、「まずいわね……このままじゃ」と呟く。彼女の腕には既に数カ所の切り傷が見えていた。


剣と光の薙刀がぶつかり合う中、幸運の目に決意の光が宿る。「リーザ、セシリア、もうちょっと耐えて!」


幸運は目の前の竜騎士の剣を光の薙刀で強く払いのけると、瞬時に杖を向け変えた。


「ウインドシェイバー!」

幸運の魔法が鋭い風の刃となり、竜騎士の上半身を襲う。鎧がズタズタに裂け、その衝撃で武器を手放した瞬間、幸運は飛びかかった。竜騎士の足を掴んで飛竜から引きずり下ろした。竜騎士が地面に転がる中、幸運はその隙に飛竜に飛び乗る。


「よっしゃ!これでこっちも空からの攻撃ができる!」幸運は飛竜の背に乗り、「さあ、飛べ!」と命じるが、飛竜は混乱して暴れ始めた。


「うわっ、待て待て!落ち着け!」幸運は必死に飛竜の首に掴まり、意図せず高度を上げていく飛竜を制御しようとする。その姿は滑稽でありながらも、空からの攻撃を一時的に止めることに成功していた。


混乱した様子を見たエリザベスが「これがチャンスね!」と前に進み、リーザとセシリアに駆け寄る。「二人とも、こっち!」


エリザベスは二人に触れると、「ヒール!」と唱え、緑色の光が二人の傷を包み込む。「これで少しは戦いやすくなるわ」


頭上では幸運が飛竜と格闘しながらも、「みんな、今のうちに残りの騎士を倒せ!」と叫ぶ。幸運の飛竜が空にいる竜騎士三人の邪魔をしており、戦局は少し持ち直していた。


リーザは回復したとはいえ、上空から襲いかかる竜騎士の長槍には依然として手が届かない。「回復はありがたいけど、あの槍のリーチには届かないわ!」彼女は歯噛みしながら、地上に降りてくる竜騎士に対処することしかできずにいた。


リーザは攻撃に風の刃を組み合わせているが、決定打にならない。


セシリアも回復の光に包まれて傷は癒えたものの、その光の剣では飛竜に騎乗したままの敵には届かない。


「あれを使うか…少し負担が大きいが…」

セシリアはディヴァインを使う事を考えた。以前「おっぱい地動説」のジョンの研究室を破壊した光魔法だ。


「ディヴァインは止めろ!」幸運が叫んだ。


「よく戦況を見てるな!よく分かったな!」セシリアは苦笑した。


空中で飛竜をどうにか制御した幸運は、リーザたちの苦戦を見下ろしていた。

「このままじゃまずい…!」彼は光の薙刀で空中の竜騎士を払いつつ、飛竜の首を曲げ、地上の竜騎士たちに向かって急降下する。


「ライトニング・アロー!」

幸運が左手で飛竜を指差し叫ぶと、雷の矢が高速で竜騎士めがけて飛んで行った。竜騎士にズドンと刺さると体勢を崩した。


「もう一回!」

地上の竜騎士もう一人にもズドンと刺さった。


リーザとセシリアはその隙を逃さず、飛竜から崩れ落ちた竜騎士についに届く距離まで降りてきた敵に向かう。


「今よ!」リーザが叫び、風の力を剣に集中させて振り上げる。


しかし、上空にいたヴァルガスが地上に降りてきて、リーザに襲いかかる。

「図に乗りすぎだ!」声に怒りが込められていた。


「アース・ウォール!」

ドン!という音と共に一秒ほどで壁が現れ、ヴァルガスの巨大な飛竜はぶつかった。よろめく。


「セシリア!リーザ!エリザベス!今だ乗れ!逃げるぞ!」

幸運の飛竜は地上に降り、三人を回収して空高く上がった。


「逃がすな!追え!」ヴァルガスが大声で命令をした。


無事な竜騎士二人が四人を追う。


「撤退戦だ!みんなしっかり掴んでいろ!進めえええ!」


飛竜の背中に四人が乗る。

飛竜の前方に幸運、真ん中にセシリアとリーザ、尾の付近にエリザベス。


「四人だとスピードが出ないか!」一番前方の幸運が焦る。

「落ちそう…!」一番後方のエリザベスが泣きそうな声で訴える。

「何とかこらえろ!」リーザも必死だ。

「追ってくるぞ!」セシリアが焦る。



竜騎士が一人近づいてきた。まだ敵の槍が届かない距離。弓矢で狙ってきている。


「まずいぞ!どう防ぐ!?」幸運が焦る。


「くそっ!ウインドシェイバー!」しかし竜騎士は幸運の死角におり、攻撃は当たらなかった。


そして竜騎士が矢を放ってきたが、矢は明後日の方向に飛んでいった。高速飛行中での戦闘は、お互いに困難を極めている。


「セシリア!杖を預かっててくれ!俺は飛竜のコントロールに専念する!」


「なんとか回避してくれ!」セシリアが叫ぶ。


竜騎士の攻撃を避けながら、不規則な動きで逃げる。しかし四人も乗せたこちら側の飛竜は、速度が鈍くなってきた。


さらに最悪な事に、追手のもう一人の竜騎士も迫ってきた。


一人は弓を放ち、一人は槍を取り出して迫ってきた。


「来てるよおおおお!」エリザベスが泣き出している。


「ふっ…占いは当たるものだな…。覚悟はできていた…」


「リーザ…?」


リーザは飛竜の背中の鎧に足を引っ掛け、立ち上がり、竜騎士の槍を逆手に持った剣で擦るように受け止めた。ギリギリという音を立てながら。


リーザは空いてる片手で槍を掴み、両足で踏み込み、空中で前方に一回転して竜騎士の背後を取った。


「エリザベス、いい子でいなよ!」


「リーザ!!!!!」エリザベスが叫ぶ。


「なんてこったい…!」幸運が飛竜をコントロールする。


しかし間髪入れず、矢が三人を襲う。矢をかわす動きをしている間に、リーザは見えなくなった。

リーザが竜騎士の背中を取った事で飛行方向が狂ったのだろう。


「ちくちょう…!」幸運が顔を歪める。


「まだ敵はいるぞ!」セシリアが焦る。


動揺する三人に対し、竜騎士の距離が迫ってきた。


竜騎士が槍を突き出す。それに対しセシリアが幸運の杖で受け止める。


槍が引き、もう一度突いてくる。杖で受け止める。

それを何度か繰り返し、飛竜を掴んでいたセシリアの片腕に、槍が当たってしまった。


「ぐ…」セシリアの手が飛竜を離れ、バランスを崩して落下してしまった。


「エリザベス!飛竜は放っておいても着陸するはずだ!最後まで耐えろ!」


「幸運…!?」


幸運は竜騎士が乗る飛竜に飛び移り、消えていった。


「こううん…!セシリア…!!!!」エリザベスは絶叫した。


【第01章_ラッキースケベは異端ですか? 完】

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