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無声凱歌  作者: 十田 實
◆ 第5章 ◆ 童歌が聞こえるか
75/87

‐ 第74話 ‐ ケイト、美生&凱、突入

<R15> 15歳未満の方は移動してください。

この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。

 大鳳教の近くに着いても、勇魚は見当たらなかった。

 ケイトの腕時計に入った勇魚からのメールを見ると、「今潜入できるチャンスだから先に行く!」とだけ送られてきていた。


「……こういうところ、勇魚さんと美生さんて似てますよね。こっちの苦労も知らないで」


 ケイトはまだ淡路島のトイレでの出来事を根に持っていた。今思えば、あの時ケイトから離れてザックとノアに出会っていなかったら、あたしはここにいないのかもしれない。


「勇魚さんの腕時計にはGPSを付けさせてもらったんですが、もうずっと同じところから動かないんですよね。殺されていないといいのですが……」


「心配でしょ? 行こうよ」


 ケイトは直ぐに返事をしなかった。行こうよなんて軽く云ったものの、お荷物なのはあたしだ。せめても凱くらいまで成長すればいいのだが、体はまだ幼稚園児並だった。


 ケイトが頭を悩ませていると、大鳳教の敷地内にある塔から大きな物音がした。

 間違いなく、あそこで何かが起こっている。優士がいるのだろうか……。

 敷地内には塔のほかに二つの大きな建物があり、誰が何処にいるのかわからない。


 ケイトはホログラムの地図を出した。


「潜入していた仲間の岩本から、以前送られてきた地図です。勇魚さんの居場所はGPS通りだとすると、この総本部にいることになります。優士さんを追って入って行ったのなら、優士さんも同じところにいるかと思いますが、おっしゃる通り心配なので、私が先行して裏口から侵入します。お二人は車の中にいてください。何かあれば美生さんの指示に従うよう、マックスのプログラムを変えましたので」


「なんで俺じゃないんだよ」


「そこは美生さんの方が年上ですから。あと、万が一を考えて、私の父を沖縄からここに呼び寄せている最中です。私か私の父が車に戻るまで、絶対に出ないこと。いいですね?」


「はい……」


 あたしは不甲斐ない返事をするしかなかった。やはり守られるというのは、気が重く感じる。凱もこんな風に感じていただろうか。


「凱君は、美生さんを守ってくださいね」


 そう云って、ケイトは凱の頭に手を置いた。凱は少し、照れくさそうに返事をした。

 二人が、三人が、無事で戻ってきてくれることを祈った。




 ――祈りから僅か十五分後――



「……なぁ、やっぱり似てるよ。絶対そうだよ」


「そうだけど……流石に早すぎない? 沖縄だよ? 沖縄って日本の一番端なんだよ?」


 ケイトが車を出て十五分程経ち、あたしと凱は悩まされていた。

 車の外にケイトと同じブロンドヘアの男がいて、あたしたちの乗る車をまじまじと見ているのだ。


 ケイトは車を出る前に、自分の父親がどんな人か教えてくれなかった。あたしたちも聞くことをしなかった。お互いに忘れていたのだ。……とても重要なことを。


「ずっとこっち見てるしさ、それになんか強そうだし。あ、車叩いた」


「でももし違ったら? いくらなんでも早すぎるし……」


 沖縄からここまで、いつケイトが父親に連絡を取っていたかわからないが、こんなに早く来てくれるものだろうか。傭兵一家なら、専用ジェット機があったりして、早急に駆け付けるのも可能なのだろうか。


「さっきから車コンコン叩いてるぜ? 開けてほしいんじゃない?」


「うーん……。あたしたちのために来てくれたのに開けないのは失礼だよね……。大鳳教の服も着てないし…………開けてみよっか」


 結論に至り、あたしは背伸びをしてドアを開けるスイッチを押した。

 既にそこにはケイトの父親が立っており、やはりこちらが開けるのを待っていたみたいだった。


 ケイトの父親は何も云わず、あたしと凱の顔を交互に見た。見たかと思えば腕時計からホログラムを出し、何かのデータらしきものと凱の顔を照らし合わせた。随分と無口な人のようである。


 ホログラムを消すと、ケイトの父親は凱の首元を掴み、車の外に引き釣り出した。


「何するんだ! やめろ!」


「教祖様のところに持っていく」


 ケイトの父親ではなかった。凱に手を出されてやっと気付く。やはりドアを開けてはいけなかったのだ。


 あたしはマックスのボディを叩いた。どう指示を出せばいいかわからないが、このままでは凱が捕らえられてしまう。


「マックス! あの男を倒して! 凱を助けて!」


 そう命令すると、マックスは足の高さを調節し、いくつかの武器をあたしの前に出した。

 ……そこからは何も変化がなかった。


 ケイト曰く、マックスは戦場での支援物資を目的とした移動に特化したロボットで、改良をしているものの、戦闘に特化しているわけではないと云っていた。自ら戦うケイトにとっては良き助手かもしれない。


 あたしは一番小さな銃を手に取り、男の背中を撃った。小さな子どもの体でも、銃は撃てるものだと初めて体感した。


 男は地面に膝をつき、凱を手放した。

 あたしとマックスは直ぐに凱の元へ駆け寄る。


「凱! 大丈夫?」


 凱は無傷のようで、一先ず安心した。


「この野郎!」


 男は即座に立ち上がり、銃を取り出してあたしに向けた。

 するとマックスがあたしの前に素早く移動し、自分のボディを盾のように展開して銃弾を防いだ。そういうことはできるようだ。


 あたしはもう一発男に銃を放った。効いてはいるものの、頑丈そうな男はまた立ち上がろうとした。


「行こう! 俺たちも中に!」


 既に門を潜っていたあたしたちは、逃げるように正面の建物に入った。

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