‐ 第68話 ‐ 蛙亭にて
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この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。
「勇魚さんが優士さんを見つけて追っているみたいですよ」
電話を切り、テーブルの下に伏せる美生さんに伝えた。テーブルの下では伏せる美生さんを凱君がしっかりと守っていた。守られていた子どもが随分と逞しくなったものだ。
戦闘に慣れていない大鳳教信者の店員たちは、自分一人で殆ど片付いた。ロボットが配膳用のみの機能だったことが幸いだ。これがもし戦闘機能まで搭載されていたなら、自分とマックスで戦っても無傷では済まなかっただろう。
机から飛び降り、注文を聞きに来た店員に銃を突きつける。
「神尾クリス優士……という少年をご存じですか?」
「知らねぇ……。尾澤さんから凱を見つけたら直ぐに捕獲しろと言われてただけだ……」
嘘をついている感じはしない。この若い青年が大鳳教の機密を知っているとも思えない。私を攻撃する勢いだけは大したものだったが、下っ端に違いなかった。
「いろいろと聞きたいことがあるのですが、誰ならわかりますか?」
「うぅ……店長だろ」
「店長。どうしましょう。もう殺してしまいましたかね」
辺りは私が始末した店員の死体が転がっていた。弱いといえども、年長者を一人生かしておくべきだった。最後まで残ってくれたのがこの青年なのだ。
「今は休憩中だ……。十二時から十三時の間は絶対休憩室から出てこないんだ」
「一番忙しい時間帯でしょうに。それでも店長ですかその方は」
時計を確認すると、あと五分で十三時だった。
「でも、基本五分前行動だからうちの店長……。へへへ」
何がおかしいのか、青年は不敵に笑った。
その笑みに違和感を覚えた直後、厨房の扉が銃器音と共に吹き飛ばされた。
休憩中とはいえ、店内の異常には気付いていたようだ。
ゆっくりとした足取りで出てきた男、店長は、亡き戦友デックスを思わせるほど大きな体躯をしていた。
「店長は元自衛官なんだ……。へへ」
青年はまた笑った。何が嬉しいのか私にはわからない。
早く勇魚さんを追わなければ。優先すべきは美生さんと凱君の保護と、直ぐに追うと云った約束を守ること。――聞きたかったことは、優士さん本人に確かめればいい。
手榴弾を厨房へ投げ込む。
マックスが美生さんを、私が凱君抱えて外に飛び出る。
仕入れたばかりの手榴弾は威力が高く、蛙亭は簡単に崩壊した。私の脱出も、少しギリギリだった。
「大丈夫ですか?」
「俺は担がなくてもよかったのに。ゴリラみたいな力だ」
「あら、いつの間にそんなことを言うようになってしまったのでしょうか……」
「違うよ! 勇魚が言ってたんだ」
「なるほど。叱るのは後にして、私たちも急いで向かいましょう」
車に乗り込み、行先を大鳳教総本部に指定した。
私がこの世で最も憎むべき場所へ。
お読みいただき、ありがとうございます。
第四章、完
第五章(最終章)へ続く




