‐ 第62話 ‐ 緊急会議
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この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。
日本中の大鳳教信者に凱の捕獲を呼び掛けた。国外にでも逃げられたらさらに面倒だ。もうこれ以上失態はできない。利用してやるつもりがタオの良い方向に流れている。憎たらしい。
大鳳教から緊急の連絡が入った。滅多に開かれない会議がまた開かれる。出席者は僕と母さんと教祖だけだ。アンソニーとタオが出席者に入っていないことに疑問が残るが、実に良いメンバーだ。車を飛ばし、総本部へと向かった。
遠方にいたということもあり、会議室に着いたのは僕が最後だった。こんなじめじめした日でも相変わらず教祖はマスクを被り、何故だか母さんは神妙な面持ちをしている。
「忙しいところ申し訳ないね。慧君」
口を開いたのは教祖だった。一瞬、どきりとする。
状況が読めない。あの二人がいないことは、何か関係しているのだろうか。
「実はね、美鈴君とアンソニー君の持っていた被検体が、ある力を発現して暴走してしまったんだ。外に出ていた君は知らないだろうが、それで今教団内は大混乱なんだよ。特に研究所は大打撃を受けた」
教祖がそう云った後、母さんは監視カメラに記録されていた被検体の暴走の様子を、ホログラムに映した。一体の被検体が、通路にいる信者たちを見つけ次第頭を鷲掴みにし、殺している……?
道理で、いつも見かける研究所の信者がいないわけだ。
見かけた信者の様子も変だった。変な奴は多いが、祟りだの罰だのぶつくさと呟いて、取り分けおかしかった。確かに、凱や宇智田の力と比べると、この被検体の破壊させる力は大鳳教への、医師たちへの罰かもしれない。
「ドクター奈須川とドクターアンソニーが持っていた、ということは、二体の被検体が暴走したのですか? 記録には一体だけしか映っていませんが……」
「いいや。合わさった一体だ。ふふ、何を言っているんだって顔だね。再生力を発現した美鈴君の被検体の脳を、アンソニー君が所持していた死体に移植したんだよ。移植手術後問題なく目覚め、順調かと思ったんだけどね……。どういうわけか再生とは反対の、記録通りの力を持ってしまったようだ。タオ君の最後の報告によれば、記憶転移の症状まであったそうだ。これはある意味とても厄介だね。あの年頃の少年はまずこちらに従うことはないだろう。彼らの暴走がそれを意味している」
「……もしかして、ドクターアンソニーとドクタータオは……」
教祖はゆっくりと頷いた。
「アンソニー君を含む教団内の信者を三十七名殺害し、ここから逃亡した。外でも派手にやっているんだろう。一般信者から目撃情報が出ている。目立つからね……直にニュースにでも載るさ」
「ドクタータオは……」
「彼はなんとか一命を取り留めた。美鈴君の研究室で眠っているよ。ぜひ会いに行ってやってくれ。事の重大さがわかるだろう」
「はい……」
こんな騒動、大鳳教始まって以来のことだろう。
危機だろう? なのに何故、教祖は落ち着いていられるのだ。おかしくなってしまった信者同様、この一件で教団を抜けたい者は確実に増えるはず。研究員も多く殺され、幹部まで一人失った。それなのに教祖の声色はいつもと一切変わらない。気味が悪いほどに。
一体そのマスクの下はどうなっている。どんな顔で、僕や母さんを見ているんだ。
「被検体は自身のことを『優士』と名乗った。君と美鈴君に断言しておこう。優士は必ずここへ戻ってくる。それだけ念頭に置いておきたまえ」
……ただの報告会議ではないはずだ。何故云わない?
僕がどうするべきかわかっていると、教祖は悟っているのだろうか。
『優士に対抗できる凱を、今すぐ見つけてこい』……と。




