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無声凱歌  作者: 十田 實
◆ 第3章 ◆ 愛と破滅
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‐ 第51話 ‐ まだ死ねない

<R15> 15歳未満の方は移動してください。

この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。

 まだ死んでいなかった。知らない女の声が聞こえるからだ。何かぶつぶつ云っているのが聞こえる。

三枝木に殴られ過ぎた時のように、また頭が真っ白だ。体は指一本動かすこともできず、耳だけが聞こえる。死んだ人間は暫く耳が聞こえていると聞いたことがある。死んでいないのではなく、正確にはそっちかもしれない。


 真っ白だった頭が、ジッパーを下げるような音がして、さらに白くなった。


「可哀想に。生きていたら凱の被検体にしたかった」


 凱? 被検体だと……? 一体誰だ……。

 頭が真っ白なのではなく、俺の視界が白いだけなのだとわかった。ミラは何処だ。ミラはどうなった?


「取り敢えずそっち子は今すぐ保管ね。直ぐに使うには勿体ないわ」


 女の声は誰かにそう指示した。そっちの子とは何だ。誰のことだ! そう叫びたいが声が出ない。


 白い視界は徐々にそれ以外の色を取り戻し始めた。

 鉛のように重い瞼を片目だけ開くことができた。


 眼球を素早く回す。

 ミラは俺の隣にいた。寝ていた。


「ドクター奈須川! 死体が生きています!」


 慌てふためく声と共に、床に何かを落とす音がした。


「……嘘でしょう……なんて生命力なの……! 心臓は止まっていたはず」


「かなり微弱ですが、確かに動いています! 直ぐに蘇生の準備を」


「ちょっと待ってくれる?」


 やはり俺は生きている。白い服。医者なんだろう? ミラだって、まだ寝ているだけかもしれない。俺なんかよりミラを助けろ。


「私はこの生命力に賭けてみたい。凱の歯を持ってきてちょうだい」


「いいのですか?」


「まだ数はある。同じような被検体に使うより、私はこの少年に使ってみたい。本当に死ぬ前に早く用意してちょうだい」


 凱……? 歯? さっきから意味がわからない。俺に何をするつもりだ。


 ミラ、本当に死んでしまったのか? だったらもう、俺もそっちへ逝きたい。俺に構うな。

 どうしてミラが死んで、お前達のような奴が生きているんだ。ふざけるなよ。お前達が死んでくれよ……!


 ――もう、何もかも嫌だ――




「ドクター奈須川、準備が出来ました。おや……? この少年、泣いていますね」


 部下の言葉に奈須川は煩わしく目を向ける。


「そんなの、ただの反射でしょ」

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