‐ 第50話 ‐ 相棒と商品
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この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。
三枝木は鼻歌交じりで車を運転していた。女との待ち合わせ場所に向かっていた。
女とは客のことだ。三枝木が商品を提供し、女が代金を支払う。女は羽振りが良く、三枝木にとって太客だった。
今回提供する品は、特に大金になる自信があった。
三枝木は大金が手に入ると、学のない自分が偉い人間に思え、満足感を得られるのだった。
故に三枝木の軽快な鼻歌は、目的地に着くまで止むことはなかった。
「遅いじゃないの三枝木さん。私ただでさえ忙しいのよ。欠損品だったら怒るわよ?」
「すみません奈須川さん。まさか。ピチピチの五体満足ですよ。おまけもあるんですから」
「期待させるわね。早速確認させてもらうわ」
三枝木は奈須川をワンボックスカーの中へと丁重に招いた。
「まずはこちらから……」
三枝木は遺体袋のジッパーを下げ、遺体全体を女に見せた。
「……五体満足とはいっても、酷い損傷ねぇ。暴行死? 内臓まであまり傷ついてないといいけど……。まぁ若い男だし、頂くわ」
奈須川は手袋をしてから遺体の男の体を傾け、背中など隅々まで確認し、袋を締めた。
臓器ではなく人間一体の、それも老体ではなく若者を提供してやるというのに、渋々貰ってやるという奈須川の態度が三枝木は気に食わなかった。笑顔の裏で殺意すら湧いていた。しかし大金が手に入るのなら安いことだと思うしかなかった。
「では、おまけというのはそちらかしら? 見せて頂戴」
三枝木は先程より一回り小さい遺体袋を開けた。
開けるや否や、奈須川は顔色を変えた。
「あらあら、とても綺麗な死体。本当にこっちがおまけなの?」
おまけという名の、三枝木なりの戦術だった。今後奈須川と長く取引をするための、大きなサプライズだった。三枝木は奈須川からの信頼を得ようとした。
「綺麗すぎるわね。それに……。まさか、この子犯していたりしないでしょうね? 私そういうの嫌いなのよ! 年頃の娘がいるってあなたに話したことあったでしょう!」
奈須川は自分の憶測で豹変した。
「とんでもない! この女を始末したのは俺の知人ですが、そいつはゲイ野郎です。本当ですよ!」
「……本当でしょうね? 調べたらわかりますからね……」
本当だった。三枝木はタラスを殴殺している間、ミラのことは沼尻に任せていた。沼尻がゲイだというのも本当のことだった。急いでいたため、ミラの死体は沼尻が袋に詰めて持ってきた状態のまま確認しなかった。沼尻がどうやってミラを殺したのかは三枝木にもわからないが、今考えると殺す相手を交換してもよかったと思った。それなら互いに楽しんでから殺していたに違いない。勿体ないことをしたと思った。
しかし、それだと奈須川にバレて信用を失うことになる。やはり自分がタラスを殺して正解だったのだ。三枝木はそうだと気づくまで、時間が掛かった。
「これはおまけとして受け取れないわ。うんと弾んでいつもの口座に振り込んでおくから、楽しみにしてちょうだい。またよろしく頼むわね」
奈須川は自分の部下に遺体を運ばせ、満足気に帰っていった。
三枝木は望んだ通り、奈須川からの信頼を得られた。
バックドアを強く閉め、運転席に乗り込む。運転をしてくれる奴はもういない。
三枝木はほんの少しだけ、惜しく思った。




