‐ 第49話 ‐ 縁
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この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。
[]内は英語を表しています。
アンソニーは三体の被検体を前に、煙草の煙を長く吐いた。呆れた顔をしていた。
内二体は尾澤の部下がオザワフロンティア本社で捕らえ、総本部の地下で監禁していた若者だ。
[えらく……仕事が早いのね]
奈須川がアンソニーの研究室を訪れ、三体の被検体を見て云った。自分が命懸けで奪い取ってきた凱の歯を、アンソニーは既に三体の被検体で実験していたのだ。
[そりゃあ、あんな映像を見たら楽しみだったし、随分待ちくたびれたからね。でもナンセンスだ。子どもの歯ではなく、宇智田美生の本体がここに欲しい。この三体で試したが何の変化もない。ドクタータオの吉報を待つよ]
[なんですって? 私がどれほど苦労してそれを手に入れてきたと思ってるの! 大体、何故私の許可もなく使用するの!]
「そんなこと言ったって許可を出したのは大鳳だ。研究詰めの君を思ってのことだろう。というか、大鳳生命研究所の責任者は私だ。君の許可なんていらないと思ったのだが?]
奈須川は怒りに歯を食いしばった。自分より先に入信していたがために、アンソニーは大鳳生命研究所の責任者となった。教祖とも友人のように接しているのが腹立たしい。
しかし、教祖が自分の身体を案じてくれたことは、そのまま素直に受け取っていた。
[全く……私からしたら君はまだまだ子どもだよ。お得意の癇癪を起すくらいなら、煙草を吸ってくれて構わないよ。それとも大鳳の膝に泣きつきにいくかい? ハハハ]
そんな奈須川をアンソニーは相手にしなかった。これが二人のいつものやり取りだった。
[あら、もう死んでるの]
被検体を見て奈須川が云う。
[あぁ、もう期待する余地もないからね。いるかい?]
[諦めるのが早いのね。一応貰っておくわ。私はまだ諦めていないから]
[見切りが早いだけだ。君は自分の手でその歯を取ってきたから諦められないんだよ]
[だったら三本も使わないで頂戴!]
[おぉ怖い。悪かったよ。兎も角私はここに宇智田美生が届くのを待つが、勿論凱だって待っているよ。慧によろしく]
奈須川は研究室を出て、ドアを蹴った。
(あのジジィめ馬鹿にしやがって……)
奈須川はコーティングした爪が割れるほど強い力で爪を噛み、教祖のいる部屋に向かった。教祖である大鳳と奈須川は親密な関係だった。奈須川の元夫より、元々夫より、奈須川は大鳳のことを深く愛し陶酔していた。
(早く教祖に会って、私の話を聞いてほしい)
その一心で、廊下を歩いていた時だった。ある若者から連絡が届いた。こんな時に煩わしいと思ったものの、内容は奈須川の利益になるものだった。
奈須川は直ぐに返信し、若者との待ち合わせ場所に向かうことにした。教祖に会うのはその用事を済ませてからだ。




