‐ 第37話 ‐ 襲撃
<R15> 15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。
細い地下通路を這いつくばって進むと、立って移動できるほどの空間に出た。
通路に従い真っ直ぐ進む。早く安全なところに出たい。ケイトや美生に連絡を取りたかったが、自分が地下にいるせいか、電話が全く繋がらなかった。二人ともか弱い女とは云えないが、気掛かりだった。
漸く目の前に地上に繋がると思われる梯子が見えた。
凱を抱え、先に梯子を登らせる。凱の力で天井の扉が開くか案じたが、凱は案外軽そうに扉を持ち上げた。いつの間にか、成長と共に筋肉まで付いたようだ。
「頭はゆっくり出せよ。周りはどんなだ。誰かいそうか?」
「……誰もない。何だか、お洒落なところだよ」
どう進めばRMSからお洒落なところに出るのかと思ったが、地上へ出て見ると凱の云った通り、アメリカンヴィンテージスタイルの小粋なカフェだった。照明は消されており、入口のドアにはこちら向きに「OPEN」の札が提げられていることから、店は閉まっていることがわかる。といっても、真夜中なので当然なのだが。
この見知らぬカフェが何処なのか考えていると、凱が何かを見つけた。
「勇魚! ここになんか置いてある」
凱はカウンター机の真ん中を指差した。
手紙と鍵が、目に付くように置いてある。俺は真っ先に手紙を手に取った。
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――拝啓、キャサリン・ブラント様――
(この手紙を読んでいる頃には僕は避難していますのでご心配なく)
本日はご来店ありがとうございました。
隣から物騒な物音が聞こえてきたので、ケイトさんがいつか来るかもしれないと云っていた緊急事態だと、勝手ながら判断しました。
裏口の鍵を置いておきますので、この鍵で出てください。
キッチンの棚に置いてあるモノ、良かったら持って行ってください。
落ち着いたらまた、ご来店お待ちしております。
――From ラフォーレ店長、神部――
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拝啓で始まりFromで終わっているこの手紙は丁寧なのか、それとも適当なのか。神部という店長が天然なだけなのだろうか。それとも襲撃に焦ってのこの手紙なのかは(字も雑である)わからない。わかったことは、ラフォーレというこのカフェはRMSの隣に建っていて、店長は協力者で、ケイトの本名がキャサリン・ブラントということだ。
「キャサリン・ブラントね……」
ケイトの名を口に出しながらキッチンに回る。棚の一つに布が掛けられており、これが店長の云うモノであることが一目でわかった。
テーブルクロス引きのように素早く布を取ると、ケイトに渡された護身用の銃よりも、明らかに殺傷能力の高い、小型の機関銃が用意されていた。
ないよりはましだと思い、店長の言葉に甘え持って行くことにした。
そもそも手紙がケイト宛だったということは、ケイトはここへ来る予定だったのに、それができない状態ということだろうか……。
地上に出た今もう一度電話を掛けてみるが、やはり繋がらない。ケイトやデックスと連絡が取れない今、どう行動するべきかわからない。凱と美生の保護が優先だと云っていたが、本当にそれでいいのだろうか。美生はケイトに保護されていると考え、俺は凱を連れて逃げるのが、一番正しい行動なのだろうか。
それが正しくとも、何か引っかかる自分がいる。
「美生たち大丈夫かな。まだあそこにいるのかな」
「連絡が取れねんだ。わからねぇ」
「助けに行こうよ。俺、美生に助けてもらったもん」
簡単に云う。美生に助けてもらったのは俺だってそうだ。
……引っかかるのはこれだ。俺は助けに行きたいのだ。
「…………行くか」
これから残酷な仕打ちを受けた相手に立ち向かうというのに、凱は屈託のない笑みで頷いた。




