‐ 第36話 ‐ 襲撃
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この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。
襲撃の影響でエレベーターは動かず、階段を使うしかなかった。これでは工場の夜の二の舞だ。上から攻撃を受けているということは、階段を上がれば大鳳教の信者がいるはずだ。しかし、他に脱出できるところがわからない。立ち止っていても瓦礫の下敷きになってしまう。
体を壁にくっつけ、上の様子を伺う。まんまと白装束を着た信者に見つかった。
咄嗟に銃を向け、狙いも定めず引き金を引く。あたしが銃を撃つのと相手が銃を撃つのとでは、相手の方が少し早かった。
あたしの撃った弾は相手の肩の横を通過するし、相手が撃った一発は私の横腹を掠めた。痛みに一瞬目を閉じてしまうが、直ぐに持ち堪える。見て触れずとも、掠めた横腹は治っていることがわかった。
直ぐに二発続けて撃った。どちらかの一発が相手の体に命中し、信者は階段から転げ落ちる。
また階段を駆け上がる。
だが、折り返したところで信者の群勢が現れた。
これだけの人間に自分は撃たれる。――恐い。痛い。頭はそれで一杯になった。
気が付けば、誰かがあたしの隣に立ち、機関銃を撃ち鳴らしていた。
血で真っ赤になった白装束の信者達は、階段からごろごろと転げ落ちた。
乾いた機関銃の音が鳴り止んで、漸く隣にいる人物を見ることができる。ケイトだった。
「迷わず撃たないと、ですよ。それが難しいですよね」
ケイトはサングラスを外した時と同じように、にやりと笑った。恐怖を覚えてもいいところだが、それはあたしを安心させた。
「王さんは?」
「次から次に瓦礫が落ちてきまして、諦めました。最初からこうしていなければならなかったのに、申し訳ありません。RMSの責任者失格です」
「いいよそんなの! あたしは死なないんだから。でもやっぱ恐いね……。死ぬかと思った。慣れられるものじゃないね」
「それは、慣れる必要なんてありませんよ。さ、崩れる前に急ぎましょう」
階段を駆け上がりながら、ケイトはあたしに訊ねた。
「美生さんは凱君と勇魚さんを見かけませんでしたか?」
「ううん。見てない」
「そうですか……。電話が繋がらないので、電波の届いていない地下通路を使って逃げてくれているとよいのですが……」
「そんなのあるの?」
「二カ所だけあります。勇魚さんたちの部屋と、王のいる部屋の近くです。もう塞がれてしまったでしょうけど」
「そう……。王さんと世良先生もそこから出られているといいけど」
「……えぇ」
ケイトは神妙な顔をしていた。それはもしかすると、あたしの云ったことが手遅れということを意味しているのだろうか。
揺れ響く階段を上がり切り、ケイトが慎重に壁から顔を覗かせた。
「……一人、敵がいます。私が攻撃して進みますので、合図をしたら着いてきてください」
ケイトはそう云って銃を構えた。酷く、胸騒ぎがする。
ケイトは待ち構えている男の前に素早く飛び出し、機関銃を放つ。
ところが、そのほんの少し。飛び出し銃を放つ瞬間、タイミングを狙ったかのように、あたしたちのいる床と天井が爆発音と共に崩壊した。
足場の崩壊の方が早かった分、ケイトの放った銃は軌道が逸れ、男には当たらない。
落下し、体が宙に浮いている時間が長く感じた。上から見下ろす男、尾澤と互いに見つめ合っていたからかもしれない。随分雰囲気が変わったが、あの卑しむような目は紛れもなく尾澤慧だった。




