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無声凱歌  作者: 十田 實
◆ 第2章 ◆ RMS
18/87

‐ 第18話 ‐ 追跡開始

<R15> 15歳未満の方は移動してください。

この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。

 誰かが手引きしているとしか思えなかった。


 宇智田と甫仮の家族を人質に捕えようと向かった部下から連絡があったのだ。『既に自宅は蛻の殻だった』と。


 続けさまにあの三人を追っていた部下からも連絡があり、急いで駆けつけてみると、宇智田の車は海沿いの地下駐車場に乗り捨てられていた。そして、僕があの夜宇智田の車のナンバープレートに取り付けた発信機は、ナンバープレートごと剝がされていた。おかげで奴等の位置は海の上に浮かんだ状態だ。宇智田美生にせよ甫仮勇魚にせよ、こんな対処ができるとは考えにくい。荒っぽくて、こういったことに慣れている者が、奴等に接触したと考えていいだろう。




 駐車場に戻ると、部下が汚い老人たちと何やら話をしている。彼らは鍵のかかった宇智田の車を開けられないかと、卑しく虫のように集っていた。


「でっかい白人の男がよぉ、海に投げたんだ。こいつのナンバープレートだよきっと」


 老人は馴れ馴れしく部下にそう云った。

 ――大きな白人の男――。老人の云うことが正しければ、手引きしているのはそいつに違いない。


 老人は情報を提供した報酬が欲しいと強請った。

 対処に困った部下が目で僕に訴えかける。


 腕時計など持っているはずもない彼らのため、わざわざ車から財布を出し、紙幣を取り出そうとすると、老人はそれを拒んだ。


「んなもん、いらねんだよ」


「……というと?」


 老人はシミだらけの血管の浮いた手で、宇智田の車を撫でた。


「こいつの鍵が欲しい」


「そんなものが?」


「そんなものって、こいつは良い車だよ」


 老人は怒り気味に云った。

 僕には理解できなかった。こんな車に何の価値があるというのか。


「では、複製した鍵をまた持ってきますよ」


 そう云うと老人は満足気な顔を見せ、海岸に続く階段を上がり、姿を消した。


「慧さん、複製なんて作れるのですか?」


 部下が僕に訊ねる。とんだ愚問だ。


「云っただけさ。放っておけばいい」


 手引きした連中も、最初から凱を狙っていたのだろうか。奴等が凱を連れてこれほどスムーズに逃亡できるのは、いくら何でもおかしい。準備されていたかのようだ。地下から凱が救出されるのを……。


 つまり僕は、そいつに、横取りされたということだ。

 ――また、腹の底が沸々と熱くなる。


「……オザワフロンティアに勤める大鳳教信者、元信者、それから反大鳳教を急いで洗い出してくれないか」


 手始めに僕は部下にそう命じた。


 部下は良い返事をしたものの、洗いざらい調べるのには時間がかかるかもしれない。僕が云ったそれらは膨大な数だからだ。信者が多い分アンチも少なからずいる。アンチたちが結託して総本部に突入してくる……なんてことは大鳳教含め宗教団体にとって珍しくない。過去には海外の武装集団まで強行突入してきたことがあった。あれには一溜まりもなく、結果その時に凱が行方知れずとなったらしい。  ――それがどうやって父さんの手に渡ったのかは、聞ける状態になった父さん本人に聞くしかないのだろうか……。


 手引きしている連中とどこかに繋がりがあるのは確かだろう。凱は人生の殆どを大鳳生命研究所で過ごし、工場の地下で眠らされてきたのだから。


 急いで奴等を探さなければ。

 母さんに云った期限が、近づいている。

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