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第33話:スイナ草

「採集したスイナ草は私が預かるから持ってきてねー!」


 荷物持ちを買って出てくれたカイナに感謝しつつ、太一たちは湖の畔まで移動してスイナ草の採集を始めた。


「こ、これでいいのか?」

「分かんねぇ」

「とりあえず、ミリーさんに持っていってみようか」


 ひとまず採集をしてみくれと言われた太一たちは、自分なりにスイナ草を採取してからミリーへ持っていく。

 一つひとつ教えてもらえると思いきや、まさかの実戦形式に驚いてしまう。


「タイチ君は根っこの手前で切りすぎね。スイナ草って実は、根っこと茎の間に回復成分が豊富にあるって言われているの」

「分かりました」

「ユウト君は逆に根っこを完全に切っちゃってるわ。これだと次に生えてくるかどうか分からなくなっちゃうし、そもそも下級ポーションにも解毒ポーションにも使えないかも」

「げっ! 一番最悪なやつじゃないか!」


 太一と勇人がダメ出しを食らう中、公太が持ってきたスイナ草を見てミリーが感嘆の声をあげた。


「ど、どうでしょうか?」

「……コウタ君、完璧よ!」

「おぉっ!」

「すげぇじゃないか、公太!」

「あ、ありがとうございます!」

「えぇー! 私でも完璧って言われたことないのにー!」


 カイナが嫉妬の声をあげるも誰にも反応されず、ミリーは柔和な笑みを浮かべながら公太の頭を優しく撫でた。


「すごいわね、コウタ君。採集が得意なのかしら?」

「得意と言うか、おばあちゃんとおじいちゃんのところが農家をしていて、それで僕も時々手伝っていたんです」

「なるほど、それなら採集の知識があってもおかしくはないわね」

「えへへ」


 嬉しそうに頬を掻いた公太を見て、太一と勇人が彼に声を掛けた。


「ねえ、公太。俺たちにも教えてよ」

「そうだぜ! 全員で合格貰いたいっての!」

「うん、もちろんだよ!」

「……あのー、私にも教えてくれませんかー? コウタせんせーい?」


 太一と勇人が教えてほしいと口にする横で、カイナもこっそりと声を掛ける。


「ぼ、僕でよかったら、よろしくお願いします!」

「やったー! ありがとう、コウター!」

「全く、この子ったら」


 嬉しそうにしているカイナを見て、ミリーは呆れたように呟くものの、彼女の行動を止めようとはしない。

 年下や後輩に教えを乞うのは嫌だと口にする者も多いが、カイナはそんなことで文句を言う性格ではなく、むしろ教えてもらえるなら誰でもありがたいと思える性格をしている。

 そういう人間だからこそ、これからの成長にミリーも期待しており、ついつい手を貸してしまうのだ。


「まずはスイナ草の根っこを確かめるために周りの土を掘っていきます」

「「「ほうほう」」」

「そして……ここ、根っこと茎の境目があるの分かる? 茶色と黄色、緑色のグラデーションになっているでしょう?」

「「「おぉっ! 本当だ!」」」

「僕は茶色と黄色の間でスイナ草を採取したんだ。回復の成分については偶然だったんだけど、こうすると根っこもしっかりと残るから、次に生える分には問題ないかなって思ったんだ」

「「「なるほどー!」」」


 太一、勇人、カイナが全く同じ言葉を何度も口にするため、公太は苦笑が止まらない。

 それでも三人は公太の説明に耳を傾けており、彼が採取したスイナ草を見て感心していた。


「そんなところまで見ているんだなー」

「マジですげぇよ、公太!」

「本当にすごいわ! コウタもタイチと一緒で、冒険者じゃない方がいいんじゃないの?」


 太一だけでなく公太の隠れた才能も目撃したカイナがそう口すると、勇人が少しだけムッとした表情で口を開く。


「えっと、俺は?」

「ユウトは……うーん、今のところは保留で!」

「なんでだよ!」

「だって、ユウトが他に何か得意なことがあるかどうか分からないんだもの」

「それはそうだよ、勇人」

「勇人君は足が速いよね!」

「足が速い……それはもう、冒険者でいいじゃないかしら?」

「公太、てめぇなあっ!」

「えぇっ! な、なんかごめんね!」


 勇人をフォローしていた二人だったが、公太の発言だけはフォローになっておらず、勇人は大声をあげていた。


「でもまあ、得意不得意は当然あるわ。コウタやタイチだけじゃなく、ユウトも自分が得意とすることを仕事にできると思ったら、ちゃんと転職を考えるのよ」

「で、でもなぁ……」

「もしも私たちへの義理で冒険者を続けたいと思っているのなら、止めてちょうだいね。そのせいであなたたちの命が危険に晒されるなら、義理なんていらないもの」


 ミリーの言葉には不思議な重みがあり、太一たちは顔を見合わせると真剣な面持ちで頷いた。

 長いこと冒険者をしていると、先輩や同期、そして後輩の死を見てきたのかもしれない。

 そんなシーンやセリフがマンガやゲームにも多く存在していた。

 カイナに言われた時は転職するつもりはないと思っていた太一たちも、助けてくれた張本人であるミリーの言葉には考えさせられてしまう。


「とはいえ、今は薬草採集の真っ最中で冒険者活動をしているのだから、しっかりと採取して報酬をいただきましょう」

「「「はい!」」」


 こうして太一たちはカイナも交えてスイナ草を下級ポーションの素材になるようにして採集していったのだった。

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