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第25話:選んだ依頼

「……なあ、勇人、公太」

「……これってもしかして」

「……昨日とほとんど同じだよね?」


 三人で依頼を吟味した結果、太一たちが選んだのは、昨日の依頼とほとんど同じ内容のものだった。


「あ、あははー。そういえば、ユウト君とコウタ君の依頼は継続依頼だったわね」

「「継続って、それじゃあ現場も同じってこと!?」」

「そうなるかなー」


 まさかの展開に勇人と公太は唖然としてしまう。

 しかし、太一だけは現場が異なり、別のお店での店番となっていた。


「クレアさん、ここのお店はどういった商材を扱っているんですか?」

「ここは……うん、雑貨屋ね」

「ざ、雑貨屋ですか?」

「そうよ。まあ、なんでも屋って言った方がいいかもしれないわね。使えそうなものであればなんでも買い取ってくれる、そんなお店よ」


 なんでも屋と聞いて、太一はどうしたものかと考えてしまう。

 販売するだけなら値札を見て対応することもできるが、買取りとなると太一には難しい。何せ買取査定ができないからだ。


「そうなると、ちょっと別の依頼にした方がいいかもしれないなぁ」

「そうか? やってみてもいいんじゃね?」

「僕もそう思うよ。ほらここ、見てみてよ」


 太一がしり込みしていると、勇人と公太が内容の説明文の最後の部分を指差した。


「……買取りはその日のみ行わないものとする、かぁ」

「これなら大丈夫じゃないか?」

「太一君、数学の成績もよかったし、それでリーザさんにも褒められたんでしょう?」

「数学の成績は置いておくとして、まあ、簡単な足し算引き算だったからな。二人でもそれくらいならできるだろ?」


 とはいえ、ここで時間を使ってしまっては勇人と公太だけでなく、クレアの時間も無駄にしてしまう。


「……まあ、やってみるか」

「ありがとう、タイチ君! それじゃあ、そのまま依頼書を受付にお願いしようかしら。次からは自分たちで依頼を選んでもらって、それを私が確認して依頼を受ける、しばらくはそれでもいいかしら?」

「「「よろしくお願いします!」」」

「分かったわ。それじゃあ私は一足先に受付に戻っておくわね」


 笑顔でそう口にしたクレアが個室を出たあと、しばらくして太一たちも外に出た。すると――


「あっ! タイチー!」

「カイナさん!」


 個室から外に出たところでカイナと顔を合わせた。


「個室からって、何かあったの?」

「いえいえ、クレアさんに依頼の選び方を教えてもらっていたんです」

「あー、なるほどねー。新人はよく職員にあれはダメ、これはダメって言われているものねぇ」

「そうなのか?」

「僕たちはまだ二回目だし、これからかもしれないね。気をつけなきゃ」


 勇人が首を傾げると、公太が気をつけようと声を掛ける。


「そうだ! ねえねえ、三人とも。次でいいから、今度は私と一緒に依頼を受けてみない?」

「「「カイナさんと?」」」

「そうそう! まだ外の依頼って受けたことないでしょ? ディーさんたちは忙しいだろうし、まあ三人が良ければってことで、考えておいてね!」


 そう口にしたカイナは、忙しなくその場を去っていった。


「……行っちゃったな」

「……都市の外かぁ、どうする?」

「……僕たちだけじゃ決めれないし、クレアさんに相談でもいいんじゃないかな?」

「「それしかないなぁ」」


 今すぐ決めなければならないことでもないと判断し、太一たちはとりあえず依頼を受けるため受付へ急いだ。


「すみません、遅くなりました!」

「いいのよ、カイナちゃんと話をしていたのが見えていたから。それで、なんの話だったの?」

「実は、今度一緒に依頼を受けないかって提案されたんだ」

「でも、都市の外の依頼って言っていたので、また今度クレアさんに相談に乗ってもらってもいいですか?」

「カイナちゃんが言いそうだわ。分かった、今すぐじゃなくていいのよね?」

「急ぎではないし、大丈夫です」

「了解。それじゃあ今日はこのまま選んだ依頼をお願いするわね」


 クレアがそう口にすると、太一たちは依頼書を提出し、依頼を受けると冒険者ギルドの外に出た。


「それじゃあ、俺と公太は昨日と同じ場所だな」

「太一君、頑張ってね!」

「二人もな」


 三人はその場で別れると、太一はクレアから貰った地図の通りに進み目的地を目指す。


「確か、今回は少し特殊な見た目のお店だから分かりやすいはずってクレアさんは言っていたけど、どこかな……あー……あれか」


 地図を見ながら周りに視線を向けていると、太一は通りに並ぶ建物とは異なり、明らかに色味や形が異なる建物を発見して顔を引きつらせる。


「……す、すごいなぁ、このお店は」


 周りが石造りで、使っている素材の色をそのまま使用しているのに対して、なんでも屋だけは赤や青、緑や黄色といったカラフルな塗料を外壁に塗っており、目立つことこの上ない。

 入り口の上には『リディのなんでも屋』と大きな看板が取り付けられており、通りを行く者なら絶対に一度は目にしてしまう造りになっていた。


「…………これ、本当に大丈夫なんだよな?」


 一抹の不安を抱きながら、太一はリディのなんでも屋に入っていった。

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