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第21話:土竜亭

 早速地図の通りに足を進め、太一たちは土竜亭に到着した。

 石造りの二階建てなのは冒険者ギルドと同じ、一階に受付があるのだが、同時に酒場がほとんどの面積を占めている。

 二階に泊まる部屋があり、酒場と宿を経営しているのが土竜亭だった。


「す、すごい賑わいだなぁ」

「ここに入るのか? 俺たち、まだガキだぞ?」

「でも、クレアさんが言うには、ここであっているはずだよ?」


 土竜亭の前でしばらく立ち尽くしていた太一たちだったが、このままでは往来の邪魔になると、意を決して中に入った。


「いらっしゃーい! ……って、君たち、どうしたの?」


 そこで顔を合わせたのは、同い年くらいで給仕をしている少女だった。


「えっと、土竜亭を紹介された、新人冒険者なんですが……」

「あっ! 宿の方ですね! おかーさーん! お客さんだよー!」


 少女が受付の奥に声を掛けると、奥の方から恰幅の良い女性が姿を現した。


「いらっしゃい! 宿の方だね? ありがとね、アキ!」

「ううん! それじゃあこれ、運んでくるね!」


 アキと呼ばれた少女が酒場の方へ向かうのを見届けると、太一たちは女将に声を掛けた。


「あの、これ、クレアさんから紹介状だって渡されたんですが……」

「へぇー! クレアが紹介状をねぇ! どれ、確認させてくれるかい?」


 紹介状を受け取った女将が内容を確認していく。


「ふむふむ……タイチにユウトにコウタか……よし、偽物じゃなさそうだね! それじゃあ部屋は二階に上がって右の通路を進んだ突き当りだよ! 三人とも同じ部屋でいいかね?」

「「「そ、それでお願いします!」」」

「かしこまりだよ! これがカギで、食事は酒場でになっちまうから、あたいかさっきのアキに声を掛けてちょうだいね!」


 てきぱきと説明してくれた女将からカギを受け取った太一だったが、ここで慌てて口を開く。


「あ、あの! お、お代はいくらになりますか? 俺たち、あんまりお金を持っていなくて……」

「お代? んなもんないけど?」

「「「……えっ?」」」

「んっ? なんだ、聞いていないのかい?」


 何を聞いていないのか分からず、太一たちは首を傾げてしまう。


「土竜亭と冒険者ギルドは連携していてね、紹介状を書いてもいいと思った将来有望な冒険者には無償で宿を使わせているんだよ」

「えぇっ!? で、でも、それじゃあ女将さんたちがマイナスなんじゃ?」

「あはは! まさかこっちの心配をしてくれるなんてね、さすがはクレアが紹介するだけのことはあるさ」


 快活な笑い声をあげた女将に太一たちはさらに首を傾げる角度が大きくなってしまう。


「安心してちょうだいな。無償とは言ったけど、新人冒険者からお金を受け取らないってだけで、冒険者ギルドからは部屋代をいただいているのさ」

「……そ、そうなんですか?」

「それならまあ、いいのか?」

「ぼ、僕たち、もっと頑張らないといけなくなったね」


 女将にマイナスがないと分かり一安心したものの、結局は冒険者ギルドのおかげで宿に泊まれていると知り、太一たちはさらに頑張らなければいけないなと思うようになってしまった。


「そんなに気張らなくてもいいんだよ! あんたら、すでに冒険者ギルドの支払いでいくつか買ったものがあるだろう?」

「「「は、はい」」」

「返すのはそれだけでいいからね。部屋代はあくまでも冒険者ギルドのサービスなのさ」

「「「……むしろ、そっちの方がプレッシャーなんですが?」」」

「あはは! これをプレッシャーに感じるってんなら、あんたたちが無理のない範囲でできることをやればいいのさ! 期待されているからって無理して働いても、いいことなんて一つもないからね!」


 事実を知り最初こそプレッシャーを感じてた太一たちも、女将の言葉を聞いて少しだが肩の力が抜けたような気がする。

 女将の言葉には温かみがあり、そして重みがあり、何故だが納得してしまう説得力が備わっていた。


「うーん……それなら、いいのか?」

「まあ、確かに無理したところで成功できるとは思えないもんなぁ」

「僕もそう思う。それに、焦ったら失敗しそうだし」

「そうだろう? というわけで、今日はしっかり食べて、休んで、明日に備えることだね! Dランクになるまではここを拠点に活動しても問題ないから、安心しなね!」


 女将がそう口にすると、太一たちは顔を見合わせてから一つ頷き、視線を女将へ向けた。


「「「早く一人前になれるよう頑張ります! よろしくお願いします!」」」

「あはは! 元気があって何よりだよ! こちらこそよろしくね!」


 挨拶をしたあとで勇人と公太が先に二階へ上がり、太一は最後に女将へ声を掛けた。


「あの、女将さんの名前を聞いてもいいですか?」

「あたいはミアだよ! まあ、女将でもミアさんでも、好きに呼んでくれて構わないさ!」

「ありがとうございます、ミアさん!」


 そう口にして、太一も二階へ上がっていった。


「……スキルはごく普通。それでも礼儀正しい迷い人の新人冒険者か。さて、どう成長してくれるのか、楽しみだねぇ」


 ミアはクレアからの紹介状にもう一度目を通しながら、楽しそうに笑った。

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