表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
騎士団長殺しと呼ばれた男にしごかれています  作者: 片山絢森
第4章-3

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/63

48.仲間との再会


    ***



「無事なの、みんな!?」


 ステラがたどりついた時、辺りには血の匂いが充満していた。

 全員が魔獣と交戦している。救いは小型魔獣ばかりだった事だが、とにかく数が多すぎる。一匹を倒している間に、別の一匹に襲いかかられるといった具合に。


 すぐにオレッセオと騎士が数匹を切り伏せ、飛びかかってきた別の一匹を薙ぎ払った。


「ローズウッド、無事だったのか!?」

「ラグラス、すごい怪我……!」


 ほとんど言葉がかぶってしまい、互いに目を見張る。

 反射的に笑みが浮かんだのは一瞬、ステラは元気よく頷いた。


「無事だよ、ラグラス。ただいま!」

「……ああ、おかえり」


 ラグラスもわずかに唇を上げる。その向こうで、オレッセオが新たな魔獣を討伐し、「よくやった、お前たち!」と声を張り上げた。


「もう大丈夫だ、安心しろ。私が戻った!」

「団長!」

 わっと彼らが歓声を上げる。


「私が戻ったからには、誰ひとり死なせない。今から魔獣を退けつつ、森の外へ向かう。背後の魔獣は私に任せろ。全員正騎士の指示に従い、速やかに退避! 最低五人一組で行動しろ。数は多いが、すべて小型だ。何も問題ない。訓練を忘れるな!」


「はっ……はい!」

「臆するな、我々は王立騎士団だ!」

「おおおおおっ!」


 彼らが一斉に雄たけびを上げる。


(団長、すごい)


 あっという間に士気を立て直し、彼らの心を一瞬でつかんだ。

 傷を負っている人間も多いが、彼らの目には光がある。そうそう折れる事はない。

 ステラも剣を構え、ラグラスの隣に立った。


「さすがだな、うちの団長は」

 ラグラスがふっと吐息をこぼす。


「これならなんとか保ちそうだ。団長以外じゃこうはいかない」

「そうだね」


 団長たるもの、時にはハッタリも必要だ。

 それが分かっているからこそ、オレッセオも不安をあおる真似はしない。第二騎士団の青年も同様だ。

 本当は余裕などないはずなのに、何も問題ないという態度を見せる。それが彼らの士気を高めると分かっているからだ。


「任せろ」という言葉の重みを、二人ともよく知っているはずだ。その重圧はどれほどのものだろう。


 その覚悟があるからこそ、彼らは誰よりも力強く剣を振り、誰よりも多く魔獣を倒す。


 ――これが、本当の騎士。


 ステラが憧れた騎士の姿だ。


「何があったのか聞きたいが、ここを無事に抜けてからだな」

「そうだね。今は本当に余裕がないから」


 先ほどとは違い、ここにいるのは小型の魔獣だけだ。数は多いが、即死する強さではない。見習いである彼らがなんとか対処できているのもそのせいだ。


 だが、先ほどと同じ状況になったら。

 ――今度こそ、命はない。


(その前に、ここから逃げないと……)


 その時だった。

 遠くから、ふたたび魔獣の咆哮が聞こえてきたのは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ