48.仲間との再会
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「無事なの、みんな!?」
ステラがたどりついた時、辺りには血の匂いが充満していた。
全員が魔獣と交戦している。救いは小型魔獣ばかりだった事だが、とにかく数が多すぎる。一匹を倒している間に、別の一匹に襲いかかられるといった具合に。
すぐにオレッセオと騎士が数匹を切り伏せ、飛びかかってきた別の一匹を薙ぎ払った。
「ローズウッド、無事だったのか!?」
「ラグラス、すごい怪我……!」
ほとんど言葉がかぶってしまい、互いに目を見張る。
反射的に笑みが浮かんだのは一瞬、ステラは元気よく頷いた。
「無事だよ、ラグラス。ただいま!」
「……ああ、おかえり」
ラグラスもわずかに唇を上げる。その向こうで、オレッセオが新たな魔獣を討伐し、「よくやった、お前たち!」と声を張り上げた。
「もう大丈夫だ、安心しろ。私が戻った!」
「団長!」
わっと彼らが歓声を上げる。
「私が戻ったからには、誰ひとり死なせない。今から魔獣を退けつつ、森の外へ向かう。背後の魔獣は私に任せろ。全員正騎士の指示に従い、速やかに退避! 最低五人一組で行動しろ。数は多いが、すべて小型だ。何も問題ない。訓練を忘れるな!」
「はっ……はい!」
「臆するな、我々は王立騎士団だ!」
「おおおおおっ!」
彼らが一斉に雄たけびを上げる。
(団長、すごい)
あっという間に士気を立て直し、彼らの心を一瞬でつかんだ。
傷を負っている人間も多いが、彼らの目には光がある。そうそう折れる事はない。
ステラも剣を構え、ラグラスの隣に立った。
「さすがだな、うちの団長は」
ラグラスがふっと吐息をこぼす。
「これならなんとか保ちそうだ。団長以外じゃこうはいかない」
「そうだね」
団長たるもの、時にはハッタリも必要だ。
それが分かっているからこそ、オレッセオも不安をあおる真似はしない。第二騎士団の青年も同様だ。
本当は余裕などないはずなのに、何も問題ないという態度を見せる。それが彼らの士気を高めると分かっているからだ。
「任せろ」という言葉の重みを、二人ともよく知っているはずだ。その重圧はどれほどのものだろう。
その覚悟があるからこそ、彼らは誰よりも力強く剣を振り、誰よりも多く魔獣を倒す。
――これが、本当の騎士。
ステラが憧れた騎士の姿だ。
「何があったのか聞きたいが、ここを無事に抜けてからだな」
「そうだね。今は本当に余裕がないから」
先ほどとは違い、ここにいるのは小型の魔獣だけだ。数は多いが、即死する強さではない。見習いである彼らがなんとか対処できているのもそのせいだ。
だが、先ほどと同じ状況になったら。
――今度こそ、命はない。
(その前に、ここから逃げないと……)
その時だった。
遠くから、ふたたび魔獣の咆哮が聞こえてきたのは。




