みーちゃんのリスさん(裏)
冬童話2023で投稿した作品を、途中から改変したモノです。
ジャンルをどこに突っ込めば良いのか分からないので、その他へお邪魔しております。
「みー、あの大きなリスさんが ほしい!」
お下げが かわいい みーちゃんが、ぬいぐるみやさんで みーちゃんと おなじ 大きさの リスのぬいぐるみをギューと して、おとうさんに いいます。
「しかたがないな。 みーちゃんの たんじょうびが ちかいし、プレゼントにしよう。 てんいんさん、このぬいぐるみを ください」
「おかいあげ くださり ありがとうございます。 このぬいぐるみは 大きすぎて、ずっと うれのこっていたのですよ」
「やったあ!」
みーちゃんのおとうさんは、みーちゃんにメロメロです。
こうして 大きなリスのぬいぐるみは、みーちゃんの かぞくに なりました。
〜〜〜〜〜〜
「かわいい!」
「だいすき!」
「ギュー!」
もちかえった リスさんは みーちゃんの おへやで、みーちゃんに たくさん たくさん ギューっとされて、たいせつに されました。
いままで おみせで ギューと してくれるのは いちどだけ。 おみせにきた おきゃくさんが、ひとり いっかい していくだけ。
にかいめが なくて とても さびしかったのです。
でも、みーちゃんは たくさん してくれるのです。
それが とても とても 大きなリスのぬいぐるみには しあわせです。
でも、それをいやだと おもうぬいぐるみたちが いました。
《大きなリスが きてから、ぼくたちを みーちゃんが ギューと してくれなくなった! 大きなリスばかり ずるい!》
大きなリスの ぬいぐるみより まえから みーちゃんに たくさんギューと されていた ぬいぐるみたちです。
《なんで おまえばっかり!》
《ずるいずるい!》
《ぼくたちは おまえが きてから、あいてに されてない! みーちゃんに きらわれちゃった!》
ぬいぐるみたちが、大きなリスの ぬいぐるみに もんくを いいます。
《そんな……》
こまる大きなリスのぬいぐるみ。
だって、ギューとしてくれる みーちゃんが はなしていた から。
「ぬいぐるみさんは みんなだいすき!」
「みんなだいすき だから、ぬいぐるみの みんな おなじかず ギューって するの!」
「だから、いちばんギューが すくない 大きなリスさんに いっぱいギューするの!」
みーちゃんとの たくさんのギューは いまだけだって。
「はやく ぬいぐるみの みんなと ギューしたいなあ」
みーちゃんも、ぬいぐるみの みんなとギューしたいって きいてるから。
大きなリスも だれにも あいてにされない かなしさを しっています。
…………だから。
だからだからだから。
大きなリスのぬいぐるみは考えました。
考えに考えに考えに考えに考え抜いて、答えを見付けました。
その答えは……。
〜〜〜〜〜〜
《みんなでひとつになれば、みんな一緒にみーちゃんからギューってされるよね》
《は? 何言ってんだ?》
《まさか俺達を分解して、一つのぬいぐるみにしようってか!? 狂ってる!!》
《ウソだろっ!!?》
もちろん、大きなリスの見付けた答えは違います。
でも大きなリスは答えを口にしません。
直接見せた方が、早いと思ったから。
《は? なんだよ、それ!?》
《お前の体に、口は無いはずだろ!!?》
喚くぬいぐるみ達には反応を示さず、大きなリスの変化は続く。
大きく、首筋にまで大きく裂けた口から、玉虫色にヌルヌルと奇妙に輝く、冒涜的な触手が無数に生えて出てきている。
それは、ひと目見るだけでこの世の物ではないと直感できる程に名状しがたく蠢き、その光景は明らかに狂気的である。
その触手達の先端は、大きなリスを囲む一体一体のぬいぐるみを指し示し、静止しつつも蠕動している。
《みんなでひとつになれば、みんな一緒にみーちゃんからギューってされるよね》
再び発された大きなリスの言葉に、ぬいぐるみ達は恐れ慄く。
慄くと同時に、大きなリスが何をしようとしているのかを、正確に理解してしまったぬいぐるみ達。
《や……やめろよ。 俺達はぬいぐるみ仲間だろ?》
《オレ達を食べても、美味くねえぞ》
《待ってよ! 待ってよ! 待ってよ!》
抵抗しようにも、逃げようにも、ぬいぐるみはぬいぐるみ。
動けない存在だ。 喚く以外は、何もできない。
《大丈夫。 みんな、一緒になるだけだからね》
そんなぬいぐるみ達に、優しい声をかける大きなリス。
直後、ぬいぐるみ達全てに触手が迫る。
その触手からは絶対に逃げられないと、ぬいぐるみ達は全てを諦めた……。
〜〜〜〜〜〜
「あれ? リスちゃん以外の、わたしのぬいぐるみ達がいないよ? ママー、ぬいぐるみ達がいなくなったー!!」
みーちゃんが自分の部屋へ戻った途端に異変に気付き、騒ぎ出す。
《みんな一緒にみーちゃんからギューされて、幸せダヨネ。 ミンナいつマデモ イ ッ シ ョ ダ ヨ ?》
そのみーちゃんを見ながら、裂けたはずの口がキレイに戻っている大きなリスが、満足そうにしていた。
途中からいきなり現れる、クトゥルフ要素。
名状しがたく冒涜的な触手を見てしまったあなたに、ダイスロールする機会が訪れませんように。