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第3話 影魔法

「にゃー」

「わふ」


 ねだるような鳴き声と顔と腹部に圧迫感を感じる。

 目を開けてみると。

 そこにはテシテシ攻撃するテトとおなかの上でちょこんとお座りしているモコがいた。


 そうか、昨日異世界転移したのだった。

 あやうく、もう一眠りしてから、学校にいこうと考えていたよ。

 寝ぼけている頭を切り替えテトモコに視線を移す。


 モコが木でできたお皿を咥えている。

 おなかがすいたから俺を起こしたのかな。

 

 眠たい目をこすりながら、キッチンに向かう。

 朝ごはんは卵焼き、豚汁、パンだ。

 豚汁といったが、肉は正直わからん。

 マジックボックスに入っていた薄く切られた肉を入れただけだ。

 

 朝ごはんを二匹+一人で食べながら今後のことを考えていく。


 さて、まずは俺についていろいろ調べていかないと。

 

 おそらく年齢は7歳ぐらいだ。

 親戚の小学生の低学年の子がこのぐらいの背丈だったはず。

 そして驚くほどに体が軽い。

 いきなり大人から子供になった関係で、体重の軽い子供の体は軽く感じるのかもしれないが、不自然だ。

 実際に昨日、テトモコとじゃれあって走っているときに感じた違和感はこれだ。

 走るスピードが子供の比ではない。


 身体能力は後で検証することにして、あとは影魔法と風魔法か。


 魔法ってどうやればできるのだろう。

 昨日テトモコに見せてもらった影魔法はおそらくできるようになるのだろうが、やり方がわからない。

 

 小説ではどのようにしてたかな……

 んー。物語の序章とかはっきり覚えている人いる?


 俺の場合はNOだ。

 これでも有名どころ、ランキング上位は結構読んできたつもりだ。

 どんな能力で、どんな性格、ヒロイン、目標、わかることはあるけど、異世界召喚、転移物の序盤の記憶なんてないからな。

 

 嘆いていても何も始まらない。

 テトモコに聞いてみることにするか?

 話してくれる内容は詳しくはわからないが、なんとか俺に教えてほしい。

 それが無理なら、この世界の人を探すしかない。 

 死の森を抜けて街までいけたら……

 


 考えるのも疲れたな。

 テトモコも食べ終わったようなので行動に移そう。


「テトモコ。俺ってどうやったら魔法がつかえるのかな?」

 

 俺が尋ねると、大きいサイズのモコとその頭の上にねころんだテトがにゃんわんと会話を始めた。 

 テトが妹でモコが兄みたいだな。

 ちょっぴりわがままな妹をお兄ちゃんが優しい対応で無茶に応えている図に見える。

 なんてほほえましい光景だ。


 俺は衣服についたテトモコの毛を振り落とし、静かにその場で膝をつき目を閉じる。


「神様、できるならば私にカメラをください。即現像でき、魔力で使用可能、破壊不能の付与をしたカメラを。この世界ではオーバーテクノロジーなので困るというのなら、この結界内だけでしか使いません。写真はみられないように厳重に影収納に管理します。うちの子たちを永久保存版にして私の手元に置いておきたいのです。地球で死に、この異世界に転移してきた迷える子羊に神の御恵みをくださいませんでしょうか?」


 目を閉じて祈っていると、ひざにあたたかな重さを感じた。


「おー、神様、答えてくださりましたか?」


 目を開けると、そこにはにゃんにゃんと強めに鳴くテトが膝にテシテシ攻撃をしており、モコも反対の膝の上に前足を乗っけていた。


 どうやら自分の世界に入りすぎていて、テトモコの声が聞こえていなかったらしい。


 ごめんごめんと謝りながらテトモコを撫でる。

 その間にも神からの返信はないかと考えていると、テトモコに手を甘噛みされた。


「しかたないじゃないか。ふたりが可愛いすぎるのがいけないんだぞ」


 そうテトモコに伝えると、機嫌を直したのか、ぺろぺろとなめ、より体を寄せてきた。甘えん坊め。


 思う存分じゃれあい、満足した俺はテトモコに再度聞いてみた。

 

 するとモコが俺の両手に前足を乗せてきた。

 ん、お手?おかわりか?まだ教えてないと思うのだが。


 そんなのんきなことを考えているとモコの前足から俺の手へと異物が入ってくる感覚が襲った。

 その異物は血管をめぐるように、全身を循環しモコの前足に戻っていった。


「これが魔力ってこと?」

「わふ」


 モコがうなずいているので、正解だろう。

 俺が異物と感じたってことはおそらくモコの魔力が俺の中では異物判定されたということだ。

 モコの魔力は血管を循環でもするかのように体の隅々まで移動していた。

 神様が魔法のスキルを与えたってことはこの体に魔力がある可能性が高い。

 もちろん俺の魔力だ、異物感はないだろう。

 血管を循環するように、体の中にあるはずの魔力を動かそうとしてみる。

 

 うん。手ごたえがない。


 常時血管内に魔力はないのか?

 それなら血管に魔力を感じることができない。

 でも、確かにモコの魔力は血管を通っているような感覚があった。

 血液なら心臓から全身にいく循環だったはずだ。

 魔力も心臓から血管に流れていると想定して、心臓付近で魔力らしいものを探っていけば見つかるかもしれない。


 


 魔力を探して、体感では3時間ぐらいだろか。

 試行錯誤しながらやりつづけて、やっと自分の魔力を感じることができた。

 いやー、長かった。瞑想するかのような体制で3時間。難しすぎるだろう。

 体の中に流れる血液を心臓だけに注目し、血液があるかないかをさぐるようなものだぞ。


 ちなみにテトモコは俺のちかくで二匹重なり寝ている。

 モコベットはいいよな、テト。ねむくなる気持ちはわかるぞ。

 そのままテトモコは寝かせておく。

 

 自分の魔力を感じてからは簡単だった。

 結果的に血管内に循環している魔力は存在していた。

 存在しているが心臓にある魔力にくらべるとあきらかに少なく、単純に感じるのが難しいだけだった。

 全身に魔力を循環させ、だんだん流す量を増やし体になじませる。

 そして魔力循環させたまま足元から沈むようにイメージすることで影入りすることができた。

 影の中は、地下の真っ暗な何もない世界だと想像していたのだが、実際は違った。


 影の中には、影入りする前の世界を灰色に染めた世界がそこには広がっていた。

 テトモコを見てみると少し灰色に見える黒で、今さっきと変わらず仲良く寝ている。

 空は灰色で、太陽は白く輝いている。


「不思議な世界だな」


 影入りできたことを伝えるためにテトモコのもとへ行き撫でようとした。

 しかし触れることができなかった。

 触ろうとした手は空をきり、転びそうになった。


「影世界では表世界の生物に触れないのか?」


 便宜上、影入りしたあとの空間を影世界、入る前の空間を表世界とよぶことにした。

 声を出して状況を確認してみたが、テトモコが反応することはない。

 おそらく影世界からの声は表世界には聞こえていないのだろう。

 影世界で何ができるのか気になるので、調べることにする。


 ログハウスに行き、扉を開けようとしたが触れない。

 なにかの壁があるみたいに抵抗感がある。

 ポケットの中に入れてあった靴下はそのまま影世界の中でも触れるし、持ち運びもできている。


「今検証できることはこれぐらいか」


わかったことは、

・表世界の生物、物質に対して干渉することができない。建物に入れるかどうかは要検証。

・影世界に持ってきたものは影世界でも使える。バッグとかは要検証。

・影世界の中では常時魔力を消費している。おそらく3時間程度が限界な気がする。

 影世界で魔力切れになったらどうなるのかは気になるところだが、空間が違うところでそんなリスクの高い検証をして、異空間に飛ばされる、影世界から出ることができなくなる、なんてことがあったら笑うに笑えない。

 

 一通りの考察を終え、影入りできたことを報告するために、モコの大きな体でできた影から表世界に戻る。

 そして寝ているモコのもふもふお腹に顔をうずめる。


「わふっ」


 いきなり現れた俺に驚いたのか、抗議するかのようにモコは鳴いた。


「影入りできたぞー」


テトも起きたのか、二匹がおめでとうと手をなめてくれた。


 まず、第一段階クリアかな。

 テトモコがやっていた影纏いや影分身はおそらく魔力を外に放出してやるタイプの魔法だ。

 魔力を循環させるだけではなく、他にも気にしなければいけないことがあるはずだ。


「うん、明日やろう。」


 今日一日魔力を探し、循環させていたため、もう体力と精神力の限界だ。

 明日やろうはバカ野郎というが、無理なものは無理だ。

 今日はご飯食べて、風呂入って、テトモコと遊ぶのだ。


 本当に心地のいい素敵な言葉だ

『明日やろう』



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