団体交渉が終わり…2
久々です。少しずつまた投稿していきます。
組合にも闘いにも歴史あり。色々話を聞いてたヨハンナは、こういう人達が色々戦ってくれていたという事を初めて知った。そして、何も知らなかった自分が少し恥ずかしくなった。
「我が名はミギョン・チョ!」
組合の扉が開き、テオドールとミギョンが入ってきた。ミギョンは魔法使いのようなステッキを左手で持ち、それを高くかざした。右手は正面に向け、延ばされていた。
「悪しきモンスターは、この我が討伐したもう」
「したもう?」
マルセルは思わず小声で言った。ミギョンはこの時、魔法使いのような巨大な帽子と短いスカートの魔導士服、黒い眼帯を付けており、マルセルは初級クエストにでも行くのかなと一瞬考えてしまった。そして、その服が似合ってるのを見て、やはりこの人吸血鬼かなにかではないかと一人考えていた。
「まあ、ユーモアはこの辺にして、近くに寄ったからお菓子持ってきたよ~、流石にこの年になるとこんなにいらないし」
「チョさん、週明けの裁判の資料もお忘れなく」
ミギョンは眼帯を外し、丸メガネをかけながら、テオドールから資料を受け取った。
「そだったね~。しかし、労基がもっと機能すればこんなの労基の役割なのにね~」
「すみません、どんな裁判なのですか?」
ヨハンナはさっきの話もあり、活動の事をもっと知りたくなっていた。
「えとね、最近冒険者の派遣も増えて来たんだけど、冒険者のリーダーに杖や魔法で暴力を受けて来た人が派遣元にその件を訴えたら、突如契約解除されたんですよ~。何度も契約更新したにも関わらず。そこで、契約解除の取り消しと、派遣元とリーダーに対しての暴力の謝罪、慰謝料の請求をやってるんです。良かったら裁判傍聴も来てくださいよ~」
「裁判は週明けの十三時二十分、王都地裁の第三法廷です。膨張する場合は、十三時丁度位に裁判所前に来てください」
テオドールは付け加えた。ヨハンナは手帳に日時を書き込んだ。そして、
「無知ですみません、裁判傍聴に必要なものってありますか?」
と聞いた。
「特にないですが、荷物検査があるので、最小限にするのが良いです。武器とか、録音機とかは持ち込めずに預ける必要があるので、持ってこない方が良いです」
テオドールはそう答えると、裁判資料を持ち、
「チョさん、暴力の証言についてなのですが、都合がつく人がいないみたいなので…」
と打ち合わせを始めた。ヨハンナは裁判の打ち合わせを聞いても無意味と思い、ブレモンに紅茶を淹れた後、
「ブレモンさん、今は何をされてるのですか?」
と聞いた。オルタンスはふぅっとため息をつき、
「組合を抜け、アルル財閥に嫁ぎました。交流はもうないです」
と答えた。アルル財閥といえば、剣や槍等、冒険者の武器を作っている、売り上げシェアも一番の大きな財閥である。しかし、無茶な労働をさせて死者を何人も出していたり、経済団体を通じて一定収入の人から残業代をなくすという法を政治家に要求していたり、裏で奴隷商と繋がっていると報道されたこともある、働く側にとっては敵ともいえる存在である。ヨハンナは、オルタンスの顔を見て、これ以上深入りすべきではないと判断した。
結局、もやっとしたままヨハンナは薄暗い組合事務所の外に出た。休日だけの市場で、安売りされている果物をいくつか適当に買い、家に戻った。