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冒険者、労働組合に入る  作者: 古明地クロエ
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オルタンスの過去話 2

私生活が忙しく、また更新が不定期になります、すみません。

 実は、今私達が居るこの事務所、私が組合を立ち上げたころから使ってたのですが、その頃でさえ長く空室で、壁とか、天井とかが所々剥がれている位に朽ちていたんです。おかげで、ただ同然で入居できたんですけどね。紹介してくれた方のお礼だけで。空き時間に少しずつ改修して、綺麗とまではいかなくても使える状態にはしたんです。壁は本棚で誤魔化した場所もありますけどね、ふふ。

 で、準備した後、初めての団体交渉が始まったんです。私はあまり発言できなかったんですが、ブレモンさんが色々正面から抗議してくれて。

「契約満了と言いますが、実質的にあなた達がやってることは解雇です!しかし、貴方たちは正当な理由を書面で請求しても応じず、今も『契約満了だから』の一点張りじゃないですか」

「法的には問題ありません、ちゃんと契約書の通りだし」

「確かに契約書にはありますが、三年以上で、かつ繰り返し契約更新した実績の場合は、今年の労働省の省令にあるように、無期雇用のように扱うべきとあります!つまり、やむを得ない事情でなければ解雇できない!だけど、説明がありません」

「だから、契約満了です。それに、あなた達女は、生理や出産で働けない時がある!」

「それは性差別じゃないですか!」

 私はやっと声を出せました。事前の予習はしてきても、この頃はまだ活かせなかったんです。ブレモンさんはそういう意味でも凄かったなと、今も思います。

 とはいえ、これを勝ち取るのは大変でした。勉強したとはいえ、素人同然でしたからね。ヤン・ギウさん、ヤマダ・ナオトさんという弁護士さんを紹介してもらって、相談してもらいました。良心的な弁護士さんで、報酬は争議に勝った場合に一割で良いと言ってくれたんです。


「そうなんですね」

 ヨハンナは話を聞きながら、その時の弁護士がミギョンでないことにこっそり安堵していた。吸血鬼でもなければ、そこまで昔からやってるわけないだろうし。そして、気が付けば作業は全て終わっていた。テオドールが差し出す封書の山を台車に載せ、郵便局へ持って行った。

「さて、紅茶を淹れたので、今日来た方は飲んでいって下さい。お茶菓子もありますよ」

 マルセルはそう言い、ソファー近くのテーブルに紅茶ポットを置いた。各自、不揃いのティーカップを選び、紅茶を注いだ。


 マルセルはオルタンスの隣に座り、引き続き話をお願いした。


 労働委員会での斡旋もしたのですが、交渉は決裂しました。そこで、裁判をしようという話になったのです。失業保険があるとはいえ生活は苦しいので、最初は躊躇しましたが、色々相談していくうちに、応援してくれる人が増えてきまして、その人達の期待に応えたいとも思ったのです。裁判は団体交渉よりも大変でしたが、弁護士さんや、ベテランの労働組合の人達が協力してくれたおかげで、一年弱程かかり勝訴しました。もしかしたらご存じかもしれませんが、新聞も取り上げてくれました。

 この裁判が始まった頃、ノウハウを生かそうと、それ以上に自分達のように困ってる人の力になりたいと考えて、労働相談も始めました。案の定私達の争議は氷山の一角で、雇われ冒険者の人で困ってる人は少なくありませんでした。不当解雇、報酬未払い、いじめ、労災隠し、無茶な労働時間等、自分達よりも大変な目に合ってる人が本当に多かったです。そして、組合員も、この相談によって、三十名くらいになりましたし、団体交渉も何度か行いました。敵は増えるし、大変な割に決して儲かるものではないのですが、段々と社会的責任感みたいなものが生まれてきた事、解決したときの当事者の喜びが自分の事のように思える事で、ずっと続けてきました。そして、今はグールさんやオリヴィエ君がその戦いを引き継いでくれています。

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