天使のユメちゃんと地球の子花ちゃんのお話
お空を見ていると楽しい、良いことあるよ。空からユメちゃんが遊びに来てくれてお空のことを話してくれる。
ある日の雨上がり、太陽と雲の隙間から眩いばかりの光の筋が何本も地上に向かって伸びてきた。
その光のシャワーの中に長~いはしごが見える。天使のはしご!
そこを誰かが後ろ向きにスイスイっと下りてくる。なんと軽やかなこと。背中に白くて可愛い羽もついているではないか。
まあるい頭にまあるい体、あとちょっとというところでふわっと飛びあがり周りをふわりふわりと飛び回っていたかと思うと、ポンッと地上に降り立った。
丸いお顔にまん丸お目々とぷっくらほっぺにクルクルカールの髪、天使ちゃんね。
もう一度クルリっと回転したら、あらっ普通の可愛い女の子になっちゃった。
ピンクのお洋服に赤い髪飾り、リボンのついた赤い靴を履いている。
天使のユメちゃんの出来上がり。
その一部始終を見ていた地球の女の子の花ちゃんは、お目々ぱちくりお口あんぐり。
それに気がついたユメちゃん、可愛いお目々でいたずらっぽくウインクする。
「フフッ私天使のユメちゃんよ。お空で遊んでいたらステキなもの見つけちゃった。
羽があるからいくらでも飛べるけど、せっかくはしごを見つけたから伝って下りてみたけど、光のシャワーを浴びながら降りてくるのって、とっても気持ちいいわよ。ワクワクしてとっても楽しかった。
私ね、今地球の女の子になれたからこれから誰かとお友達になりたいの、お友達になってくれないかな」
「あっはい面白そう、お友達になろうね」
「ありがとう、地球のことはよく分からないから教えてね」
「はい私は井上花、小学校三年生よ、中学一年生のお姉ちゃんがいる。お父さんもお母さんも会社に勤めているの。よろしくね。その前にちょっと聞きたいけど、ユメちゃんはどうしてここに来たの?」
「そうね、あちらの世界ではお行儀が良くて真面目だったら、他の星へ行くことが許されるの。どこに行こうかなと考えていた時に地球に繋がっているはしごを見つけて、ここだって思ったのね」
「あちらの世界って?」
「お空かな? 宇宙かな? 神さまの世界かな? とっても良いところ、楽しいことしかないし何でもできるし悪い人もいないからね。それでちょっと退屈だな~なんて贅沢な悩みよね。それで少し刺激がありそうな地球に来てみたかったの」
「ふぅ~ん、花はまだ子供だからよく分からないけど、お父さんもお母さんも毎日大変だ大変だとか、あれどうしようこれはどうしたものかと愚痴を言っているし、時々けんかもしている、地球はやっぱり大変なのかな?」
「そうなの? 地球では喧嘩もするのね。楽しそう」
「楽しくないよ。お父さんもお母さんもけんかすると機嫌悪くなるし、ちょっとのことで花やお姉ちゃんを怒るのよ、八つ当たりでしょ。嫌な気持ちになるの」
「そういうことか」
「ユメちゃんのお父さんとお母さんはどうなの?
「そうね、あちらはお父さんもお母さんもないの、みんな自由に好きなように暮らしているしお金もないからね、必要ないの。
何でも自由に食べられるし何でも自由に使っていいし、お花畑や湖や森もあってとっても空気がキレイだよ。全部が光り輝いているの。それに食べることは重要ではないからお腹もあまり空かないし」
「そうか、花はね楽しいこともいっぱいあるけど、時々どうして勉強なんかしないといけないのかなっていやになることがあるの。
大きくなっていい大学に入っていい会社に入って、それからいい結婚相手を見つけるためになんて大人は言うけど、それのどこが面白いんだよって心の中で思う」
「そうだよね、やりたくないものをやらされるのはたまったものじゃないね。こんな勉強をしたいって思うまで待ってくれるといいけど、大人はせっかちだからね。
それにどこどこの〇〇ちゃんはこんなにできるとか、テストでいい点とったとか他所の子と比べるでしょ、めんどくさって思うよね」
「あらっ、ユメちゃん地球のことをよく知っているじゃない、詳しいね」
「そうね、あちこちで地球のおばちゃんたちが話しているのをつい聞いちゃうのね。」
「ユメちゃん笑える、地球には時々来るの?」
「あらっばれちゃった、今回が初めてじゃないのよ。つい刺激があって面白くてね。でもね花ちゃん、花ちゃんがやる気が出るまで待っていると困ることもできるかもよ。
大きくなって字が読めなかったら困るでしょ、字が書けなくても困るでしょ。ちょっとは計算できないと困るよね。
本を読むのにも困るでしょ、テレビ観ても分からないこともあるかもしれないしね。自分が困ることはなるべく早く解決しておいた方がいいんじゃない」
「そうだね、何か楽しいことをするために必要だって思えば頑張れるのかな」
「そうそうどうしてもいやなら、無理してやらなくていいよ。いつかやる気スイッチが入るときが来ると思うよ」
「ありがとう、ユメちゃんとお話しているとなんだか大丈夫な気がしてきた」
「せっかく地球に来たからもっといろんなところへ行ってみたいな、花ちゃん行こうよ」「そうね、私も散歩したい」
二人でちょっと街中を離れて公園の辺りを歩く。ポツポツと歩きながら時々顔を見合わせてはウフフと笑う、こんななんてことない時間がなんだかほっこりするのよね、って花ちゃんは思う。
花ちゃん、今日はおさげ髪に黄色いリボンをつけている、黄色いTシャツに紺のジャンバースカート。
「花ちゃん、黄色が好きなの?」
「そう、よく女の子らしくないって言われるけど、私この色が好きだからいいの」
「よく似合っているよ。光の色だからね、これからも輝いていけるからいいんじゃない」
「ありがとう、うれしい」
公園に入っていく。あらっブランコに誰かいる。花ちゃんの同級生の美鈴ちゃんだ。
美鈴ちゃんはスッキリしたショートカットに白いブラウスと紺色のスカートをはいている。性格と同じでちょっと地味な服装だ。
「美鈴ちゃんこんにちは、一人でどうしたの」
「あらっ、花ちゃんお友達と一緒? 見かけない人ね」
「うん、ちょっとしたお知り合い、ユメちゃんって言うの。花もお友達少ないけど、美鈴ちゃんもあまりお友達がいないのよね」
「そうなの、でも私全然淋しくないからね、一人の方が気楽だからいいのよ」
ユメちゃんは、花ちゃんのお友達にも興味津々だ。
「そうなんだ 二人ともお友達少ないのか。でも少ないってことはいないってことじゃないよね。だったら、その少ないお友達を大事にすればいいんじゃない」
花ちゃん慌ててユメちゃんに言う。
「あっいや、少ないけど滅多に一緒にいないから、少ない友達って言えるかどうか、美鈴ちゃんは?」
美鈴ちゃんもちょっと考えていたけど、ふっと顔をあげて話し出す。
「うん私も、友達って言えるかどうか。いないって言った方が当たっているかも」
ユメちゃんは、地球ってなかなか素直に友達になれないのかなって思う。
「どうして友達いないの?」
「花は、いろいろと気を遣うのが面倒だし、ぐいぐい来る人も苦手だし、余計なこと言って仲間外れにされたこともあって、つい一人でいる方が楽ちんだなと思っているの」
「私もそうなの、いじめの対象にされたくないって思うの、でもこうやって一人でいると、なぜか構いたくなる人もいるみたいで、なるべく空気のように自分を消したいって思う。
今日花ちゃんとこうやってお話できること、とっても嬉しい、なぜか素直にお話できるけど、ユメちゃんが居るおかげかな?」
「きっとそうね、花もそうだよ、ユメちゃんとお話していると素直になれるの」
「というか、ユメちゃんは花ちゃんのお友達でしょ?」
「そうさっきお友達になったばかり、ユメちゃんはお空から来た天使ちゃんなのよ」
「へぇ~そうなの」
ユメちゃんはポンッと手を叩いた。
「分かった、花ちゃんと美鈴ちゃんは今日から仲のいいお友達ってことでいいかな?」
二人で顔を見合わせて「そうだね」と頷く。
「ところで、ユメちゃんに聞きたいことがあるけどいい?」
「なあに花ちゃん」
「ユメちゃんはあちらの世界から来たって言ったけど、あちらの世界って死んだ人が行くところ?」
「そうね、人間が亡くなったらお空に行くって言うでしょ。あちらの世界、つまりお空に戻っていくのね。魂って聞いたことある?」「あるよ、でもどんなものだかはよく分からない」
「そうだろうね、今詳しくはわからなくていいけど人間の元になるものかな、魂はずっと変わらず何度でも繰り返し人間になる、難しい言葉で言えば輪廻転生ね」
「りんねてんしょう?」
「あら、二人の声が揃ったフフフ、その言葉だけでも聞いたことがあるなと思っていたらいいよ。大切なものだから自分の命は大事にしましょうねということ」
「はい、なんとなく分かったけど、ユメちゃんたちがいるところはどんなところ?」
「そうね、さっきも言ったけど楽しくて苦労なんて何もなくて、何でもできて当たり前のユートピアよ。でも退屈なの。なんかチャレンジしたくなるのね。できないことってどんな感じだろうなんて思っちゃうのね。それで地球に興味が沸くのかな」
「ふーん分かったような分からないような」
ユメちゃんとちょっと難しいお話をして、謎も増えた気がしないでもないけど、人の命の大切さ不思議さがちょっと分かった、少し大人になれたかな。
これからは美鈴ちゃんと仲良くして遠慮なくいろんなお話ができたらいいなと思う。
それからは美鈴ちゃんと花は一緒に下校するようになった。
「今日は男子が騒ぐので先生だいぶイラついていたよね」とか「由佳ちゃんと秋山君仲がいいよね付き合っているのかな」とかだいたい勉強と関係ない話で盛り上がる。
「ユメちゃん、もう一人クラスの男の子のことを聞きたいのだけどいい?」
「いいよ、どうしたの?」
「卓也君って言うのだけど、お母さんがいないの。きっとお父さんと離婚したのだと思う。チラッと聞いたけど、あまりお話したことが無いので詳しいことは分からない。
卓也君ね、言っちゃあ悪いけどいつもちょっと汚れた服を着ている。それで他の男の子たちがはやし立てるの。
臭いとか汚れているとか、近づくとうつるとか聞くのが嫌だけど、花ね(そんなこと言わないで)って言えないの。自分でも情けないけど自分が虐められたらって思うと、怖くて見て見ないふりをしている。ダメだよね。
中でもとっても意地悪な子がいて(お前の母ちゃんどこ行ったんだよ~)なんて言うのよ。ユメちゃん、どうすればいいのかな」
「花ちゃん、他人事ながら辛いよね。それぞれのお家の事情があるから、男の子たちそんなことを言っちゃあいけないよね。
人の痛みを知れってこと。花ちゃんが何も言えないこと無理もない。
卓也君にこっそりでもいいから(頑張ってね)って言ってみる? きっと励みになると思うよ。お父さんの苦労がちゃんと分かっているから、きっと卓也君は何を言われても辛抱しているのだね。助け合えて労わりあえる時代にならないといけないね」
「そうだね、応援しているよ、って分かってもらえるように声をかけてみる」
「それにしても昔のガキ大将は強いものには向かって行くけど、弱いものには優しかった気がする、助けてくれるし優しい言葉をかけてくれるしね。
それにその日限りのけんかで翌日に持ち越すようなこともなかった、前の日にあれだけひどい取っ組み合いのけんかをしていたのにあくる日にはケロッとして(おはよう)って言っていたものよ」
「へっ? ユメちゃん、どうして地球のそんな昔のこと知っているの?
「ほら前にも言ったでしょ。経験値がけっこう高いってねフフ」
美鈴ちゃんとはあれからずっと仲のいい友達だ。美鈴ちゃんには幼稚園年長の弟がいる。弟の祐一君はとっても優しい子らしい。
ハムスターを飼っていてハムスターのお部屋の掃除をしたり食べ物や飲み物をあげたり、とってもよく面倒をみているのだけど、命あるもの寿命はくる。まあ、その落ち込み方が半端ない。
何匹か飼っているけどそれぞれに名前を付けて呼びかけている。「プリン」「ココア」「ヨーグル」「ミルク」「ジャム」なんか美味しそうな名前ばかりね。
花はハムスター見たことあるけど全部同じように見える。でも祐一君は一匹ずつ特徴を分かっていて見分けられるんだって、さすが。
何せ口いっぱいに餌を詰め込んでうろうろしている姿は笑えるし、慣れてきて呼べばつぶらな瞳でちょこっと見てくれるし、ほんと癒されるよね。
朝起きればすぐにケージの前に行き「おはよう、よく眠れた?」なんて話しかける祐一くん。ハムスターって夜行性だよね、夜寝てないでしょ。回し車カラカラやってうるさいのじゃないの。まあ祐一君そんなことは分かっているだろうけど、とにかく可愛いのよね。
そりゃあそうだもう家族だね、そのハムスター君が死んじゃったら悲しいね。
そんな心優しい弟の祐一君になんて言葉をかけてあげればいいのかなって、美鈴ちゃん悩んでいる。
「花ちゃん、美鈴ちゃんとずっと仲良くできていてよかったね。
祐一君はほんとに心優しい子だね。こうやって命の大切さを学ぶって素晴らしいことだし、それと同時に生きるものすべてに寿命があるということも学んでいるのだからね。
変に慰めないでも見守ってあげることでいいのじゃない。よく面倒見ているねハムスター君も喜んでいるよ、くらい言ってあげるだけでいいと思うよ」
「そうだね、美鈴ちゃんに言っておくよ」
あらっもうこんな時間、早く帰らなくっちゃ。今日はお父さんもう帰っている! お母さんも!
「えっお姉ちゃんその顔どうしたの?」
お姉ちゃんの優花、キレイでスタイルもよくてお勉強もできて、花の自慢のお姉ちゃんだよ、こんなできるお姉ちゃんだけどお父さんもお母さんも二人を差別しないよ。
お母さんなんか「花、可愛いね味のある顔してる」と言ってギューっとしてくれる。
これって褒められているのかどうかちとわかんないけど、ギューッが温かいし嬉しいからいいのだ。
お姉ちゃんは花をちょっとバカにするときもあるけど一緒に遊んでくれたり、勉強も見てくれるから、花は大好きだよ。
そのお姉ちゃんが今大変なことになっている?目の周り紫っぽくなってパンダさんみたいになっているし、手にもちょっと擦り傷あるし服も少し破れている。
「えっ?お姉ちゃんどうしたの、誰にやられたの?いじめられたの?ヤバいよ」
「花、そんな言い方をしないの」
お姉ちゃんは思ったことはサラッという性格なのね、花は全然気にならないし、間違ったことは言わないから、でもそれが気に障った人がいるのかな。
お父さんとお母さんが優しく「どうしたの?」って聞くけどお姉ちゃんはずっと下を向いて黙ったまま下唇を噛んでいる。
もし打ち明けてお父さんが学校に乗り込んでいったら余計厄介だし、また仕返しされるかもと思ったかどうか分からない、お姉ちゃんの気持ちを想像するしかないけど、ただ花はお姉ちゃんのことが心配なの。こんな時、花は何もできないどうしたらいいの。
そうだユメちゃんに聞いてみよう。ユメちゃんはいつも良いことを言ってくれる。
「ユメちゃん、どこにいるの?会いたい」
「花ちゃん近くにいるよ、お外に出てみて」
「ちょっと外の空気を吸ってくるね」
「花、遠くに行くんじゃないよ」
「あっユメちゃんありがとう、お姉ちゃんがケガして帰ったの、心配でたまらない。一緒に話を聞いてくれる?」
「分かったよ、中に入れさせてもらうね」
「今ねお外でお友達に会ったの、いいかな」
「ごめんなさい、今取り込んでいるから又にしてもらえる?」
「お母さんあのね、天使のユメちゃん、いや天使のようなユメちゃんよ。今まで言ってなかったけど、花はねユメちゃんとお話して良いこと言ってもらっていっぱい幸せになったの。お姉ちゃんもきっと幸せになれるよ」
「花ちゃんのお姉ちゃん、お父さんお母さん、こんばんは、宇宙から来た天使のユメです。花ちゃんとお友達になってもらいました。お友達のお姉ちゃんが悲しんでいるとユメまで悲しい、みんなで笑顔になれるといいな」
ユメちゃん、丁寧にごあいさつする。
お姉ちゃんもお父さんもお母さんも、お口あんぐりポカーン、宇宙から来た? 天使?
これ何なんだろうって顔をしている。
お姉ちゃんはこれまでお父さんとお母さんにはあれだけ頑なだったのに、ユメちゃんを見てふっと顔が緩んで少し気持ちがほぐれたみたい。花は見逃さない。
そうなの、ユメちゃんは一瞬にして人の心を和ませる力があるようだ。
「花ちゃんのお姉ちゃん、お名前はなんて言うのかな」
「お姉ちゃんは優花です」
「優花ちゃん、もしちょっとでもお話しようかなって思ったらよろしくね。私は天使だからそれなりに経験値は高いと思うの。なんてことを言うと花ちゃんにまた難しいことを言うって怒られそうだけどね」
「そうだよユメちゃん、花にも分かるようにお話してね」
お姉ちゃんなんだかほっとしたよう、ちょっと笑顔も出てきてポツリポツリと話し出す。
「ずっとお友達だと思っていたグループがあって、学校帰りいつものように一緒に歩いていたの、するとそこにグループの中の幸恵ちゃんが前から好きだって言っていた、違う組の翔太君と出会ったの。
実は優花も翔太君が好きだけど、告白したわけじゃなくて片思いだったのよね。幸恵ちゃんが好きだって分かってから特に告白なんかできないじゃない。
そうしたら翔太君、何を思ったのかみんなの前で「優花さん付き合ってください」って言ったのね。翔太君意を決したように言うから周りが見えてなかったのかもしれない。
みんなびっくり。一番びっくりしたのは優花よ。ほんとは嬉しいはずなのにこれは大変だって思って、みんなの顔を見たら、あっけにとられているし、幸恵ちゃんなんか怒りでぶるぶる震えている感じなの」
「そうなんだ、優花ちゃんよく話してくれたね。誰も悪くないよね」
そのころにはお父さんもお母さんもちょっと離れて子供たちの会話には入らないようにしている。ユメちゃんにお任せした方がいいのかなと思えてきたようだ。
優花ちゃん大変だと思ったものの、ちょっとは嬉しいっていう気持ちが顔に出たのかな。幸恵ちゃん敏感に感じ取って突然暴れだして、振り回したカバンが優花の顔に当たってしまった。そのはずみで転んじゃって怪我もしたし、服もちょっと破れた。
周りの人たちは中立とはいかなくて「幸恵ちゃん可哀そう」ってなったのよね。
優花ちゃん「やっぱり普段から私が思ったことをポンッと言うので少し嫌われていたのかな」なんて落ち込んだのだ。
翔太君はびっくりして「ごめんなさい」と平謝り、せっかく思い切って言ったのに最悪な結果になって翔太君も落ち込んでいる。
「ふーん、地球って面白いね。みんなあれこれ考えすぎて、話がややこしくなっている。お互いに気を遣いすぎて人を傷つけることもあるんだ。でもこれは仕方のないことって割り切ってしまいなさい。優花ちゃんが謝るものでもないしね。これからどうなるか分からないけどなるようにしかならないよ、流れにまかせたらいい」
当分ぎくしゃくしていたけど徐々にお話もするようになった。元通りになるかどうかはまだ分からないけど。
「離れる友達とは離れるし、繋がる人とは繋がっていられる、これ自然の摂理。花ちゃん、また難しいこと言ってゴメン」
優花ちゃんは自分の反省点もちゃんと自覚したし、お父さんお母さんは何かの時には子供たちとちゃんと向き合ってくれるって分かったから、とってもよかった。
優花ちゃん、それからちょっと人間関係って難しいなって、考えるようになった。
それで妹のお友達のユメちゃんのことを思い出した。あの子可愛い子供だけど中身は凄い大人な考えというか、心に響く言葉を言ってくれる。普通の子供じゃないよね、そうかあの子は宇宙から来た天使だった。
「ユメちゃん……」
優花ちゃんはそっと呼んでみた。
「あらっ珍しい、花ちゃんのお姉ちゃん」
「あっびっくりした、お返事してくれたの、嬉しい、ユメちゃんの声を聞きたくて。お話ししたいの、いいかな聞いてくれる?」
「もちろんですよ、優花ちゃん」
「あれからいろいろ考えることがあって、人間ってややこしいなって思うことがあるの。
お友達とは楽しくやっているけど、気を遣いながらうまくやっている人と、何の気負いもなく自然にお話できて心地よい人と、緊張感を持ってお付き合いしている人といろいろいるなって思って」
「あらあら、優花ちゃんも随分と大人になったのね。そんな深い思いを持っているなんて素晴らしい。そう人って本質というものがあってね、言う方も受け取る方も様々なのよ。同じ言葉を言われたとしても、Åさんは凄く傷ついてしまうけど、Bさんは全然気にしなくて、そんな事いちいち気にしていたら生きていけないよって言うような人とかね。
言う方も何も考えずに思ったことをポンッと口に出す人と、考えに考えて必要なことだけを言う人と、結局言えなかったという人がいるよね。
要するに石橋を叩いて渡る人と、石橋を叩いて結局渡らなかった人と石橋を割った人とか、石橋を叩きもしないで渡る人とかね。それだけ様々な性格の人がいるというわけね」
ユメちゃんって、ほんと地球のことをよく分かっているんだ。
「はぁ~なるほどね、優花は思ったことはポンッと言うタイプだから知らないうちに誰かを傷つけていたかもしれない」
「そうね、決して優花ちゃんは間違ったことは言ってないと思うけど、正しければ何を言ってもいいということにはならないよね。それに言い方もあるかも、目をキッとしてきつい言い方だと反発される可能性もあるけど、優しい口調で(これってどうなんでしょう)
って笑顔で言えば(そうですね)となるかもしれないしね。
自分が心地いい人とお友達でいるってことが大事よ、お友達はたくさんいなくていい、少なくても気が合う人と仲良くしていればいいってことね。気を遣いながらお友達でいても楽しくないよね。
それに仲のいいお友達っていてもいいけど、いなければいないでどうってことない。焦って作ろうとしなくていい。
普通にお話できる人がいればそれでいい。
でも殻に閉じこもったり、近寄るなオーラを出さないことね。それには「いつでもどうぞ~」という気持ちでいたらいいよ。
友達は頑張って作るものじゃない。自然にできるものなのよ。
まあね、普通って簡単に言うけど、普通ってなあに? 普通って難しいね。でも普通が一番幸せなのかもって思うこともある。
大人になってお仕事をするようになればまたそれなりの付き合い方もあると思うけど、今のところは楽ちんでいればいいよ」
「ありがとう、ユメちゃんは花のお友達だけど、優花ともお友達になってほしい」
「いいよ」
それからユメちゃんは花ちゃんのお家、井上家に自由に出入りしている。でもユメちゃんがいてもいなくても誰も気にしない。
ユメちゃんは誰かが話しかければお話するし笑顔で答えるけど、自分から話しかけることはほとんどない、ただ地球を楽しんでいる。
「ユメちゃん、もっともっとお話したいな」
「優花ちゃんいいよ、ユメ暇だからね」
「今ね密かにお小遣いもっと欲しいななんて思っている。でもお父さんやお母さんに無理言っちゃあいけないなという気持ちがあって何も言わないけどね。そこでふっと思ったの、お金より大事なものってあるのかなって」
「そうよね、あちらの世界ではお金ってものは無いの。品物でも食べ物でも何でも誰でも自由に使っていいの。これは誰のものって決まりがない。独り占めしちゃいけない、誰もこれは私のものっていう人はいないからね。
みんなで分け合える、そうすると争いごともないということになるのね。
でも地球はそういうわけにはいかないね。大金持ちもいれば、貧乏な人もいる。ものすごいケチな人もいる。これは地球の仕組みだからいいとか悪いとかは言えないと思うよ。
決してお金は汚いものでも恥ずかしいものでもないし大事だよ、でもお金のために人の心を傷つけるようなことがあってはいけないよ、温かい心や思いやりや助け合いの気持ちを大切にするということが大前提ね。
それにお金に振り回されなければ何が大事かと順番をつけなくてもいいと思うよ」
「ユメちゃん、お勉強になるありがとう」
「よかった、喜んでくれて嬉しい」
あちらの世界はみんな平等、ちょっとやんちゃな子はいるけどほとんどが同じようなもの、普通ばっかり。
それに比べて地球は凄いよね、とってもいい人、善人のかたまりっていう人、とっても親切な人、優しい人、魅力的な人もたくさんいるけど、ちょっとウソつきの人や大ウソつきの人、口がうまくて人をだます人、裏であやつる人、暴力的な人、暴力をふるう人。いろいろ挙げたらきりがない。
それにニコニコしていて良い人に見える人でも心の中ではイライラしたりむかついたりしながら、それを一生懸命押さえているかもしれないしね。
この人とっつきにくいし何か機嫌悪そう、嫌な感じの人だなと思ってもお話したら意外と優しくていい人だったなんてこともある。
ただ笑顔が苦手な人だったとかね。人って見かけによらないことが多い。
だから、地球は面白いのよ。
みんな地球を楽しみなさい。
自分の中の良いところも悪いところも、
「人間だから当たり前」と思いましょう。
「あらぁ~ お空のユメちゃんが見える!
ユメちゃんったら、龍さんの背中に乗って走っている、龍さんに鞭当てている。今度はユニコーンさん、ユニコーンさんは飛べないよね、亀より遅い歩き方、ユメちゃん無理やり走らせている。ユメちゃんお行儀良かったのじゃないの? でもみんなめちゃくちゃ楽しそう、これでいいのか。
ユメちゃんまた遊びに来てね、花待ってるよ」
天使のユメちゃんは地球の子たちとお友達になって、いっぱいお話してくれた。お悩みにもいっぱい答えてくれてとっても元気になれたよ。