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クリスマス。
どこも華やかできらびやかで、人の笑顔も輝きで満ちている。
大人も子供も。
そんな中私はケーキ屋でアルバイトして、余ったクリスマスケーキは買い取らされ、過去最長の残業してもプラマイ0。今日汗水垂らして残業もして働いたお金は一日で売れ残りのクリスマスケーキになりました。
空野愛奏。フリーター。
大卒で入社した、表向き誰もが知る会社はとてつもないブラックだったため、挫折。次の就職先を探すも、なんでこんないいとこやめちゃったの、とブラック企業だということを伝えても全く信じてくれなくて、フリーターとしてバイトを掛け持ちしてただただ働いて必死に生きている。
「今日の夜食はケーキかぁ。なまものだし。」
きらびやかに飾られた大通りや住宅街を抜け、質素なアパートについた。遂に電灯変えたんだ。にしてもすごく明るいね。などと心の中で独り言をブツブツ唱えながらアパートの階段を登ろうとすると、
「空野愛奏さんですね?お待ちしておりました」
「誰??!!」
彼女は階段の一番上にいた。
純白のワンピースで、すごく神々しい。
クリスマスのきらびやかさなんて霞むほどの神々しさ。
顔もしたからみても美人。スタイルだってモデルさんかよって思うほどきれい。
「わたくし、クランと申します。貴女をスカウトしに来ました」
「…へ?」
「業務内容は、はじめの方はカルテの管理を任せようかと考えています。朝10時から18時までで社宅付き。給料はゴニョゴニョ…」
(今より待遇よすぎ??!でもカルテ??)
「カルテということは医療関係者…ですか?大学は一応出てますけど医学部なんて全く知識は…」
「いえ、この仕事に知識は入りません。もちろん資格も。貴女の枯れた生活を潤すと確約します。ぜひ来てくれませんか?」
「ちなみに、そのご職業の名称は…?」
「天使です」
「…」
「私たちの住む天界には限られた者しか入界を許されないのです。しかし、この地球という惑星は生き物が多く、人間だけでも私たちの管理がままならないのです。そこで天界では恵まれない運命を辿ってしまった人をスカウトすることにしたのです。」
「それってまさか…私死ぬの??いや、でもなんか、いい気がしてきた…いやでも…」
「死ぬことはありません。今の記憶や意識のまま天使になってもらいます。そうなると家族や友達には会えなくなります。」
「私は家族に縁切られてるし、友達だっていないよ。バイト先の人たちだってただの道具としか思ってないし。」
「知っています。愛奏さんは私のカルテの1つにいましたから、全部知ってます。だからこそ、私は貴女に幸せになってほしい。なので、せめて一ヶ月。天使の体験してみませんか??」