1日目
私たちは、旅行に来ている。場所は川と湖の隣接する大きなコテージに1週間ほど滞在する予定だ。モチベーションは上々、キャンピングカーにはもとより戻る気はない。今回の旅行は、外界の情報を断ち、其々の協力によって成功させることを一番の念頭に置いている。必要ならば食料調達もやぶさかではない。
「木竹!いつまでそこにいるんだ、早く入って来いよ!今から場所取りだ!」
「ああ、今行く。」
高ぶる感情を抑えるように素っ気ない返事をかましてコテージに入った。
「悪い、遅くなった。まずは、自己紹介からだ。美濃と芹北見は初対面だろ」
「おう!じゃあ、俺から美濃だ!よろしく高校は木竹と同じ、今は建設業に携わってる重労働は任せてくれ!」
「うん!私は芹北見!せりってよんでね」
初対面のわりに2人とも上手く話せている。1つ不安が解消された。明日から樹海の散策もあるため、全体の協力体制は盤石でなくては危険が伴う。ここからは、新しいことの連続だろう。みんなこの環境に上手く適応できるだろうか、もちろん私もその例外ではない。
「おい、そろそろ昼だ、釣りにでも行くか」
「だな、みんな!2手に分かれて食事の準備をはじめるぞ!」
「木竹、いつになくテンションが高いじゃねーか!岬芝、お前もエンジンかけねーと遅れっと!」
「馬鹿言え、そんな調子で最後まで持つのか?今回の旅行は長いんだ。すぐに追いつくよお前らこそ後半ガス欠ってのは勘弁してくれよ!」
一理ある。初日の勢いがあるのはいいが、後半の行事に覇気がなければ最高の旅行ではない。私は今回の旅行を全員に楽しんでもらいたいと思っている。その為には、自らが楽しむだけでは足りない。ただ旅行はもう始まっている。その先を言う必要は、、、
初日にして大漁だ。ここまで釣れるとは思っていなかった。
「そろそろ帰るか。」
「こんなに釣りが上手くいくとは思わなかったなー」
「何があってこんなに魚が集まったんだ?」
会話もほどほどにコテージについた。
「ごはーーん」
飯が炊けたみたいだ。タイミングはかなりいい。
「あー、かなりうまかった」
「ええ、そっちの釣りも上手くいったみたいね。」
「だが釜萢!てめーのうどんはどこぞのスーパーで買った安もんだな!」
「そういうなよ、園滝と芹北見だって大したことしてないんだ」
「部屋の掃除をしたのは私たちじゃない。それにカレーもご飯も」
「そうだよ!私たちかなり頑張ったんだから」
「ま、まあ。そんなことよりこのコテージ、ワンランク上なんだそれぞれ一人ずつ部屋があることに加え、キッチン、天裏、和室、吹き抜けもあるんだ」
「そりゃすげーな!見にいくか!」
「各自、部屋に荷物をまとめたな!」
「これは、まずいな」
「え?」
「この旅行が終わるころには各部屋メイクの差が出るぞ。」
「怖いなー 神妙な空気ださないでよ。」
「一つ空き部屋がある。とりあえずそこをゴミ置き場にするか。」
「あったっけ?」
「ゴミ捨て場なら外にあったよ。」
「そうか、じゃあ空き部屋の利用方法はまた考えるか。」
「だなー」
そうしているうちに、とうに日は落ち、夜が更けた。まず一日目だ。カーテンもなしに外の景色を淡く照らす。内側から見れば、光源のごとし芝生も遠近感のつかない木々、流れが見えそうな星空もすべて同調しているように見える。しかし、外側から見れば、このコテージは異質なものかもしれない。夜になって気づいたのなら、昼になんの違和感も感じなかったなら、、、この旅の行方を案じ床についた。