第2話 鏡合わせの乗客たち
駅のプラットフォームにて、小林由香子は電車を待っていた。やってきた電車に乗り込もうとしたその時、
「お姉さん、一緒に乗せて?」と誰かに服の裾を引っ張られた。
「ん?」と由香子は下を向いた。そこには、幼稚園児位の女の子が立っていた。
「どうしたの?電車乗るの、緊張するのかな?」と由香子は微笑んで、一緒に電車に乗ろうとした。
その時、由香子は気づいてしまったのである。女の子の向かい合わせにある電車のガラスに、女の子の姿が映っているのだが、その姿が血みどろであるということに。
「ひい!」と彼女は叫び、そして己のガラス越しに映る姿も血みどろであることに気が付きさらに驚いた。見れば、自分自身の姿、そして周囲にいる乗客達のガラス越しに映る姿も皆血みどろであることに気が付き呆然とした。そして、そのまま電車は固まる由香子を置き去りにして、発車してしまったのである。
後に分かった。由香子が乗らなかった電車は、発車後運転員の管理ミスにより脱輪し横転するという大事故を起こしていたことに。死者及び怪我人多数のその事故に巻き込まれなかったということに。少女と由香子は、何かを察知していたのだろうか。今となっては、その理由を誰も知ることはない。