第1話 呪いの列
社会人3年目となった中村良太は、今日もいつもの通り帰りの電車を待っていた。してはいけないと思いつつも、歩きスマホをしながら、何となく視界の端に映った電車を待つための列に並ぶ。前列が動き出した。自分もつられて、少しずつスマホを見ながら前へと進む。
黄色い点字ブロックを超え、あと一歩という所で、誰かにぐいと後ろに引っ張られた。いたずらかとイラつきながら後ろを向くと、そこには引き攣った顔をした女子大生がいた。
「あの、何ですか?」と苛立った声で女子大生に声をかけた瞬間、彼の後ろで、ごうっという音と共に急行列車が通り過ぎた。慌てて前を向くと、そこに電車の影はなく、良太はあと少しの所でその電車に轢かれる所だった。女子大生が囁く。
「すみません…飛び込まれるのかと思ってしまい、つい…」
「いえ、良いんです。それよりも、僕の前列に居た人は大丈夫でしたか?」
「前列ですか?いいえ、あなたは最初からずっと一人で立っていましたよ?」
(じゃあ、僕が並んでいた列は、一体何の列だったんだ。)
急速に状況を理解した彼は、全身からどっと冷や汗がでるのを抑えきれなかった。
(もし、あのまま前の人に続いて足を踏み出していたら、今頃どうなっていたんだろう。)
彼はそれから、電車を待つときはスマホを決して見ないようにしている。