第十話
「あっ、ありえない······この、俺様が──」
ガズルは〈衝撃波〉の気絶が入り戦槌を手から離し、そのまま膝から崩れ落ちた。
「フッ一、何とか倒せた」
ムクロは息を吐くと、少しだけふらついた。
やっぱり、素の状態だと戦闘はきついか。できれば、もう少しこいつの情報がほし──あっ!? そういえば〈神の魔眼〉あったんだ、すっかり忘れてた。ごめん、戦いが終わって後だけど見させてもらうよ。
ムクロはガズルに向かって〈神の魔眼〉を発動させた。
名前:ガズル 種族:人間 職業:【大地騎士】 Lv54
ステータス
HP:4589/4655 SP:1998/2890
STR:1290 INT:978
VIT:1090 AGI:589
DEX:290
スキル
〈土流戦技〉Lv4/10
〈土魔法戦技〉Lv10/10
〈大地騎士の心得〉Lv5/10
〈詠唱短略化〉Lv6/10
装備品
【加重戦槌】(B)
〈STR+300〉
〈重力強化〉:スキルによる加重効果の強化。
【隠者の軽鎧】(C)
〈VIT+100〉
〈隠匿化〉:自身と味方の透明化。またレベル2以下のスキルは透明化でも使用可能。
【大地騎士】······なるほど複合職か、通りで魔法スキルが使えて、近接武器での攻撃ができたわけか。
複合職は二つの系統が使える職業だが、一つの系統に特化した戦士職や魔法職よりステータスの伸びはやや劣るのが欠点だが、その分手数は増えるのが利点でもある。
それよりも謎の透明化による攻撃はこれだったのか。【隠者の軽鎧】によって自身だけでなく、味方にも透明化が可能、しかもレベル2以下のスキルは透明化でも使用可能ねぇ······ゼロが持ってた装備品の下位互換······いや完全劣化版か。
「まっそれは、さておき……ガズル聞こえていないと思うが、君が使ったスキルは〈土魔法戦技〉の〈岩石柱〉と〈土流戦技〉の〈重力槌〉だろ、まず〈岩石柱〉で俺を空中へと飛ばし、続いての〈重力槌〉で俺にダメージを与えると同時にさらにスキル効果で重力を付加させての、落下による衝撃の増加。避けたとはいえ重力の付加はあったけど、俺にはこれがある」
ムクロは被っている仮面をトントンと指先で叩いた。
「この仮面には、〈状態異常無効〉って言う装備スキルがあってね。重力の付加は状態異常扱いだから、すぐに効果消えてあの程度で済んだ······伸びしろはあるよ、後はレベル上げ頑張ってね」
ムクロはそう言い終わると仮面を外して、センたちの方へ歩き出した。
「ムクロ!」
少女は慌ててムクロの方に駆け寄った。
「ムクロ、大丈夫なの?」
「大丈夫問題ないよ、ギリギリだったけど」
「ごめんなさい、私のせいで······」
「別に君のせいなんかじゃないよ、これは俺が決めことだ、気にしないで」
ムクロは慰めるように少女に心遣いをかけると、少女は少しだけ微笑んだ。
「お疲れ様です。マイマスター」
「サスガワハ、主殿ダ」
「主君、ご無事でなりよりです」
センたちもムクロと少女に駆け寄ってきた。
「悪いな従魔職である俺が、前衛に立つなんて」
「主が決めたことだ。従魔の我々は従うだけだ、それより」
センは気絶しているガズルの方を向いた。
「殺したのか? 主」
「まさか、俺はそこまでの力がない、気絶しているだけだ。他の兵士たちも隊長がやられたことで呆然と立ち尽くしているから問題ないと思うは──」
ムクロはガズルの方を見ると、ガズルが戦槌を支えに立ち上がった。
「お前の言う通り、ダメージは大したことないな」
マジかよ、あいつのレベルならもう少しの間は気絶しているはずなのに、もう立ち上がるのかよ。
「今度こそ終いにしてやる!」
ガズルは再び、戦槌を構えた。
「なぁ、もう終わりにしないか? 他の兵士たちはもう戦える状態じゃないし、それにお前じゃあ俺たちは倒せないだから──」
「うるせぇ! こっちはもう後がないんだ!」
ムクロは相手に降参を求めるが、聞く耳を持たなかった。
「クソッ、仕方ないか」
ムクロは再び、攻撃の態勢に入った。
「ハッ! 今度こそ殺してや──」
ガズルが突然額から大粒の汗が吹き出し、後ろの森の方を体を向けた。
「おいおい! 全然じゃねえか!」
ガズルの後ろの森から、20代くらいの男が現れだした。
んっ? 誰だ? 他の兵士たちもよく見たらすごい汗をかいている?
「フェルネス、あいつはいった、ッ!?──」
ムクロは少女を見ると、尋常じゃない程に怯えていた。
フェルネスがあんなに怯える!? あいつはいったい?
「俺、言ったよな、俺が来る前に娘を捕まえとけって」
男は喋りながらガズル方へ歩くと、ガズルは男に向かって跪いた。
「申し訳ございません。抵抗が激しく、で、ですがどうして、ここがわかったのですか?」
「お前が持っている【通信結晶】には大まかな位置を教えてくれる機能がついているんだよ」
男はガズルの前に立った。
「お前って、一つの命令も聞けない無能だった?」
「いえ、ですが! チャンスをください! この俺──いいえ、この私が必ずや、あいつらを殺してあの娘を──」
「もういい」
「へっ? 今、なんと?」
「だから、もういいって、お前いらねぇわ」
男はそう言うと右腕を上げた。
「消えろ」
男は、思いっきり、右腕を振り下ろした瞬間、ガズルが縦に5つに裂かれた。
「あっ······あっ、キャアアアアア!」
裂かれたとこを見た少女は大声で叫けんだ。
「うるせぇな! 今度はてめぇ──んっ?」
男は、後ろのシグマとノワールたちに気づいた。
「おいおい、後ろ、よく見たらすげぇ美人じゃねえか、よし決めた! そこの美人の2人は俺の玩具決定」
男は、ムクロたちを無視して、シグマとノワールを目をつけた。
「待てよ、お前、そいつの仲間じゃなかったのか」
ムクロは我慢できずに、男に話しかけた。
「あぁ? なんだてめぇ、俺はそこの美人2人と小娘に用があるんだよ、獣と男2人には興味にねぇよ、死にたくなければどっか行けよ、それにこいつらは単なる消耗品だよ。いくらでも替えが効く道具と一緒だ」
ムクロはその男が放った言葉にあ然とした。
「そうか、あのバカが嫌いなタイプだな······それと同時に俺が嫌いなタイプでもあるだよ」
ムクロは男に対して怒りが湧き上がり始めようとした。




