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いよいよ


「……ヴァルク」


 馬車がいよいよ進めなくなるのではと言うところまでたどり着くまでの距離を沈黙に費やしてから、ミリティアは馬車の中から声を出した。


「確かにそうね、そんな事情があったら、あの場所では話せないのはわかるわ。だけれど、私は今、同行者がもう一人いることを知らされたのだけど?」


 未だ街の中という状況、本来なら声を潜めたところでこの件は口にしたくなかったのだが、ならどうして私の作戦は駄目なのとミリティアは聞いてきたはずだ。


「すみません」


 それでも謝らずにはいられなかったのは、うん。逆の立場なら、僕もきっとがっかりしたであろうからであって、ミリティアが怖かったとかでは、決してない、たぶん。


「そこで、ミリティアの案に修正を加えたいんですが――」


 問題になるのは、追っ手を差し向けられて、ムレイフさんを待つ時間が作れないからだ、ならば。


◆◇◆


「ご苦労様です」


 僕はそう言って徒歩で街の入り口に近寄ると、立っていた兵士に頭を下げた。


「ああ、お前か。もう用は済んだのか?」

「ええ。ついでに仕事も受けてきたので、東に向かう予定です」


 何事もないように話しつつ、荷物を見せると一度出入りしてそれほど時間もたっていない僕一人だけ(・・・・・)であるが故に、通過はすんなり許された。


「さてと、ここからはちょっと賭けですけど――」


 町を出て、僕は東に向かって歩き出しながら、声には出さず数を数える。これも一応念の為だ。


「この街ともお別れですね」


 少し進んだところで足を止め、入り口を一度振り返ると独り言ちってさりげなく視線を上方へ向け。門の上、城壁の凹凸の上に立つ見張りの兵を確認する。


「さて」


 行きますかと続けてここで僕は歩き出す、筈なのだが。


「ん?」


 城壁の向こう側が急に騒がしくなって僕は再び振り向いた。ゆっくり数えすぎたかなと内心で思いつつ。ここからがミリティア起案、監修僕による脱出作戦の本番であるのだ。


「どうしたんでしょう?」


 訝しむ演技をしつつ、僕は入り口に向かって歩き始めた。


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