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「では、これを。流石に馬を操りながら中身を漁ってられるような器用さはありませんから」


 御者台の後ろにあった窓から、僕は荷物袋を中へと押し込む。きゃあと短いミリティアの悲鳴が上がったような気もするけれど、御者をしつつなので、中の様子を確認しなかったことについては、出来れば容赦してほしい。


「けど、こんなところに窓があるんですね。なかったら一度降りて渡しに行かないといけなかったから、都合がいいと言えば都合が良いんですけど」

「特別仕様よ。この馬車が悪漢に乗っ取られたりした時、その窓を少し開けて私の技能を使うためのものって言えば分るでしょ? 一応怪しまれないように名目上は御者に通行証とか何か渡したりするときのための窓ってことになっているけど」

「なる程」


 ミリティアが使うからこその馬車の構造と言うことなのか。


「ですけど、それじゃあ僕が無理やりミリティアをさらったなら、こうしていられるのはおかしくありません?」


 ミリティアが無理やりさらわれたという仮定ならば、馬車の機能とミリティアの技能で僕を眠らせられる筈なのだ。


「そこは大丈夫よ。ヴァルクに大切な形見の指輪を奪われたから、奪還の隙を伺っていたとかそう言うことにしておけば」

「え゛」

「ふふ、考えたのよ。私がヴァルクの元を離れられず、言うことを聞かないといけない理由を。これなら、不自然さはないでしょ?」

「いや、辻褄は合うかもしれませんけれども……」


 以後はその設定で僕に動けと言うことだろうか、ひょっとして。


「だから、よそ見をしても大丈夫になったら言ってちょうだい。おばあさまの形見の指輪を渡すから」

「はい? ほ、本当に僕があずかるんですか?」

「もちろんよ。出来れば、私を脅してるところもどこかで誰かに目撃させたいけれど」

「えーと、今、この街って衛兵が追加動員されてあちこちに居るんですけど?」


 そんなところであからさまな悪事の芝居をした日には衛兵がすっ飛んでくるだろう。


「それくらいわかってるわよ。だから、投書みたいな形で私の家に知らせるのよ。『おたくのお嬢様が指輪を物質に取られて脅されてるのを見た』って」

「ああ、そういう――」


 欠陥だらけの案ではなくて安心した。幸い紙質に拘らなければ、紙はたくさんあるのだ。











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