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模索しつつも


「なりふり構わなければ、方法なんていくつか思いつくんですけどね」


 例えば視線を少し上方にずらすだけで見える建物の屋根。その上に組まれた木製の足場はベランダと言うには少々上にありすぎるが、太陽の光を遮られずに受けるにはもってこいのそこにはロープが張られ、何着もの衣服や下着が風に揺れていた。ああいう洗濯物を失敬してしまえば、服の問題は解決する。もちろん窃盗ではあるが。


「当人自体に身を守ることだってできる技能があるとはいえ、ミリティアに別行動してもらうという訳にもいきませんし」


 僕と違って街の中を自分の足で歩いたことのないミリティアには土地勘が無い。目をくらませるだけなら別行動は効果がありそうだが、敢行すればどうなるかは火を見るより明らかである。


「僕の予備の服を着て貰う……のは、うん」


 抵抗があるかないかを考えないことにしても、あの大きな胸が僕の服に収まるとは思えない。


「大胆な改造が必要ですよね。前を真ん中から縦にバッサリ切って、当て布して――」


 胸囲を増量したうえで当て布に等間隔穴をあけ、穴同士を紐か何かで繋ぐ。明らかに大改造だ。


「ミリティア、裁縫に自信は?」


 そう問うたのは、僕は外で御者をしなくてはならないからだ。服の改造を任せられるのは、ミリティア当人しかいない。サイズの確認的な意味でも、目のやり場に困るし、悠長に僕が手空きになる時間を待つのは非現実的というのもある。


「人並みだけど、出来るわよ? いつか旅をするって時にできなかったら困るでしょ?」

「では、僕の予備の服をミリティアが着られるようにし立て直せますか? その格好だとこのまま逃げるにしても」


 拙いですからと続けるよりも早く、ミリティアは僕の言いたいことを察したらしい。


「ああ、確かにそうね。けど、この馬車に乗ってきてよかったわ。出先でドレスの端がほつれたりとか、そう言うことも有るでしょう? この馬車、裁縫道具とか積んであるのよ」

「うわぁ……至れり尽くせりですね」

「ふふ、せっかくだから針と糸と応急修復用の布をいくらか持って行きましょう。暫くは人目につくのは避けた方がいいでしょ? なら、荷物が少し増えるかもしれないけれど、こういうモノは持って行った方が良い筈よ」


 うん、たくましいというか、しっかりしているというか。


「そうですね」


 僕は乾いた笑いを張りつけて頷くしかなかった。


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