これって、所謂
「えっと」
何故ミリティアがああいう事を言いだしたかは、最後の言で一本の糸にはつながった。
「それって、あれですよね?」
「ええ、駆け落ちよ!」
ぐっと拳を握って強く頷けば弾みでギリギリだった胸元が更にギリギリなことになって、僕はちょっと目のやり場に困った。
「ではなくて! 僕が犯罪者として手配して追われることになりますよね?」
「っ、え、ええまぁ……そう、かもしれないけれど」
ミリティアとあの日の約束を完遂できるというのは、悪くない。願っても居ないことだが。
「別にミリティアと一緒って言うのが嫌という訳じゃありませんよ? ただ、僕の戦闘力とかその他もろもろだとローズフォレス家が本気で追っ手を放ってきた場合どうにもならないと思うんですが」
私と一緒は嫌なのと言われる前に先手を打ってから、僕は理由を述べた。
「そも、示し合わせていろいろ準備してからなら話は別かもしれませんけど。ほら、先生も『無計画な思いつきの行動は慎むべきですよ』って言っていたという話は前にしましたよね?」
「うっ、けど、『好機は逃すべきではありません。決断すべき時には決断すべきです』とも仰っていたってヴァルクは言ったじゃない」
「そ、それはそうですけど……」
店主がまだこの場に居る今、ムレイフさんとフロント公爵の暗殺を阻止すべく動いていることは話せない。ムレイフさんとはこの後落ち合うのだから、ミリティアには黙っていてもバレてしまうであろうが。
「僕が犯罪者として追われることになったら、先生たちにご迷惑が」
「ああ、そっか。それもあってヴァルクは……大丈夫といってはいけないんだろうけれど、あなたの家庭教師と護身術のお師匠様なら、解雇されたそうよ」
「え」
尚も言い訳を探した僕に、ミリティアが投げてきた発言の衝撃に僕は言葉を失った。
「あなたの家も私のところもだけれど、貴族の家って持ってる技能こそが自分の価値という風潮が強いでしょ? あなたの弟が言ったらしいわよ『兄のお下がりは嫌だ』って」
「あぁ……そういう」
優れた技能を持っていればかなりの我がままでも許される。僕より早く技能に目覚め甘やかされた弟なら、それぐらい言いだしても不思議はなく。
「バカなことをしたわよね。私、直接お会いした回数は少ないけれど、いい先生方だったじゃない」
「ですよね」
「まぁ、そういう訳だから、あのお二人が責めを負わされることはおそらくないわ。だから――」
正直不安要素だらけだし、ただ盗賊ギルドから逃れるために街を離れるのとは違う。
「わかり、ました」
お尋ね者になることを臆病者の僕が耐えられる気なんてしなかったけれど、すがるような目をしたミリティアを突き放すことなんてとても出来なかったのだ。




