仕方なく
「むぅ」
僕に話を振られたムレイフさんは顎に手を当てて唸る。無理もない。
「全く得体が知れず、燃やすと断末魔を上げるかもしれない何かのような曰く付きのモノが混じっているかもしれない紙屑」
と言うだけの情報で話を振られたということもあるだろうが、この情報だけでも充分判断に迷う品であるのだから。
「処分しようとしたらまた断末魔が上がるかもしれませんが、その正体が不明というのが何ともいただけませんな。貴重なシロモノのなれの果てだとしたら燃やしてしまうのが大いなる損失につながるかもしれませんが、危険物のなれの果ての可能性もある。自我らしきものをもって人語を話す紙と言うだけでも付与品で言えばかなり上位のモノである筈」
解かっている。それゆえに僕はとりだせず、あんな形になってしまったのだから。
「そんな貴重品を処分してほしいと言われたということは、あれは危険物であったのでしょう。こう、処分したモノに呪いの様な悪影響を与えることも考えられますが、何かおかしなところは?」
「あ、えっと……特には何もない見たいですけど」
「そうですか。すぐに効果を及ぼさないモノであるか、もっと厄介なモノが残りの紙屑に残ってる可能性もありますな。ですので――」
僕が取り出すのに失敗して紙屑になったという真実を知らないムレイフさんは、少なくとも残りを焼却するのは反対と言う見方を示し。
「けれど、残しておくのにも不安が残りますよね」
「ですな。危険物が混じっているとしたら騒動や災いの種となるやもしれません」
燃やすのも駄目、残してゆくのも駄目。
「となると、持ち帰るしか選択肢がないんですけど……」
「これを解析したり引き取ってくれるコネがあればよいのですがな」
「ないモノねだりですよね」
嘆息しつつ僕はそう返したが、しかし、内心では現状に別の意味で嘆息していた。紙屑はここで全部焼却してしまうつもりであったのだ、うまく行かないものだと思う。
「とりあえず、この紙屑はできるだけかさばらないようにして持ってゆくしかありませんね。燃え残りについては、既に幾らか焼けてるのは大丈夫そうですからこのまま焼いてしまうとして――」
全部は無理でも竈四つ分の紙屑のうち最初の二つはほぼ全部、次の二つも半分以上が処分できたのだ。全く無意味で無かったと思って割り切るしかない。諦念をお供に僕はまだ熱い竈の石を足でどけ、竈を崩し始めた。