混入物
「ぐ、……おの、れ……俺に、この……ような、辱めを……与えた上で、滅ぼそうと……いうのか?」
途絶え途絶えの声が聞こえるのは、ちょうど今そばにある竈の中からである。
「許さん、許さんぞ、ぐあああああっ」
断末魔に固まり、どうにもできぬままで竈の中の火勢は強まり、その絶叫を最後に竈の中からの声は途絶えた。
「え、ええと……今のは」
「あ、え、え? えーと」
たぶん紙屑と言う不完全な形でありながら何らかの力を残したモノが紙屑の中に含まれていたのであろう。そして、火がついて燃やされたことで、ああなった、と。だが、とてもではないが正直に打ち明けられるはずもない。
「ひょっとして、この辺り、昔はお墓でもあったのかもしれませんね」
「その割には声の方は竈の中から聞こえて居たような」
「う゛」
何とか誤魔化そうとしたのだが、やはり声の出所は明白だったらしい。
「い、いやですね。そ、それじゃ僕がだ、騙されて曰く付きの品の処分を頼まれたみたいじゃないですか?」
相当苦しくなった僕にできるのは、即席で一部に真実を混ぜた嘘のストーリーを知られたくない真実をポロッと漏らしてしまった風味に言うことぐらいであった。
「少なくとも普通の紙屑は断末魔などあげませんぞ?」
「うっ、そ、そうですね。けど、騙されたとなると、あの街に居続けるのはやはり危険ですよね」
一部認めたふりをしつつ、街を出る理由とする。後は、街を出なければいけないなら宿に残してきた荷物を纏めなくてはとか何とか理由をつければ、いかがわしい本を回収に赴く流れにはできると思う、ただ。
「そんなことより、さっきの紙屑の元、相当ヤバい品物なのでは?」
と、いかがわしい本のことも大事だった筈なのに、今は断末魔の主の方が気になって仕方なく。同時に自分の能力のヤバさも再認識する。必要な熟練度にさえ達していればあの断末魔の主すら己のモノにできて居たはずなのだから。
「とりあえず、さっきの声の主には完全な形で取りだせた時に謝るとして――」
他者に聞こえない程度の声でつぶやいた僕は、実際困った顔をしてムレイフさんの方を振り返る。
「それで、問題になるのはこの残ったゴミなんですけど……どうしましょう?」
二度あることは三度あると言う。また断末魔が上がってはたまらない。僕は素で残った紙屑の処分に困っていた。