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作業に移りながら


「まぁ、流石に二度も三度も変わったことはありませんよね」


 石を拾いに向かった川辺は先ほどとは違って平穏そのもので、僕は拾った石を数個、片腕で抱えるとすぐに先ほどの場所へ引き返す。


「あ、あったあった」


 丸めた紙屑を置いておいたのだ。風で転がっていったりしていなければ見失う筈もない。


「さてと、ここからはただひたすら地味な作業ですね」


 とんでもないハプニングに振り回されることもない平穏な時間でもある。元来この草むしりと言う作業を辛くするモノに虫の存在があるのだが、幸いにも虫よけの付与品を持っている僕がいれば虫の方から逃げ出してくれるので虫は気にする必要がない。


「蛇とか虫以外の生き物には効き目がないので毒蛇なんかには注意しないといけませんが……」


 見た目は不格好になるが備えることは可能だ。後で燃やす予定の紙屑を手に括り付けて厚手の手袋にしてしまえばいい。


「草の汁とかで手が汚れるのも防げますし、紙屑は後で燃やすものですから」


 誰かに会うことがあるとしても、先ほどの男性ぐらいだ。僕がゴミを燃やすためにここに居ることは承知しているのだから、変に思われることもない。


「あの男性と言えば、こう成り行きで旅に出るとか言っちゃいましたけど、旅に出るならどこに行くかも決めておくべきですよね」


 振り返ればすぐそこに見える街からは北を除く三方に道があり、西に至っては平野を両断する川が水運にも使われているため、陸路以外に船と言う移動手段がある。


「天候が荒れて居なければ、船は歩くより早いんですけど運賃が必要ですし」


 徒歩の場合は運賃こそかからないが、単独もしくは二人旅になる。


「都合よく村とか街があるとも限りませんし、野宿の覚悟は必要ですね」


 ついこの間スラム地区で野宿の親戚みたいなことはしたような気もするが、あれは風雨も凌げたし、獣に襲われるような心配もない場所だった。


「難易度と危険度で言ったら今回のケースの方が上なんですよね」


 そう考えると旅のビギナーとしては更に費用がかかっても船旅が良いかとも思うのだが。


 



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