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またしても想定外


「物事は何事も予定通りに行く保証はない」


 まさにそうだと思う。しかし、想定外にだって程はあると思うのだ。と言うか、あってほしい。


「げほっ、げほっ、げほ」


 せき込みながら水を吐き出した男性を眺めながら、僕は遠い目をする。


「どうして、こうなるんでしょうね?」


 きっかけは河原に向かったことだ。かまどにする石の確保と念のため水が確保しやすい場所をと木を降りた僕は折った枝の目印を頼りに一直線で河原に向かい。


「……そこで見つけたんでしたよね、このおじさんを」


 せき込む男性は単的に言うなら、溺れて居た。行き交う船から落ちたのか、泳いで川を渡ろうとして足でもつったのか。理由は解からない、まだ名前すら聞けていないのだから。


「けど」


 木の上で川の方を見た時、誰かが溺れて川面を叩きつくる水しぶきは見えなかったし、音も聞こえなかった。となると、船から落ちたとかの方がまだしっくりくる。川を船が行き交うこと事態は知っていたので、木の上で視界に居れていてもほとんど気に留めていなかったのだ。


「……落ち着きました?」


 咳が止むのを暫く待っていた僕は、男性の呼吸が幾らか落ち着いたタイミングを見計らって尋ねる。流石に見殺しには出来ず、結果的に助けてしまったものの紙屑を燃やして技能を使うことを考えると男性は邪魔でしかない。


「助かったわけですし、街の入り口もそう離れて居ないのだから場所だけ教えてこのおじさんにはさっさと立ち去ってもらいたい」


 と言うのが正直なところであり、助けるだけ助けてその場に放置し立ち去らなかったのは、至って打算的な理由からだ。


「助けたんだから、お礼とか貰えるかもしれませんよね?」


 と、言葉にするならそんな感じになる。


「はぁ、はぁ、はぁ……ああ、先ほどはありがとうございました。いや、おかげさまで命拾いしましたぞ」

「いえ、大したことはしていませんよ。岸から紐を投げたくらいですし」


 勇気ある人物なら川に飛び込んで救助に向かうのだろうが、僕にそんな勇気はない。実際、男性が助かったのは、男性の運と自身に寄るところがそれなりに大きい。


「いえいえ、あなたは命の恩人です。ですので何かお礼をさせていただきたい」

「お礼ですか?」

「はい、実は私は――」


 おうむ返しに問う僕に頷いた男性は言う、自分は付与者である、と。




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