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通り抜けて

これを書くのに使ってるサブパソが唐突にフリーズするようになりました。今話もそれを使って書いてます。

ただでさえ時間がないのに、いつ止まるかわからないとか……


それでも、出来うる限りは続けます。


「よし、通っていいぞ」


 兵士の声に軽く頭を下げ、僕は横を通り過ぎる。馬車すら通れるほどに大きな入口を封鎖する扉は、近くで見るととても大きく。


「ふぅ」


 街の外に足をついた瞬間、ただ足を前に一歩進めただけなのに、ため息にも似た吐息が出た。安堵の息と言うには早すぎるし、まだ何も解決したわけではない。


「しばらくは、この壁沿いをぐるっと迂回ですね」


 まだすぐそばにある壁はかなりの大きさだ。少し離れたぐらいで見えなくなるようなモノではないし街の位置を見失うということはない。単なる最短距離を選ぶならそうなるというだけの話だ。


「途中のどこかでたいまつの芯になりそうな枝も見つけられるといいんですけど」


 そちらは火おこしもだが、暗くなる前にやっておかなくてはならない。


「とりあえず、雨の降りそうな天気で無いのも僕としてはありがたいですね」


 仰げば広がる空には雨を降らせそうな雲はなく、白く小さな雲が形を変えながら風に流されて遠ざかってゆくところだった。


「行きますか」


 正直、僕がこうして街の外へ徒歩で出るのは初めてのことだ。実家に居た頃は馬車に乗って王都へ出かけたこともあったが、遠い過去の話。技能に目覚めず、ただ月日を過ごすうちに実家の敷地の外に出る機会さえ減っていった。それでも回数がゼロにならなかったのは、他家に婚約者が居たから。同じ街の中にあるお互いの家を訪問するぐらいだが、それが数少ない外出となり。


「最後に足を運んだのは、いつだったでしょうね」


 元婚約者の家を訪れた記憶が酷く遠くに感じる。


「どうしようもないと判ってるはずなのに、ぼくもまだ引きずってるようで――」


 自嘲混じりに苦笑して人や馬車が踏み固めた道を、逸れる。北に向かう人間などほぼおらず、ここからは無秩序に茂った草や木の中を進まなくてはならない。


「とは言っても、壁際は少しマシなんですよね」


 片手を壁に当てるように進めば、視界を背丈の高い草に遮られても方角は見失わず済むのだから。それに、いくら人が通らないとはいっても壁の近くに大きな木はない。


「足場になりそうな木があれば、それを伝って密かに街へ入れてしまいますし」


 看過される筈もなく、何年かに一度は人手を募り確認と伐採作業が行われるのだ。生憎作業年は今年ではなかったが。



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