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外へ

リアルの多忙が終わらない。せめて更新だけでも途切れさせないようにしないと


「数日留守にします」


 そう告げて僕は宿を出た。部屋の本を人目にさらすわけにはいかないので、宿泊費は払った上で預かりものを部屋に運びこんであると宿の主人には伝えていた。


「いくら安宿とはいえ、部屋の掃除には来るでしょうからね」


 ストレージの本と袋で部屋に荷物を運びこむ芝居までするはめにはなったが、掃除に来た従業員に前情報なしで本を見られることを鑑みれば全然マシだ。


「街を出る時に取られるであろうお金と再び入ってくる時に払うお金、両方払うと一文無し確定かぁ」


 技能が使える限り指定はできないもののいくらでも本はとりだせる。古本屋を頼れば空になった財布にある程度お金を満たすことは出来るとは思うが。


「またあの女性に……うん、やめましょう」


 後ろ向きな考えと言うこともあるが、戻ってからなんて先の話だ。


「まずは予定通り街の外に向かわないと」


 衛兵はまだ外を歩いているから、治安の面では問題ない。


「心配なのは、街を出る時ですね」


 高額な商品の窃盗があったのだ、荷物は検査されるだろう。


「一応、欺瞞工作はしておきましたけど」


 以前取りだした、名もなき作家志望者の書きかけ原稿などの役に立たない品を紙屑に混ぜておいた、ただそれだけのことだが、ただ紙屑だけが入って居るわけではなく紙系統のゴミが色々入っているということなら、ごみの焼却処分に外へ出るという名目も納得してもらえると思うのだ。


「幸い、冒険者ギルドに所属してる手前、身分証はありますし」


 外に出るまでは大丈夫だと思う。


「問題は外に出てから、何ですけど」


 例えば野生の獣に襲われる危険性。


「技能書を使えば、自分の身は自分で守れるとは思いますけど」


 使ってよいモノかはまだ悩んでいる。獣は火を怖がるというし、紙屑を太めの木の枝にくくりつけてたいまつでも持っていればいいのではないかとも思うのだ。


「街を出る時にゴミを燃やすつもりと言っておけば、僕が火を使ってること自体は訝しがられませんし」


 そも獣に襲われるかもしれないというのだって仮定の話だ。


「あ」


 ブツブツ呟きながら歩いていたわけだがいつの間にかそれなりに歩いていたらしく、気づけばずいぶん近い位置に街を取り巻く壁が見え、壁を幾つかに区切るように立つ見張りの塔に挟まれる形でぽっかり空いた街の出口に僕の目が留まる。


「あそこか」


 開いた門を一台の馬車が出て行くのが見えた。




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