支度を終えて
・お詫び
少々リアルが多忙のため、本日の分の文字数は半分ほどになります。すみません。
「何とか準備を終わらせることができましたね」
日雇いの仕事でもなかったほどに重い身体を引きずるようにして宿に戻ってきた僕を待っていたのは、紙屑の袋詰め作業だった。
「ストレージも限界まで使って尚余るとか」
やむを得ず服の内側やポケットに詰め込んで何とか全部収まり切ったが、我ながら何て回数技能を行使したモノだと思う。
「それでも望むところまで熟練度が上がらなかったんですから、何と言うか……」
とんでもない技能だとは思っていたが、成長するのに必要な熟練度もまたとんでもない。
「紙屑ってことで圧縮できるから袋一つとストレージ一つにあまりが幾らかですけど、紙屑一つがバケツ一杯の水だったらどれほどの量になることか」
この部屋の横がバケツ十四個分、縦が十五個分で奥行きが十個分。
「二千百は超えてたはずですから、少なくともこの部屋の大きさは超えますよね……って、あれ?」
思ったより膨大な量になった気がしないのは、紙屑と引き換えにするモノのチョイスを間違えていたからだろうか。
「いや、それよりも……処分した紙屑が本として取りだせたら、半分が本としても千冊を超えますよね?」
算術の話をして、ふと思い至る。今は紙きれだったからいいが、本として取りだしたら、どうするべきかと。
「常識的に考えてストレージにしまって何回かに分けて持ち運びでもしなければ片付く気はしませんけど」
そも、その本をどこに持ってゆくというのか。
「何故でしょう、こう、普通に小さな古本屋開けそうな気がしてしまうんですけど」
この時点でポカに気付いてよかったと思うべきか。
「とりあえず、雨が降らないことを祈るしかないかな?」
問題には気づいたが、対処したり解決する時間がなさそうなのだ。厳密にないかどうかは解からないが、スラム地区を抜けるのに要した時間が痛い。
「そも、肝心の公爵暗殺阻止も半分運頼みの技能頼みしかないのが現状ですからね」
ばくち要素が大きすぎるのに他に方法がないのだからタチが悪い。嘆息と共に僕は床へ無造作に置かれていた組み葛入りの袋を担ぐと、そのまま部屋の入り口に向かうのだった。