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とんでもないモノ、そのさん

「一体いつこんなモノが……」


 延々単調に取り出し続けて居たからだろうか。きっとどこかで見落とした、そうとしか説明はつかない。


「って、そうじゃない!」


 経緯はこの際後回しで良い。問題はどんな品かだ。


『縁の手紙:血縁者もしくは差出人と互いに好意を抱く者へ距離と物理的な問題を無視し転送することができる手紙。再使用はできず、受け取り手が読んで半月後、この手紙は自動的に失われる。付与者:想いを繋ぐものカリオス』


 流れ込んできた情報に、思わず叫びそうになった。ピンポイントで暗殺を防げるかもしれない品だったのだ。


「けど、これって」


 今の段階で取りだせたと言うことは、僕の所有物だったということだ。


「と言うことは、僕宛に送られた手紙ってことになるはずですけど……」


 付与品である意味使い捨ての手紙だ、軽々しく送ってこられるようなモノではない。


「気にはなる、気にはなりますが」


 今は考察すべき時ではない。古本屋へ向かう途中なのだ。さっきの様に顔を合わせたくない連中と鉢合わせしかけることだってあるかもしれないのだから。


「せめて詳細を確認するなら、安全な場所まで移動しないと」


 距離的に言うなら最寄は古本屋の中、より安全を求めるなら宿屋の部屋。この発見で今後の予定が大きく変わるかもしれない。気は逸るが、こういう時こそ冷静さを保たなくては。


「よぉ、元貴族様。仕事もないのにお散歩とは良いご身分だな?」

「っ」


 気を引き締めようとした直後だった。明らかに非友好的な感情の乗った声が後ろから飛んできたのは。


「何で――」


 鉢合わせになりにくい道を選び、警戒もしていた筈だった。だから解せない。付与品の事で気が緩んでいたのだろうか。唐突なエンカウントに疑問はわいたが、首をかしげているような余裕はない。振り返る事すらせず、僕は走り出し。


「ちっ、追え!」


 僕が駆け出した直後に舌打ちと指示が聞こえ、相手が複数人と言う事実に顔が引きつる。


「解せない」


 今いるのは人がそれなりに多い通りだ。人気のない路地裏じゃない。荒事をすれば衛兵が出てくることだって考えられるというのに。ただの嫌がらせにしては、リスクがでかすぎる。


「とは、言え、質問、して」


 答えてくれるとも思えない。


「ごめんなさい、すいません」


 今できるのは、人をかき分けて進むことだけだ。こんな場所で仕掛けてくるのは流石に想定外だったから、逃走経路何て全くない。周辺の地形がある程度頭に入ってることだけが不幸中の幸いだが、この辺の地理をよく知っているというのは連中だって同じなのだ。


「いや」


 貴族出身の僕よりも下手すると街のこの辺りについては詳しいかもしれない。


「どこか、どこか」


 逃げ込めそうな場所はないか。先ほどは付与品の確認に使えるとした古本屋は、現在進行系で追われている場合、単なる袋小路にしかならない。先日働いた店なら店を通って裏口から抜けることも出来るかもしれないが、直前まで目指していたのは別の店だ。


「普通に、逃げたんじゃ、駄目だ」


 連中から逃げおおせる手順を思いつけない。これが想定外の遭遇でなければ、ある程度何とかなっただろうが。


「どうにかして、虚をつかないと」


 勝手を知っているのはむこうもなら、こちらが逃げる方向はわかっている筈。


「っ」


 周囲を見回して、一瞬目が留まったのは、僕なら決して足を踏み入れないであろうバラックの集合した区画。そう、スラム地区だ。


「確かに、まず、僕は、逃げ込まない、でしょう、けど」


 下手すれば、今追いかけてきている連中より危険だ。だからこそ、まず僕が逃げ込むとは思わないだろうけれど。


「ううっ」


 今更、他に連中を撒く方法を思いつける余裕もなく、少しでも意識を向けたせいか、気づくと僕の進行方向はスラム地区方面へと逸れていた。






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