ベッドの上で
「漸くっていうほど待ちはしませんでしたけど――」
隣に横たわっって若干ぐったりとしたミリティアがそうなのと聞いて来る。無事再び取りだせた技能書を使ったことで、少し前の僕同様に歩くことさえ難しくなったのだ。
「ともあれ、なじむまではこのままですね」
僕もまだ技能に身体がなじみ切っておらず、いつもの様に動くのはまだ無理だ。従って僕にやる気があっても、そう言う目的でこの部屋とベッドを使うことは不可能と言うことになる。
「しかし、この副作用、悪用ができそうですし無防備になるって言うのは問題ですよね」
技能書なんて高価なモノを使ってしばらくの間身体をうまく動かせなくするだけ、と聞けば釣り合わないと感じるかもしれないが、それは相手による。高位貴族や王族を油断させて誘拐するために使うとかであれば、割に合うかもしれない。
「言われてみればそうね……って、ヴァルク、まさか私に」
「ないですよ。僕もまだ本調子とは言い難いですし、そのつもりがあるならミリティアに先に使わせてますからね?」
僕が先に使ったのは修復して取り出せる可能性を上げるためでもあるが、先回りしてこの言い訳を作っておくためでもあった。
「こう、もう少し信用し」
「あんな本を何冊も出しておいて?」
「申し訳ございませんでした」
若干の不満が言葉として出てしまうも、そこを突かれたら謝るしかない。おのれ、世界の悪意め。
「と、ともあれ、後は休憩時間の終わりまで本とかを出しながらこうして新しい技能に身体がなじむのを待つしかないですよね」
話すことは話してしまったし、身体も満足に動かないのだ。ある意味では暇でもあって。
「そうね、ただ一つ言わせてもらえるとするなら、時間潰しに私でも読めそうな本を出してほしいかなと言うぐらいかしら?」
「あはは……」
半眼のミリティアに僕は引きつり笑みをしつつ視線をそらした。無意識が影響するのか、取り出す本の中のいかがわしい本の割合は未だに高いままなのだ。
「こう、近くで消失したモノも技能へ影響を与えるみたいですから――」
そこまで言った僕は暖炉に目をやる。そのてのいかがわしい本はひょっとしてこの暖炉で燃やされたモノだったのではなかったのだろうか。それならつじつまは合う様な気がした。




