せかいのあくい
「秘密を打ち明けようと技能を使ったらピンポイントでいかがわしい本が出てきた」
こんな時、僕はどうすればいいのだろうか。偶然にしても悪意がありすぎるのではないだろうか。しかし、それは誰の悪意なのだろう。
「世界の悪意……」
人では無理、あの悪魔が干渉したとも思えない、ならばきっとこれは世界の悪意だ。
「ヴァルク?」
「えっ、あ、ええと……僕の技能だけど、使い続けたら『何らかの理由で消失した書物とかを復元し取り出せるようなモノ』になって――」
こんな筈じゃなかった。だが、ここで説明しなければ変な誤解を招く。
「たぶん更に熟練すれば付与品や技能書、それ以上に強力なモノもカテゴリ上が書とかなら取りだせると思う。そう言う育てばかなり凄い技能だったから」
便利な道具として一生使い潰されるのが嫌で、父親には紙屑が出るだけの技能と報告して家から追放されたこと。自分の身が守れるまでは技能を密かに使い続けながら過ごすつもりであったこと。段取りが滅茶苦茶になってしまったけれど、僕は殆ど包み隠さずミリティアに打ち明けた。
「確かにさっきヴァルクが出したのは紙屑ではなかったわね」
「あ、うん。あれは忘れてください。選んで取り出せるわけじゃないので、こう何が出てくるか迄は解からなくて」
考察する顔になったミリティアの頬が微かに染まるのを僕は見逃さず、あれは事故であったと言外に主張し。
「ちなみに暖炉のある部屋をリクエストしたのもそれが理由ですから。とりあえずこれは燃やしてしまいますね?」
何の興味もないと示すため、僕はいかがわしい本をそのまま暖炉へ突っ込む。
「これで大丈……あ゛」
「何、どうしたの?」
「いえ、一度取り出した本の類は失われた場合修復して取り出すモノの中に混じりやすいんですよ」
やましいことが無いための行動だが、このまま本を燃やすと高い確率で暖炉の本が取り出されかねない。その辺りも考慮したうえでいかがわしい本はストレージに入れて後日誰かに売ってしまおうと思っていたのに、気が動転して完全に忘れていた。失態である。




