表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

120/142

教訓を得て


「はぁ、助かった、っ」


 腰が抜けた。その表現が最もしっくりくる。気力を出しきった僕はそのままへたり込むところだった。とっさに片手を伸ばしたおかげでトイレの床に直接座ることは免れたが窓の縁に手をかけた側の腕も両ひざも限界だとプルプル震えて訴える。


「っく、とりあえず用を足して戻りましょうか」


 手足には申し訳ないが、悪魔とやりとりで用を足せていなかったのだ。精神面からの負担にあえぐ身体に鞭を打ち僕はゆっくり立ち上がる。


「うっ、ぐ」


 やはりきつい。


「うーん、今技能書を使ったら、身体能力が底上げされて些少はマシな状態に」


 なればいいが、あの悪魔の言が正しいなら、身体能力を持て余しひっくり返ることも考えられる。


「とはいえ、技能書は使っておくべきでしょうね」


 一度使っても、僕のモノと認識されたならまた取り出せる可能性は高い。このあと打ち明ける内容次第ではミリティアにもう一度復元して取り出した技能書を使ってもらうというのも有りだ。


「眠らせる効果が悪魔に効かなかったとした場合、ミリティアには身を守る術がありませんから」


 考えたくはないが、僕があの悪魔の主を人質にすると言った以上、悪魔がミリティアかムレイフさんを捕らえて主との交換を持ちだすことは充分に考えられる。


「ここまでうまく行ってる気がして、どこか己惚れていたんですね、僕」


 現状の安全はミリティアの技能に頼って成り立っているようなモノであり、それが破られた場合、いかに無力であるか。現実は今しがた、突きつけられた。


「技能をもっと使えるようにしないと」


 熟練度を稼ぐなら、ミリティアの協力は必須だ。


「あの悪魔がいつ次の行動に出るかもわからないですし」


 出発はもっと後でいいなどとも言っていられない。出発は前倒しすべきであろう。


「ついでにあちらで技能を使って熟練度も稼げるといいんですけどね」


 ミリティアに打ち明ける場所が人目につかない部屋であることを鑑みれば、一石二鳥の様な気もするが、これに関してはとりだした後の紙屑が問題になる。


「ごみに紛れ込ませてゴミ箱に捨てたとして、焼却処分してくれる保証もそれをすぐやってくれる保証もありませんし」


 うっかりあの断末魔を上げた紙をゴミ箱に捨ててきてしまったら、悪魔が回収して僕が詰むことだってありうるのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ