ミリティアの判断
「お待たせ、ヴァルク」
両手に荷物を抱えたミリティアがやって来たのは、それからしばらくしてからだった。
「いえ。すみません、嵩張る買い物の方をお願いしてしまって」
「ううん。裁縫が私の担当なんだから仕方ないわよ」
「そう言っていただけると助かります。それはそれとして、荷物を」
頭を下げると、頭を振ったミリティアに僕は手を差し出す。衣服や小物を買いに行ってもらった理由の半分は裁縫担当のミリティアに行って貰った方が都合が良いからだが、こうして合流した今もミリティアの方が大きな荷物を持っている理由はない。
「あら、ありがとう」
「ふふ。とりあえず、必要になるところまではひとまず僕がこのまま持ちますね」
「そう、それじゃお願いね」
渡された荷物を抱えつつ断りを入れ、承諾したミリティアに続く形で歩き出す。向かう先は町の入り口だろう。購入したモノの手直しや調整をするなら、些少なりとも落ち着けるところ、例えば宿の部屋なんかの方が良いかと思ったのだが、町の入り口に向かうとなるとミリティアにそのつもりはないらしい。
「あの街程ではないにしても、入り口では何か調べられるかもしれないし、その時ヴァルク用に完ぺきにあつらえた女性用の衣服を持っているよりは今の状態の荷物の方がマシだと思うのよ」
疑問が表情に出ていたのか、ミリティアはそう僕に説明し。
「あぁ、窃盗犯の話がここにも伝わっているなら、入り口でのチェックも確かにありそうですもんね」
しっかりと考えて居たミリティアを知らぬ間に見くびっていたことを詫びるべきか、それとも恥じるべきか。
「本当なら、ヴァルクと二人っきりだもの……もっといろいろ見て回りたかったけれど」
追手の有る身だ、是非もない。
「先のことはまだ考えて居ませんでしたけど――」
海に出て、追手の来ぬ遠くの地で二人つつましく暮らすのも良いかもしれない。
「ヴァルク?」
「いえ、なんでもありません。ムレイフさんを待つ態勢を作るにも早くダーハンについた方が良いでしょうし」
少し足を速めた僕は、ミリティアを追い越し、町の入り口に進むのだった。




